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服飾ジャーナリスト・飯野高広が語る、ジョセフ チーニーの定番モデルとアーカイブ。

服飾ジャーナリスト・飯野高広が語る、ジョセフ チーニーの定番モデルとアーカイブ。

服飾ジャーナリスト・飯野高広が語る、ジョセフ チーニーの定番モデルとアーカイブ。

靴の聖地・英国ノーザンプトンで1886年に創業した「ジョセフ チーニー」。

130年を超える歴史を持つ老舗シューズメーカーであり、カッティングからファイナルポリッシュまで、すべての工程を自社で行うという確固たるポリシーを守り続けています。

創業者の孫の代より海外への供給を始め、日本では約30年間、渡辺産業(ブリティッシュメイド)が総輸入代理店として継続して取り扱いをしています。同社には、過去の貴重なアーカイブモデルが貯蔵されています。

今回は、大量のアーカイブの中から、珍しいデザインや特徴的なラストを使っているモデルを幅広くピックアップ。“紳士靴の生き字引”とも言える服飾ジャーナリスト・飯野高広さんに、その魅力や歴史を定番モデルと比較しながら語っていただきました。「ジョセフ チーニー」のルーツを紐解き、さまざまな角度からこだわりを徹底解明していきます。

服飾ジャーナリスト 飯野 高広さん

服飾ジャーナリスト 飯野 高広さん

1967年生まれ、東京都出身。大学卒業後、大手鉄鋼メーカーに約11年間勤務し、2002年に独立。ビジネスマン経験を生かしたユニークな視点で、紳士靴やスーツなど男性の服飾品にまつわる記事を執筆する服飾ジャーナリストとして活動する。現在は「バンタンデザイン研究所」で講師を務める傍ら、さまざまなメディアに寄稿。「靴磨き選手権大会2020」のアドバイザーも務める。代表的な著書に『紳士靴を嗜む~はじめの一歩から極めるまで~』(朝日新聞出版)など。

現行モデル編

時代と人を観察し、アップデートを繰り返すのが本物の定番。

時代と人を観察し、アップデートを繰り返すのが本物の定番。

ーまずは、飯野さんにとっての「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。

ジョセフ チーニーの靴はバランスが良いと思います。“地に足がついている”と言い換えても良いかもしれません。とくに現行モデルには、木型やデザインに王道の英国靴らしいものが多いのでどんなコーディネートにも合わせやすく、あくまで履いている人を主役に引き立ててくれます。また、質実剛健な作りなので安心して履けるというのも良いですよね。

とくにドレスシューズのメインラストである125は「インサイドストレート&アウトサイドカーブ」というお約束ごとをきちんと守っているので、既成靴でありながら立体的な構造となっており、すごくバランスの良い木型だと感じます。まさに今の時代における“クラシック英国靴の定番”になるべくしてなったメーカーだと思います。

WILFRED(ウィルフレッド)」、「ALFRED(アルフレッド)
左から:「WILFRED(ウィルフレッド)」、「ALFRED(アルフレッド)」

ーたしかに、時代に合わせて木型やデザインをアップデートしているというのは、一つの特徴かもしれません。

人間の足は、時代によって微妙に変化していますよね。昔ほど外で遊ぶことが減ったとか、ワークスタイルがオフィス中心になったとか、ライフスタイルが多様化しているわけですが、ある段階から日本人の足の特徴が変化し始めたのを受けて、英国靴の木型も従来「日本人向け」と思われていたものを含めて進化させる必要が出てきたのです。

一世代前の日本人であれば、よく言われる「甲高幅広」に作れば間違いなかったのですが、1964年の「東京オリンピック」頃に生まれたちょうど私くらいの世代からは、そのセオリーが通用しなくなってきました。

また、どうやらイギリス人と比べると日本人は世代を問わず踵が小さいようで、踵のホールドが強い方が良いという発想が2000年代に出てきたんです。
ジョセフ チーニーで言えば、ドレスシューズの定番モデル「ウィルフレッド」と「アルフレッド」で採用されている125ラストは、名作2003ラストのトゥシェイプと、踵まわりは6184ラストをミックスして現代人に合うように作られていますよね。これは、さらに同社の標準であるFウィズに対して、Dハーフウィズのヒールカップを組み合わせることで踵のホールド感を上げています。そういう意味では、時代の潮流をしっかり捉えた、現代人の足型に合う革靴と言っても過言ではないですよね。

CAIRNGORN Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R)」、「AVON C(エイボンC)
左から:「CAIRNGORN Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R)」、「AVON C(エイボンC)」

ーカジュアルなモデルの方はいかがでしょうか?

2013年頃に日本でも本格的に展開がスタートした「ケンゴン Ⅱ R」、「エイボン C」の2型がカジュアルシーンを代表するモデルだと思いますが、この二つは少し背景が異なります。「ケンゴン Ⅱ R」に関してはミリタリーを由来に持つモデルで、ミリタリーラストである4436を採用し、ヴェルトショーン製法が盛り込まれていたりと、ギミック好きの日本人にとって新鮮に映ったのだと思います。

この仕様の革靴はイギリスではかなり古くからある伝統的なものなのですが、今や継続的に販売しているメーカーは希少ですよね。元来は軍隊用の革靴に取り入れられた製法なんですよね。こういう技術を現行モデルとして販売していることからも、ジョセフ チーニーが伝統ある老舗メーカーだということが伝わってきます。一方、「エイボン C」に関しては、当時すでにヨーロッパのベストセラーモデルだったモデルです。こちらはよりイギリスらしいカントリーシューズですね。

ソールに関しては、昨今流行りのビブラムの軽素材ソールのようなものに比べて相当重い重厚なコマンドソールを選ぶのは、このソールが英国のカントリーシューズに欠かせないピースだからでしょう。幸いにも、気候の変化や、次第にカジュアルな革靴を履ける風潮になってきた日本のビジネスシーンとの相性が増してきましたよね。常に社会とそこに生きる人々を観察してアップデートしてきたからこそ、普遍的なプロダクトを完成させることができるのだと思います。

ドレスシューズ編

履き心地と美しさを求めて、進化を遂げてきたドレスモデル。

履き心地と美しさを求めて、進化を遂げてきたドレスモデル。

ーそれでは、次にドレスシューズのアーカイブから紐解いていきたいと思います。
ドレスモデルに関しては、見た目のデザインに普遍的なものが多いですが、年代によってラストが変わっています。左から順に89ラスト、6184ラスト、1886ラスト、3888ラスト、2003ラスト、205ラストです。

89ラストはドレス系の原点とも言うべき古典的なラストですよね。甲高幅広で、一世代前の日本人の足に合っていると思います。1886ラストはたしか、今の工場の100周年の1996年に作られたものですよね。これも古典的な木型の一つですが、外羽根でも内羽根でもバランス良く決まります。現行のドレスシューズに採用している125ラストも良いのですが、良い意味でクセがないのは1886ラストですね。本当に色々なモデルに応用が利きそうです。

3888ラストは、ちょうどロングノーズが流行りはじめた時のものですね。サントーニやマンテラッシのようなアップデートされたクラシコイタリア系の革靴が日本に入ってくるようになった頃のモダンな木型です。だからこそ、伝統的でありながらややモードな印象もありますよね。

205ラストも近しい木型で、ロングノーズが定番になってきた頃に「ジョセフ チーニーでも先が尖っているような木型があっても良いのでは」ということで作られたような系譜を感じます。

左から:89ラスト、1886ラスト、2003ラスト、125ラスト
左から:89ラスト、1886ラスト、2003ラスト、125ラスト

89、1886、2003、125と古い木型順に並べると分かりやすいですよね。内側と外側のどちらからも次第に細くしています。フィット感を高めるために常にアップデートしてきたということが伝わってきますよね。

125ラスト(左)と89ラスト(右)を比較
125ラスト(左)と89ラスト(右)を比較

ー125ラストは、よくバイヤーの方に「既成靴なのにしっかり内振りがされている」と言われます。

私もこの辺りはやはり進化していると思います。89ラストと比べて125ラストは相当内側に振られていますよね。ソックシートやアウトソールに付いているブランドロゴの刻印が、見方次第では斜めに打たれてカーブしているようにも感じますから。より履き心地の良い靴を届けたいという意思を感じますよね。それにウエストの絞りも全然違いますよね。89ラストは古典的なドレスシューズのラストという意味で、私も好きなのでよく履いているのですが、125ラストの方がより履きやすさを求めて進化を遂げたものであることは間違いないです。

トゥから甲にかけての傾斜(2003ラスト)
トゥから甲にかけての傾斜(2003ラスト)

トゥから甲にかけての傾斜(125ラスト)
トゥから甲にかけての傾斜(125ラスト)

こうしてアーカイブを眺めていると、進化の過程が分かるのが面白いですよね。
とくに125ラストの靴をサイドから見ると、フィット感を高めるために甲からつま先にかけて一度グッと下がっています。125ラストはデザインに配慮しながら、ボールジョイントのホールド感を高めようとしたのではないでしょうか。

ー素材に関してはいかがでしょうか?

ジョセフ チーニーの125ラストのコレクションの黒革はドイツのウェンハイマー社のボックスカーフですよね。ブランドとしてはおそらく前身のカール・フロイデンベルグ社の頃から使っていたのではないでしょうか。また、今はなきイギリスのタンナー・ピボディ社のものも当時は使っていたと思います。

私はもし「今の革靴と30年前の革靴のどちらがおすすめ?」と聞かれたら、コンディションが良ければ30年前の方を勧めるのですが、ジョセフ チーニーに関しては別なんです。なぜかと言えば、革質にしても現行品のクオリティが高いから。

1980年代の終わり頃には、チャーチの弟分という位置付けだったのでなるべく手の届きやすい価格帯を目指して革を選んでいたんだと思います。ところが、1990年代後半に入ってたとえばイギリスの「アルフレッド・ダンヒル」や「イード&レイベンスクロフト」、アメリカ本土の「J.プレス」向けのようにこれまでとは違うお客さんを相手にするようになり、革質を上げる必要が出てきたのではないでしょうか。

そのおかげで職人さんも色々な革に慣れてきて、スキルアップに繋がっていったのではないかと思います。そういう意味では革質とモデルごとにフィットする革を選定する技術も次第に進化してきていますよね。

カジュアルシューズ編

質実剛健なカントリーモデルと、その一方で感じる挑戦的な姿勢。

質実剛健なカントリーモデルと、その一方で感じる挑戦的な姿勢。

ードレスシューズと同様に、カジュアルシューズに関しても時代の流れに合わせてさまざまなモデルを制作してきた歴史があります。飯野さんにとって特に印象的なものはありますか?

「ケンゴン Ⅱ R」を代表とするカジュアルシューズは素晴らしいですよね。採用されている4436ラストは、75年前から存在していたと言われている本当の意味でトラディショナルな木型だと思います。

また、今でこそ「クロムエクセルレザー」を使っている靴メーカーさんは増えてきましたが、ここには旧ロゴを使っている90年代後半に作られたモデルもあります。その当時は、イギリスの革靴メーカーがアメリカのオイルドレザーを使うなんてかなり前衛的だったのではないでしょうか。僕の知っている限りでは、ジョセフ チーニーとアルフレッドサージェントだけだと思いますよ。

新しいモノづくりにきちんとトライしようとしていたということですよね。しかも、それをヴェルトショーンで作っているんだからすごい。オイルドレザーは厚みと独特の粘りっ気があるので、例の出し縫いの箇所でへしあげて縫うのが相当大変だったはずなんです。

左から:4436ラスト、3480ラスト、1978ラスト
左から:4436ラスト、3480ラスト、1978ラスト

ーアーカイブにもありましたが内羽根ストレートチップのカントリーシューズというのは、イギリス独特の文化なのでしょうか?

イギリスでは、内羽根ながらストームウェルトにダブルソールといったチャンキーなものが一つの流儀として成立しているんです。おそらく独特の紳士道、ダンディズムみたいなものがあるのでしょう。普通はカントリーシューズであれば外羽根にしますよね。もし内羽根があったとしても、モードなアプローチのものだと思います。そう考えると、イギリスではやはり一定の需要があるということなんですよ。チャーチにもストームウェルト仕様の内羽根ストレートチップモデルが昔から定番でありますよね。

“田舎に住んでいるけど、見えるところは全部自分の土地”みたいな、田舎貴族の方が履かれるかもしれません。そういう方は、ロンドンに小さな住まいを持っているので、そこへ行くためにレンジローバーに乗るんですよね。都会的でありながらタフにも使えるというコンセプトは、この内羽根のカントリーシューズと通ずる部分があるじゃないですか。

こういうものを質実剛健に作り続ける一方で、175ラストのチャッカブーツのような真面目なモデルも作っているんですよね。シンプルなデザインながら、少しカットを高めに設計して、ディテールはワイルドにしてありますね。もしかしたら試行錯誤していたのかもしれませんね。

175ラスト、オールアラウンドウェルト仕様
175ラスト、オールアラウンドウェルト仕様

175ラストは本国では主に外羽根のモデルに採用される木型で、89ラストと同じ昔からあるラストなんですよ。おそらくですが、80年代終わり頃で、色々な靴メーカーがUチップを作り始めた頃の時代に生まれたものだと思います。このモデルはカントリーシューズなので、アッパーとウェルトの隙間から水や砂の侵入を防ぐストームウェルト仕様になっています。

しかも、つま先からヒールまで一周ウェルトを巻くオールアラウンドウェルト(360度ウェルト)仕様にもなっていますね。ドレスシューズに関しては、ヒール周りの固定に釘を使うことも多いのですが、ウェルトを全周させることで耐水性が高められるだけでなく、釘を使わない分見た目よりも軽くなるんですよ。こういったディテールに当時のデザイナーのセンスを感じます。

デザイン編

色や素材で遊ぶ90年代と、革自体の加工が隆盛した2000年代以降。

色や素材で遊ぶ90年代と、革自体の加工が隆盛した2000年代以降。

ー真面目なモノづくりの一方で、新しいことに挑戦しているジョセフ チーニーの姿勢はこれらのモデルからも感じていただけると思います。

あまり見かけないデザインや異素材のコンビネーションが楽しいですね。ただ新鮮なように見えて、じつはこうしたデザインは意外にトラディショナルなものなんです。たとえば、このベージュ系のツイルとブラウン系レザーのコンビは、夏場にテニスのウィンブルドン選手権やクリケットの試合を観戦しに行く時に履くデザインだと思います。ジョセフ チーニーのモノづくりは基礎がしっかりしているからこそ、トラディショナルなデザインをベースに応用を利かせることができるのでしょうね。

時にこのモデルのようなコンビ素材の革靴が、オールレザーのシューズよりも高価なことがありますが、これも「なんでもかんでも革の方が高級で良い、とは限らない」的な古の審美眼を思い出させてくれます。馬車の椅子なんかはその典型ですね。御者の椅子は耐久性重視の革張りで、客席は決まって布です。英国の御料車は女王陛下がお乗りになられる後部座席を今でも布張りにしているのも、そんな伝統からの流れです。

多様な素材を組み合わせたコンビネーションモデル
多様な素材を組み合わせたコンビネーションモデル

それにしても、遊びの利いた組み合わせなのに、ジョセフ チーニーの革靴はクラシックな雰囲気を醸していますね。本来は外に出すはずのフリンジを中にしまったり、コバの一部をグリーンにしたり、工夫を凝らしています。異素材を組み合わせると、配色の幅が広がりますよね。今までになかった配色が生まれ、古典的なアイテムが斬新に生まれ変わります。

ファッションシーンでも、イギリスでは表と裏で生地が違うリバーシブルのアイテムが結構あるじゃないですか。おそらく“伝統的な変化球”として、こういった組み合わせが受け継がれているのでしょう。今見てもレトロでお洒落だけど、逆に今だからこそなんだか時代にフィットするような気もします。

アンティーク加工で色ムラを施したモデル
アンティーク加工で色ムラを施したモデル

ー異素材のコンビもそうですが、2000年代頃から新たな色の革靴が増え始めたような印象があります。

21世紀以降は、このローファーのようにアンティーク加工を施したモデルが顕著に多くなってきましたよね。グリーンやグレーなど、それまではあまりチョイスされなかったカラーが出始めたのと同時期に色ムラのある革靴が増えました。

イギリスのスムースレザー系のタンナーが減っていった一方で、ヨーロッパでアーティスティックなことに挑戦するタンナーが登場して一気に供給が広がりました。おそらく、イギリスやフランスがやらないような新しいことをやるという流れがあったのだと思います。それまでは、革と革以外の素材の組み合わせで遊んでいたのが、21世紀になって革自体に演出を施すようになったということが見えてきますね。

テクニック編

基本に忠実でありながら、トレンドを取り入れるセンスが巧み

基本に忠実でありながら、トレンドを取り入れるセンスが巧み。

ー90年代に入ってから細かなディテールが現行品と異なるものが増えたのには、どんな理由が考えられるでしょうか。

90年代後半はメンズファッションの歴史で「モダン・ブリティッシュ」と呼ばれています。それまでの伝統的なブリティッシュ・トラッドの要素を残しつつ、洋服も革靴も少しモダンにしたものが流行ったんですよ。

すっかり人気の定着したポール・スミスだけでなく、ビスポークテーラーのオズワルド・ボーディングやティモシー・エレベスト、革靴メーカーであればホールカットの靴をウリにしていた「ティム・リトル」、当時は南アフリカの工場で作らせていた「オリバー・スウィニー」、日本でも人気のあった「パトリック・コックス」がこういったスタイルを提唱していました。

大きめのブローキング
大きめのブローキング

そういった背景の中で出てきたのが、デザインを強調するディテールです。たとえば、大きめのブローキング、装飾の強いメダリオン、ギザギザのストームウェルト、スクエアのトゥなどが挙げられます。トラディショナルという文脈は守りつつ、モダンなスパイスを加えたものがウケていたのでしょう。

ストームウェルトに施されたギザギザ
ストームウェルトに施されたギザギザ

あとは、靴が好きな方には木型にこだわりを持つ方も多いと思いますが、私個人的には紙型も大事だと考えています。そういう意味で、ジョセフ チーニーは芸達者だと思います。基本を守りながら、トレンドを入れて、双方のバランスを取るのがとても上手いですよね。極端な話ですが、イギリスのブランドなのに、アメリカっぽい靴をオーダーしたらきっとできてしまうだろうなとも思っています。テクニックで言えば、このコバを見てください。

極限まで削られたコバ
極限まで削られたコバ

ここまでコバが削ってある革靴は久しぶりに見ました。職人さんの「ここまでやってやったぜ」という意気込みを感じますよね(笑)。これは、ジョセフ チーニーでは「デッドクローズ」と呼ばれている仕様です。文字通り、これ以上いったらNGなところまで削っています。仕事がとても丁寧で、技術の高さを裏付ける証拠です。これまでに、さまざまなブランドの別注やオーダーに応えてきたというのが良く分かりますね。

インペリアルコレクションはビスポークさながらのクオリティ
インペリアルコレクションはビスポークさながらのクオリティ

チャーチ創業家がジョセフ チーニーを買収し、再度独立した後に出した「インペリアルコレクション」はその賜物ではないでしょうか。ウエスト部分がシェイプされて、土踏まずの真ん中が山のように盛り上がっているフィドルバック仕様や、ソールの半面を黒く塗る半カラス仕上げ、アウトソールにステッチが見えないようにしたヒドゥンチャネルなど、技術力が成すエレガントな意匠が詰め込まれています。

職人が手作業で入れるスキンステッチ
職人が手作業で入れるスキンステッチ

そのほかにも、たとえばこのモデルを見てください。スキンステッチが入っています。こういった分かる人にだけグッとくる装飾がなんとも美しいですね。履く人のことを常に探求しスキルやセンスを磨いてきたからこそ、こうした“ちょっとした遊び心”の要素が妙に引き立つような感覚を覚えます。

パイピング部分にもほかのモデルと異なりラインが入っています

これも珍しい仕様ですね。パイピング部分にもほかのモデルと異なりラインが入っています。このように色々と実験をしているようにも見えるんですよ。成功や失敗という話ではなくて、たとえば当時の世情や流行、経済活動など、すべてを技術の栄養にしているのだと思います。

左から:「アルフレッド」の裁断面、「ケンゴン Ⅱ R」の裁断面
左から:「アルフレッド」の裁断面、「ケンゴン Ⅱ R」の裁断面

あとはソールに敷き詰められたコルクの量もモデルによって違いますよね。こちらは「アルフレッド」と「ケンゴン Ⅱ R」を裁断したものですが、コルクの入れ方をドレスとカジュアルで若干変えているのが分かりますよね。

ドレスシューズの場合は、ヒールを釘打ちするために土踏まずからヒールの前半分くらいまで入れて、一方でカントリーシューズのようなタフに履くモデルには、コルクをフルで入れています。さらに、シャンクには長さがあり、足なじみが良い天然素材の木製シャンクが使われています。

レザーボードで作られたヒールの積み上げ
レザーボードで作られたヒールの積み上げ

ヒール部分の積み上げにしても、ジョセフ チーニーはすべてレザーボードで作られています。原材料を安く仕上げるために、最下部だけをレザーにしてそのほかを別の素材にしているよう革靴もありますからね。普段目にしない箇所にこそ、こだわっているブランドのポリシーが改めて分かる気がします。

これらすべての工程を自社で行い、日本での総代理店もずっと変わらない。だからこそジョセフ チーニーは、日本との密なやり取りを経て、お客様からのレスポンスを経験値として蓄積していっているのですね。その積み重ねがさまざまなオーダーやファンの期待に応えるモノづくりに繋がっているのだと思います。これだけの数のアーカイブモデルを見て、そのことを改めて感じさせられました。

photo Masahiro Sano text K-suke Matsuda(RECKLESS)

RELATION

服飾ジャーナリストが米国で出会った、英国靴デビューの原体験。 服飾ジャーナリスト 飯野 高広

革靴は自分だけの一足に育てていく過程が楽しい。
その要望に応えてくれるのが英国靴の魅力だと思います。

服飾専門学校で教鞭を振るい、さまざまなメディアへの寄稿を通じて、紳士靴やスーツなど、男性の服飾品の歴史と魅力を伝え続けている飯野高広さん。服飾ジャーナリストという肩書きの通り、長年ファッションの文化や流行を研究してきた生き字引的な存在です。そんな飯野さんが誇る170足以上の革靴コレクションの中に、英国靴の魅力にのめり込む原体験となった「ジョセフ チーニー」がありました。今回はそのエピソードとともに、革靴遍歴や英国靴の面白さについて語っていただきました。

飯野 高広

ファッションの興味や考え方をデザインする仕事。

— 服飾ジャーナリストとしての活動について教えてください。

服飾専門学校の講師業を主軸に、『ミューゼオ・スクエア』さんなどのメディアに企画を提案したり記事を寄稿しています。学校では、モッズやヒッピー文化のようなファッションの歴史についての講義をしていますが、自分の役目は服飾の敷居を下げて興味の入り口をつくることだと思っています。当たり前ですが、生徒さんと自分の世代ではファッションに関する受容の仕方が違います。私たちの若い頃はブランドに対して妄信的になっていましたが、若い世代はブランドをリスペクトする一方で客観的な視点を持っています。だからこそ、「洋服はこう着なさい」と押し付けがましく伝えるのではなく、「こういう世界もあるんだよ」と、好きなファッションについて別の視点で考えたり、興味を持つきっかけを与えることが大事だと思っています。かれこれ15年ほど教壇に立っていますが、どの年度の生徒さんも触れている文化や考え方がそれぞれ違うんですよね。そういうことを皮膚感覚で感じられるのは、私にとっても有意義です。自分とは違う感覚に触れるのを億劫にしないというのは、とても大切なことじゃないですか。だからこそ、生徒さんたちにもよく「私の授業は漢方薬だ」と言っているんですよ(笑)。即効性はないけど、後で効いてきて、5年、10年が経った後に、ファッションを振り返るポイントになればうれしいです。

時計

革靴にはレディメイドの存在意義を感じるプロダクトが多い。

— 普段どのような基準でモノを購入されていますか?

洋服に関してはオーダーメイドとヴィンテージを買うことが主になりました。ただ既製品が全然ダメだということではなく、今でも気に入ったモノがあれば買うようにしています。そういう意味では、革靴はビスポークだけでなく、まだまだレディメイドのモノを買うという感覚が強いかもしれません。私は20代の頃から高価なモノやスタンプラリー的に有名ブランドを買うということはありませんでした。それよりも、「何年つき合っていけるかな」ということを主眼に置いていました。だからこそ、今でも変わっていませんが、買う前に徹底的にモノのことを調べています。たとえば、「こういうスタイルの革靴を買うならどのブランドが良い」とか、「自分の身体のバランスを考えるとこういうモデルが良さそう」とか。そこに妥協しないことで、そのブランドしか作れない唯一無二のモデルや、自分の中の永久定番となるモノに出会うことができます。そういうモノに出会えなければ必然的にオーダーメイドになるわけですが、とくに革靴にはまだまだレディメイドの存在意義を感じるプロダクトが多い印象です。その結果、似たようなブランドのモノばかりそろえてしまうのですが(笑)。

自分のスタンダードになるモデルは、黒と茶のペアでそろえる。

— 革靴遍歴を教えてください。

一番初めに自分のお金で購入したのは、月並みですが「リーガル」のローファーです。学生の時に履いていたものですが、今でも大切に持っていますよ。それから日本やアメリカで作られた革靴を履くようになり、次第に英国靴や他の国の靴へと興味が広がっていきました。デザインはバラバラですが、一つルールを決めていて、自分の永久定番になるモデルに関しては黒と茶のペアでそろえるようにしています。たとえば、内羽根のパンチドキャップトゥはエドワードグリーンの「バークレー」、内羽根のフルブローグは今回持ってきたジョセフ チーニーと、旧チャーチの「チェットウィンド」、外羽根のプレーントゥはチャーチの「シャノン」とオールデンの「990」「9901」など、挙げたらキリがないですね。スタンダードの条件は、時代に左右されないデザインで、なおかつ履きながら自分だけの一足に育ってくれるモノです。ユーズドの革靴もスタンダードだと思ったら、ペアにしないと気が済まなくなってしまい、気づけば170足以上のコレクションになっていました。「棺桶に入れてくれ」なんてことを言うつもりはないので、いつか寄贈することになるかもしれないですね。20世紀の終わりから21世紀にかけて、こんな靴を履いて世の中を歩いている人がいたと後世に伝えていけたら良いなと……(笑)。

英国靴デビューの原体験となった別注モデル。

— 本日お持ちいただいたジョセフ チーニーとの出会いについて教えてください。

ジョセフ チーニーというブランドを初めて知ったのは大学生の頃でした。就職後にイギリスへ旅行した時、確かバーリントン・アーケードにあった直営店みたいな小さなお店を見つけて、いかにも英国靴らしい顔つきに惹かれたのですが、当時は「20代半ばで履いてもいいのか」という葛藤があったので、カタログをもらって帰りの飛行機の中で眺めて憧れているだけで終わってしまったんです。ところが、1999年か2000年くらいにニューヨークの「J.PRESS」を訪れた際に、別注の内羽根フルブローグと出会い、思わず黒と茶の二足を買ってしまいました。ラストは現在も使われているクラシックな「175ラスト」で、他にも外羽根のプレーントゥや内羽根のストレートチップもあって、正直に言えば全モデル欲しかったんですが、自分の中でもっとも英国靴らしいイメージに近いこのモデルだけを手に入れることで折り合いをつけました。いつもなら宅配便で郵送してもらうのですが、その時は重量オーバーになることを覚悟して自分で担いで持って帰りましたよ(笑)。そして、それ以来英国靴にのめり込んでいくようになりました。運が良かったと思うのは、英国靴デビューのきっかけが、当時の日本で10万円近くしたいわゆる高級靴と呼ばれるモノではなくて、質実剛健で履く人を引き立てるこの靴だったということです。だからこそ、20年が経った今でも変わらず大切に履いています。

“蓄積の美”を地で行く、英国らしい価値観を体現するブランド。

— この20年でジョセフ チーニーというブランドの印象は変わりましたか?

その当時もまったく悪い印象がなかったですが、おべっかを使うわけではなく、私の中で一番評価が上がったブランドです。自分の核となるポリシーを保ったまま、きちんと変わるべきところをブラッシュアップしていますよね。「イギリスの靴だよ」という文法を守りながら、シティコレクションのような現代的なアプローチがあり、その一方で「ケンゴン Ⅱ R」のような質実剛健の魂を感じるモデルもあります。英国プロダクトには創造の美よりも、“蓄積の美”という価値観が反映されていると思うんです。たとえばなぜ二階建てバスがあるのかと言えば、過去から引き継いだだけなんですよ。それは逆に言えば、変える必要がないくらい良いということですよね。いわゆる紳士靴と呼ばれる領域でも、ブローグやキャップトゥのデザインは、英国のモノという価値をこえて世界標準になっているじゃないですか。変わる必要のない良さを蓄積して磨いているからこそ、変わるべきところはいとも簡単にアップデートすることができる。イギリスには、そういう価値観を感じさせてくれるメーカーが多い印象です。ジョセフ チーニーは、まさにそれを地で行くブランドの一つだと思います。

自分だけの一足を、自分で完成させる楽しみ。

— 飯野さんの思う、英国靴の面白さとはなんでしょうか?

「革靴は自分で完成するものだよ」と言われているような、独特の“ほっといてくれる感”が私は好きです(笑)。たとえば、色で言うとコンカーという茶系のカラーがありますが、薄い色のクリームを塗ればミディアムブラウンに収まりますし、濃い色のクリームであればダークブラウンになりますよね。完成されたモノを買ってただ履くだけではなく、自分で料理できるというのは楽しいじゃないですか。家具のように日曜大工をしてへんてこな仕上がりになってしまっても味になりますし、そういう器の大きさはとても英国的だなと思います。私は職業柄、靴のクリームを買って頻繁に反応をチェックしているのですが、とりわけ質実剛健な英国靴は、それに応えてくれて自分だけの革靴になってくれるモノが多いですね。中には「過保護にしなくてもいいよ俺は」という一足もありますが、でも本日履いているのは、知人から譲り受けて15年以上履いているジョセフ チーニー製のキャップトゥです。この革靴のように、素直な革質のモノは試し甲斐があります。だから、ついモニターとして色やワックスを試してしまいますよね(笑)。そういう経験があってこそ、靴用クリームのピンチヒッターとして「ニベアクリーム」を散布したり、革を柔らかくするために化粧水「極潤α」を使うなんていう裏技も見つけることができます。色々なアプローチで自分だけの一足を完成させられる。そんな楽しみを与えてくれるのは英国靴の魅力だと思います。

服飾ジャーナリスト
飯野 高広さん

1967年生まれ、東京都出身。大学卒業後、大手鉄鋼メーカーに約11年間勤務し、2002年に独立。ビジネスマン経験を生かしたユニークな視点で、紳士靴やスーツなど男性の服飾品にまつわる記事を執筆する服飾ジャーナリストとして活動する。現在は「バンタンデザイン研究所」で講師を務める傍ら、さまざまなメディアに寄稿。「靴磨き選手権大会2020」のアドバイザーも務める。代表的な著書に『紳士靴を嗜む~はじめの一歩から極めるまで~』(朝日新聞出版)など。

photo TRYOUT text K-suke Matsuda(RECKLESS)

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バイヤーが語るジョセフ チーニー

若き百貨店の紳士靴バイヤー対談 あらゆるドレスシューズを見てきたメンズ館バイヤーが語るジョセフ チーニー

バイヤーが語るジョセフ チーニー

移り変わりの激しいファッショントレンドの中にあって、古き良き製法やデザインで普遍的な魅力をもつ紳士靴。一方で、定番シューズもモディファイを繰り返し年々履き心地などクオリティがあがっているのもまた事実。そんな、奥深い紳士靴の世界を一番近くで、一番多く見てきた百貨店のシューズバイヤーではないでしょうか。現状の知見に留まらず、常にトレンドに敏感な彼らの審美眼を通して、紳士靴の今とジョセフ チーニーのこれからを紐解きます。今回お呼びしたのは、ともに「メンズ館」という大店を張る三越伊勢丹、阪急百貨店の敏腕2名。
 

潮流を捉える二大『メンズ館』の新星

三越伊勢丹 田畑智康 氏
三越伊勢丹 田畑智康 氏

2006年伊勢丹(当時)に入社。伊勢丹新宿店メンズ館の靴売り場からキャリアをスタートさせ、三越と合併後は複数店舗での靴のバイヤーとして活躍。2019年より伊勢丹新宿店メンズ館のバイヤーに就く。

バイヤーが語るジョセフ チーニー
阪急阪神百貨店 芝崎 優輔 氏

2007年に阪急百貨店(当時)に入社。阪急メンズ大阪の靴売り場に配属され、4年目からバイヤーとして活躍。現在、阪急メンズ大阪だけでなく、阪急メンズ東京、博多阪急の3店舗を担当している。
 

大きな流行が起きにくい中で、安定した人気を誇る英国靴

アルフレッド

-まずそれぞれの店での取り扱いブランドを教えてください。

田畑 リーガルからエドワード・グリーン、ジョン・ロブまで、幅広い品ぞろえをしているのがメンズ館の特徴ですね。価格帯でいうと2万円台から20万円超くらい。他の英国靴ではクロケット&ジョーンズ、トリッカーズも取り扱っています。

芝崎 取り扱いブランドはそれほど多くなく、メインは伊勢丹さんとそれほど変わりません。加えて、お客様の動向を見ながら別注品や限定品を企画して、バリエーションを充実させています。トレンドとしては英国靴に力を入れていますが、同じブランドでもポジションや役割は違うかもしれませんね。

バイヤーが語るジョセフ チーニー

田畑 最近はオフィスでの服装がカジュアル化している影響でドレスシューズの市場がシュリンクしてしまい、大きなトレンドが起きにくくなっています。過去にはイタリア靴や国産ブランドなどのブームがありましたが、そのようなトレンドはなく、その中でも英国靴は人気が安定していて、手堅いイメージがあります。ただ、プレーントゥやローファーのような汎用性のある靴が求められている傾向が強くなってきていて、フルグローブやセミブローグの売り上げは昔と比べると落ちていますね。芝崎さんのところではどうですか。

芝崎 基本的に同じ傾向です。例えば新年度を迎える前にフレッシャーズフェアをすると、黒のストレートチップがすごく売れた時代とは違って、ビジネスシューズのカテゴリーに入る革靴を買いに来られるお客様自体が減っています。一方で、スーツが好きだから着るというお客様が一定数いるので、6~7万円よりも価格が上の靴になると売り上げは堅調に推移しています。

田畑 靴好きのお客様に限定すると、売り場に並んでいるものではなく、もっと尖ったものなど、持っていない靴を欲しがられる人が多いので、指向性が深くなっていく感じです。

バイヤーが語るジョセフ チーニー

芝崎 私は時間があるときは店頭で販売もするのですが、お客様が履かれている靴だけでなく服装も確認して、そこから今起こっているトレンドを推測します。また、アウターを買われた紙袋を持たれたお客様を見かけるようになると、売り場にブーツを出すなど、買い付けの段階で計画したことより、売り場の状況を見ながら軌道修正することが多いですね。

田畑 私も週末の空いている時間は店頭に立っていることが多いので、お客様の動向を見ているだけでも勉強になります。むしろ最も大事な情報だと思っていて、例えば3足しか売れなくても、手に取られた人や実際に履かれた人はすごく多かったのに、何かしらの理由で購入には至らなかったということもある。その何らかの理由を改善するとベストセラーになる可能性もあります。ですから店頭でのお客様の背景を探っていくことは、とても大事だと考えています。

履き込んでいくうちに自分の一部になるような感覚は英国靴ならではの魅力

ジョセフ チーニー

-それでは本日のテーマであるジョセフ チーニーについて、まず英国靴についての印象を教えてください。

田畑 質実剛健で、ドレスシューズの基本中の基本が詰まっているという印象です。芝崎さんも海外出張に行かれると思いますが、工場を訪問して感じるのは非常に誠実なものづくりをしていること。細かい縫製も含めて非常に完成度が高く、またチーニーに代表されるように自社工場で一貫生産しているブランドが多いのが強みです。インポートの靴は価格が高いといわれますが。品質とのバランスを考えると決して高くないと思います。

芝崎 靴に興味を持ったきっかけが英国靴だったので、個人的に好みという部分を差し引いても、履いていくうちにフィットする感覚はやっぱり英国靴ならでは。履き始めは痛いこともあるのですが、履きこんでいくうちにフィットしていき自分の一部になるみたいな感じが好きです。あと、単純に見ていて落ち着きます。入社したての頃にジョン・ロブを買ったのですが、30歳手前でいったん履くのをやめてしまったんですよね。似合っていないというか、早すぎるんじゃないかと思って。

田畑 うん。なるほど。

芝崎 30歳を超えてから、再度履き始めたのですが、やっぱりかっこいい。年齢で縛るつもりはなく個人の自由なのですが、英国靴は大人になったら似合う靴なのかなと思っています。

バイヤーが語るジョセフ チーニー

田畑 英国靴の中でもチーニーの魅力は圧倒的なコストパフォーマンス。価格に対しての品質の良さが際立っていて、若い人でも手を出しやすい。実は今、チーニーはすごく売れていて、英国靴の中ではトレンドになっているといってもいいくらいです。

芝崎 チーニーは阪急メンズ東京では扱っていて、阪急メンズ大阪では2020年春夏から取り扱いがスタートします。価格帯でいうと決して高くはないのですが、安いかというとそうでもなくて、面白いのはエドワード・グリーンを履く人でもチーニーを履くんですよね。もちろん、普段リーガルを履く人でもチーニーを履きたいと思っていて、履きたいと思う人の幅がとても広いと感じています。

ジョン・ロブを履く人でもチーニーを選ぶのはつくりがしっかりしているから

アルフレッド

田畑 チーニーの何が好きかというとラスト。若い人たちが買われる一番の理由は、優れたコスパもあるのですが、125と呼ばれるラストの影響が大きい思います。一般的にインポートの靴は日本人にぴったり合うわけではなく、特に踵が大きいんですよね。ところが125ラストは踵が小さくて、内ぶりといってセンターのラインを内側に振っていて、これらの工夫が25歳から34歳までのミレニアム世代の人たちに合っているんです。この125ラストは2011年に開発されていて、英国ブランドって進化がないように思われがちなのですが、2000年以降もきちんとラストの開発をしているという点がいいところ。実際にうちでは、この125ラストを使ったストレートチップのALFRED(アルフレッド)が圧倒的なベストセラーで、若い人たちが指名買いします。

芝崎 先ほど話しました、エドワード・グリーンやジョン・ロブを履く人が、なぜチーニーを履くのかというと、つくりがしっかりしているからなんですね。ぱっと見たときにいい靴だと分かりますし、靴を脱ぐことが多い日本だと靴のことをある程度知っている人からすると、チーニーはライニングを見てもこまかいところまでこだわっているのが分かる。単純に価格の比較でエドワード・グリーンやジョン・ロブの3分の1の価格で買えることを考えると、ものすごくいい靴なのではないかと思っています。

アルフレッド

田畑 価格に対する品質というところで考えると、今の若い人たちはしっかりした必要なものだけを買うという印象で、買いたいものが明確に決まっている。身の丈に合ったものを買って、それが新品でなくてもいいという考えですね。先日、うちで開催した靴博ではユーズドのドレスシューズを販売したのですが、すごく売れました。いいものを新品で買うという発想ではなくて、ユーズドでも自分に合ったものがあればそれを価値として受け入れるという考えは若い人たちの間に浸透しています。無駄なものを買わないという考えで、その対象にチーニーが選ばれることが多くなっています。

芝崎 あとチーニーは他の英国靴と比べて特徴が非常にしっかりしていて、このデザインはあってしかるべきという定番をしっかり見極めてつくり込んでいる。だからピンポイントでの指名買いも多いのではないかと思います。

アルフレッド

田畑 改めてみると、丁寧につくられていますよね。なんか、レベルが上がっているような。

芝崎 確かにレベルが上がっています。昔のドレスシューズをよく知っているおじさんが言いがちなのが、「昔はよかった」的な話。

田畑 レザーは昔の方がよかったという話ですよね。いろいろなブランドでレザーは昔の方がよかったといわれがちなのですが、チーニーはむしろよくなっている気がします。

芝崎 レザーの質だけでなく、ラストやフォルム、デザインなど、私がバイヤーになりたての頃と比べると、クオリティはものすごく上がっています。

田畑 ラストへの根付かせ方というか、ラストの再現性もすごく高くなっている気がする。あと、今はアルフレッドのような長すぎないノーズが支持されています。

芝崎 やっぱり安心感のあるのはこれなんですよね。ラウンドの長すぎないノーズ。

125ラストの開発は、時代の変化に柔軟に対応していこうという考えの表れ

バイヤーが語るジョセフ チーニー

-お話が変わりまして、それぞれの店舗で扱われているチーニーのモデルを教えてください。

田畑 売り場としてチーニー対して期待している役割として、英国靴の入門編というのがあり、手堅く間違いのない靴選びをしていただきたいという思いで、定番のモデルを常時そろえています。

芝崎 阪急メンズ東京も定番を中心に取り揃えています。ですがこの秋冬は、脱ぎ履きしやすい靴ということでサイドゴアブーツも扱うようになりました。基本的にレースアップのブーツが選ばれにくくなっているので、エレガントで見た目もかっこよくて、さらに脱ぎ履きしやすいという理由ですね。この2~3年、サイドゴアブーツ自体が人気のアイテムとして注目されています。

アルフレッド

田畑 バイヤー目線でいうとアルフレッドは本当に好きですね。今、私の中でも注目しているのは内ぶりなんですよ。大量生産するにはどうしてもセンターに中心を持ってこないといけないのですが、でも足ってそもそも人差し指のところが高くなっている。既成靴だと、靴の最も高いところと足の最も高いところが合っていないところがあって、最近ではその問題をクリアしていこうというブランドがいくつか出ているんですね。そのためには木型のよさだけでなく、職人の技術の両方を兼ね備えていなくてはいけなくて、アルフレッドがこの価格で買えるのならイチオシですね。

芝崎 他に挙げるなら5万円台で展開しているシティコレクションもおすすめ。本当に入口の価格帯で、中でもフルグローブのウイングチップは、カントリーっぽい雰囲気というか、皆があまり履いていないような靴だからこそ履きたいというのはあります。改めて見ると、コテコテしている靴というのもなかなかかっこいい。こういう靴をあえてかちっとしたスーツに合わせるのもいいかもしれません。私は新入社員の頃、年に1回ノーザンプトンを訪れるという旅行を個人的にやっていて、チーニーのアウトレットで購入した茶色のグローブ系のモデルを2足所有しています。

フルブローグ

田畑 チーニーのオーナーであるウィリアム・チャーチ氏はジェントルマンで優しいですよね。

芝崎 海外の展示会に行くと、丁寧に商品を紹介してくださるのですが、会社の代表があれだけ細かく一つひとつを紹介するという事例は他にはありません。オーナーがものごとをよく分かっている証拠なので、そんなブランドは信頼できると思います。

田畑 オーナーに情熱があるというのは大事です。チーニーはセレクトショップなどの別注を手掛けることでも知られているのですが、小ロットなのにも関わらず柔軟に対応してくれる。それだけでなく、別注のロゴまでつくってくれるなんてなかなかありません。

芝崎 本当にそうですよね。英国ブランドってすごくいいものづくりをするのですが、一方で思考がストップしているところがあって、売れないということに対してその理由をなかなか理解してくれない。チーニーが細かく対応してくれるというのは、そのあたりのことを理解してくれているのだと思います。

田畑 マーケットに対しての理解がありますよね。市場は常に変化しているのに、その変化に対応してくれるブランドって少ないんですよ。125ラストが2011年に開発されているのも、時代の変化に柔軟に対応していこうというチーニーの考えの表れだと思います。

次代が変わっていく中で、お互いに言いたいことがいえる関係性が重要

ジョセフ チーニー

-それでは最後に、今後チーニーに期待したいことを教えてください。

田畑 英国靴はある種完成されていて、伝統の継承がすべてだというブランドもなくはないので、チーニーとはぜひ一緒に進化していきたいです。お客様の価値観やマーケットはこれからも変化していくので、技術的な進化も含めてどんどん変わっていければいいなと思います。

芝崎 トレンドが目まぐるしく変わっていくと、今までの買われ方とは違う買われ方というのが出てくると思うんですよね。その中で、どれだけ我々の要望を聞いてもらえて、形にできるかというところが売り上げにつながってくる。現在、チーニーにはこのようなことには対応していただいているので心配はしていないのですが、これからスーツがもっと着られなくなって、それこそ民族衣装みたいになる可能性だってある。そうなったときにどんな対応をしていただけるのかという点において、お互いどれだけ情報交換や情報収集できるかが重要だと思っています。よりお互いに言いたいことがいえる関係性をこれからも築いていきたいですね。

photo Masahiro Sano text K-suke Matsuda

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ジョセフチーニー

英国好きのスタイリストが、12 年愛用しているドレスシューズ。「江東衣裳」代表/スタイリスト 部坂 尚吾

ジョセフチーニー


優れた技術の基盤とそれを積み重ねてきた伝統がある。
僕にとって「ジョセフ チーニー」は究極の “バイプレーヤー”です。

雑誌、広告、映画などで活躍するスタイストの部坂尚吾さんは、自他共に認める英国ラヴァー。毎年一度はイギリスを訪れ、その街の一員として雰囲気を味わい、人間観察を楽しんでいるそうです。そんな部坂さんですが、365日革靴以外は履かないというこだわりの持ち主。しかも、その趣向はかなり偏っているのだとか。長年愛用されている「ジョセフ チーニー」のお話と、革靴遍歴を尋ねました。

スタイリスト部坂 尚吾さん

イギリスの生活に溶け込み、雰囲気を味わう旅。

— よくイギリスへ旅行されているのはなぜですか?

イギリスのスーツスタイルが好きだったことが転じて、イギリスそのものを好きになってしまったからです。今では移住したいとすら思っています。だから、年に一度は休みを設けてヨーロッパへ旅行するようにしています。今年は、両親の還暦祝いを兼ねてイギリス旅行をしてきました。以前、フランスが好きな妻に合わせ、イギリスとフランスとの一週間ずつの滞在になったことがありましたが、滞在時間が短すぎて少し消化不良でした(笑)。観光地を巡るツアーも楽しいですが、できる限りその街に長くいて、そこで暮らすかのように滞在するようにしています。そのおかげで、表面的ではない物事を発見できるように思います。また、その際になるべく日本にいるときと同じような生活リズムをキープするように心がけています。旅先で張り切り過ぎて無理をしてしまうと大体体調を崩してしまうので……。イギリスはお店の閉まる時間が早く、早寝早起きの僕の生活リズムにもぴったり合っています。旅行はそういったことを実感したり、街や人の雰囲気を味わうことができる贅沢な時間です。あまりにも有意義な時間を過ごすことができるので、帰国するのが億劫になってしまうことがしばしばあります。

グレンロイヤル

スタイルからオリジナリティを感じること。

— 英国人から学んだことでとくに印象的だったことはありますか?

イギリスに行くたびに強く思うのは、確固たる自分のスタイルを持った人が多いということです。トレンドに敏感で、街を観察すれば何が旬なのかおおよそ見当のつく日本とは異なり、イギリスではそれが非常にわかりづらいです。たとえば、「ザ・フー」のバンドTシャツを着て、ボロボロのジーンズという出で立ちなのに、なぜか足元だけピカピカに磨かれたドレス靴を履いている人や、ビスポークであろうスーツを着こなす銀幕スターのような人など、オリジナリティ溢れる格好の人が多いです。自分自身のポリシーを持っていてスタイルを大切にする文化はとても魅力的に感じます。作り手のこだわりが伝わるものに魅力を感じて手に取ることが多いのですが、気が付けば茶系のレザーアイテムが多くなっていました。いずれも、昔ながらの製法を受け継ぐなどポリシーやスタイルを貫いているメーカーが多いです。先日のイギリス旅行でも、ブライドルレザーの水筒ケースに一目惚れしました。保温性に優れているようにも見えないし、とりわけ軽い訳でもない。なぜこれを生産しようと思ったのかが気になって仕方がなかったです。お店の店員さんも“本当に買うの?”というような表情をしていました(笑)。

ジョセフチーニー

365日革靴で過ごすのが、部坂流。

— 英国のオリジナリティを大切にする考えは、部坂さん自身のスタイルにも生きていますか?

そうかもしれません。僕は20代の前半の頃から革靴以外履かなくなりました。なぜかと言えば、革靴を履くとコーディネートが締まるのでかっこいいからというシンプルな理由です。昔、テレビ番組のADをやっていた時にロケハンで無人島へ行ったんです。その時にも当然のごとく真っ赤な革靴を履いていったら、ディレクターに「ふざけんなっ!」と本気で怒られたことがあります……。撮影前日に「別の靴を買ってこい」と言われてお金をもらったのですが、あろうことかコンバースのオールスターハイカットを買って行ってまた怒られました。もっと脱ぎ履きしやすい靴で来いという真意をはき違えていましたね(笑)。スタイルを貫くというのはなかなか簡単なことではありませんね。僕自身は、今も365日革靴を履き続けています。もちろんスタイリングをする際には、自分の好みを押し付けるようなことはしません。ですが、僕の好きなスタイルを理解し、共感してくださる方とお仕事をさせていただく機会が多いのは嬉しいことです。

ジョセフチーニー

自身の原体験であり、スタイルに合う英国靴に傾倒。

— 革靴遍歴を教えてください。

初めて履いた革靴のことはあまり覚えていないのですが、20代前半の時にスーツに合わせて英国靴を買ったのが最初だと思います。今日履いている「ジョセフ チーニー」を購入したのもその頃だったはず。その後、当時まだ根強く残っていたクラシコイタリアブームの影響でイタリア靴も履くようになりましたが、現在では、英国靴が圧倒的に多いです。たとえば、「ジョセフ チーニー」をはじめ「ジョンロブ」「エドワードグリーン」「チャーチ」「ジョージクレバリー」「フォスター&サン」「クロケット&ジョーンズ」「トリッカーズ」など、一通り英国メーカーは履いていますし、所有している革靴の8割は英国靴です。自分が履いてみたいと思ったものと、衣装として使ってみたいものを収集していった感じでしょうか。英国靴以外ですと、イタリアの「ストール・マンテラッシ」「マンニーナ」「エンツォ・ボナフェ」、フランスの「パラブーツ」なども何足か持っていますが、やはり英国靴の比ではないですね。こういった話をしていて、よく人に驚かれるのが、アメリカ靴を一足も持っていないことです。稀に衣装として使用することはあるものの、ついに自分で購入に至る機会はありませんでした。

ジョセフチーニー

12年前に、先輩の勧めで手に入れた思い出の品。

— 本日履かれている「ジョセフ チーニー」はいつ頃に購入されたものでしょうか。

これは12年ほど前に、当時勤めていたセレクトショップで購入しました。僕の着ていた英国式のスーツに合わせて、先輩が見立ててくれた思い出の一足です。古典的なバーズアイのスーツに、ストレートチップでは真面目過ぎるので、内羽根にメダリオンが施されたこのモデルを推薦してくれたんです。ドレスの革靴自体を履き始めて間もない頃に購入した一足ということもあり、思い入れが深く今でも愛用しています。自分で定期的に磨いているのですが、とても気に入っているので、時には二日連続履いてしまうこともあります(笑)。それにも関わらず12年間履いても未だに現役で、本当にしっかりした作りだということをしみじみと感じています。最近「ユニオンワークス」でオールソール交換をお願いしたのですが、従来のレザーソールからオークバークレザーのソールに換えたり、ヴィンテージスティールを施すなど、カスタムすることで違いを楽しんでいます。この「11028ラスト」は、履いた時の足の収まりがとても心地良いです。トゥが細くウィズが広いデザインも、スタイルを選ばずどんなスーツにも合わせやすいところが魅力的ですね。

ジョセフチーニー

主役にも脇役になる、究極の“バイプレーヤー”。

— 「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。

10足以上持っていますが、クローゼットを見返してみて改めてラインナップの幅広さを感じました。僕が所有しているモデルだけでも、「CAIRNGORM Ⅱ R (ケンゴン Ⅱ R)」のようなカントリーブーツカントリーシューズ、「ALFRED(アルフレッド)」のようなドレス靴シューズ、コンビのローファーみたいなカジュアルなものまで様々です。メーカーさんによって、ジャンルの得意不得意があると思うのですが、「ジョセフ チーニー」のコレクションはどのモデルも履きやすく、スタイリングに合わせやすいのが魅力だと思います。また、数多い英国の靴ブランドの中で、圧倒的に他社とのコラボレーションモデルが多いのではないでしょうか。優れた技術の基盤がしっかりとあり、それを積み重ねてきた伝統があります。それが、多少のアレンジを受け入れられる余裕を生み出すのではないでしょうか。こうした高い柔軟性を備えた「ジョセフ チーニー」を、僕は究極の“バイプレーヤー”だと思っています。これほどバランスの取れたメーカーは、稀有なのではないでしょうか。

スタイリスト部坂 尚吾さん
スタイリスト
部坂 尚吾さん

1985年生まれ。松竹京都撮影所、テレビ朝日での番組制作を経て、2011年よりスタイリストとして活動をスタート。2015年に、「江東衣裳」を設立する。映画、CM、雑誌、タレントなどのスタイリングから、各種媒体の企画、製作のディレクション、執筆など、マルチに活躍。BRITISH MADEのWEB内「STORIES」にて連載中。現在、スタイリストアシスタントを募集中。

photo Masahiro Sano text K-suke Matsuda

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チーニー3足

定番3足を1週間コーディネート。 スタイリスト四方章敬さんならこう合わせる!



男の革靴、必要なのは最低3足。
仕事から休日までカバーするにはどう選ぶのが正解?

本格的な製法で作られたレザーシューズは何十年と愛用できますが、適切なお手入れに加えて“履いたら休ませる”ことが大切。靴の寿命を縮めないローテーションのためには、最低3足は必要といわれています。そこで、幅広いデザインバリエーションを誇るジョセフ チーニーのラインナップから、汎用性を考慮して3足をピックアップ。スタイリスト四方章敬さんに、1週間の活用例を提案いただきました。

チーニー3足

このラインナップなら、どんなシーンにも対応できる

いずれもジョセフ チーニーの定番モデル。左:オーセンティックなコインローファー「ハドソン」。程よく丸みを帯びつつ現代的なスマートさも感じさせるラスト5203を採用しています。きめ細かい上質なカーフで仕立てることにより、ドレススタイルへの対応力も高い一足。中:カジュアルライン“カントリーコレクション”の人気作「ケンゴン Ⅱ R」。
ミリタリーシューズに由来し、ラストはかつて英国軍にも提供していた4436を使用。さらに「ヴェルトショーン製法」と呼ばれる特殊なグッドイヤー製法で作ることで、雨水や埃が靴内部に入りにくく仕立てたヘビーデューティーなモデルです。右:セミブローグのドレスシューズ「ウィルフレッド」。端正で小ぶりな穴飾りによって装飾性を控えめにし、上品な印象に仕上げています。ラストはドレスシューズの定番125。2011年にブランド創業125周年を記念して誕生した木型で、小ぶりなヒールカップが日本人の足にもマッチします。

この3足を使って、スタイリスト四方さんが1週間コーディネートを提案

チーニー スタイリング

[Mon.]シリアスな会議は、スーツと内羽根靴でピリッと締めて。

週始めの月曜はミーティングの連続という方も多いはず。上役を交えた会議などシリアスな場面では、やはりビシッとスーツで臨みたいもの。乱れのない服装は相手に信頼感を与えるだけでなく、自分の立ち居振る舞いにも自信をつけてくれるはずです。そんなドレススタイルに合わせたのは、内羽根式セミブローグの「ウィルフレッド」。
「スーツはドレッシーなネイビーストライプですが、紡毛素材を選んで秋らしい季節感をさりげなく演出しています。ここに合わせる靴は王道のストレートチップでも悪くありませんが、少しだけ装飾性のあるセミブローグがベストマッチ。柔らかなスーツの生地感とあいまって、キリッと引き締まりつつも堅苦しくないビジネススタイルにまとまります。『ウィルフレッド』はラストがトゥボリュームは残しつつも、ウェストの絞りや小ぶりなヒールによりモダンな印象なので、スーツにも合わせやすいですね」(四方さん)

チーニー スタイリング

[Tue.] 終日市場リサーチ。外回りは上品かつ快適な足元で

一日中、外を歩き回るアクティブな日。疲れにくい服装でパフォーマンスを上げたいところですが、やはりビジネススタイルとしての上品さはキープすべき。そんなシーンで活躍するのが、ミリタリーシューズ由来の「ケンゴン Ⅱ R」です。締め付け感のない履き心地に加え、頑健なラバーソールにグレインレザーという素材使いにより、靴に気を遣うことなくガシガシ歩けるのもポイント。
「カントリーな表情の靴に合わせて、ツイードジャケットやミドルゲージのニットなど、温かみのある雰囲気でスタイリングしました。『ケンゴン Ⅱ R』はアッパーもソールも重厚で武骨ですが、外羽根式ウイングチップよりもデザインがシンプルなので、ビジネススタイルにも無理なく合わせられますね。コットンパンツを合わせる場合は、クリースの入ったもの選んでカジュアルに見えすぎないようにするとオンの佇まいをキープできます」(四方さん)

チーニー スタイリング

[Wed.]ノー残業デーは、カジュアルスーツとローファーで軽快に

社内が揃って早く退勤できるノー残業デー。なかなかスケジュールの合わない同期たちと、ブリティッシュパブで久しぶりに一杯……。そんな日は、リラックス感に加えて多少の華やかさもあると、楽しいムードをさらに盛り上げられることでしょう。
「パブに映える服装ということで、ロイヤルブルーのコットンスーツで軽やかさと華やぎを意識しました。インナーは寛ぎ感と上品さを兼備し、小粋な洒脱さも演出できるハイゲージのタートルニット。とくれば、足元も軽快なローファーが最適です。『ハドソン』はラウンドトウですがポッテリしすぎていないので、このスーツのようにドレスカジュアルな洋服と非常に相性がいいですね。アメリカのローファーとは一味違う、都会的な洗練を感じさせるところが魅力だと思います」(四方さん)

チーニー スタイリング

[Thu.]憂鬱な雨の日も、悪天候に強い一足があれば安心

雨天の通勤や外回りはなんとも憂鬱なもの。上半身は傘で守れても、靴底から冷たい水が染みて不快な思いをしたり、せっかくの革靴が泥で傷んでしまったりと、トラブルの種がたくさん。そんな日に「ケンゴン Ⅱ R」が大活躍してくれます。ヴェルトショーン製法とよばれる特殊な仕立てにより、雨水が中に染みにくい作りになっていることに加え、分厚いダブルコマンドソールで悪路も快適に歩くことができます。アッパーも汚れや水気に強いグレインレザーで、雨の中でも気を遣わなくていいのが魅力。
「肌寒い雨の日をイメージして、キルティングコートとコーディネートしました。靴もコートもカントリーテイストなので、全体に統一感が生まれますね。最近はコートもゆったりとしたワイドシルエットのものが主流になっていますが、ボリュームのある『ケンゴン Ⅱ R』はそんなコートと好バランスです」(四方さん)

チーニー  スタイリング

[Fri.]得意先と会食。セミブローグはジャケパンにも絶好

金曜夜には、長い付き合いのクライアントと食事会へ。気心知れた中なので、カチッとスーツで決める必要はないけれど、場にふさわしいドレス感は欲しい。そんな時はタイドアップしたジャケパンスタイルがちょうどいい具合です。そこに四方さんが合わせたのが、上品なセミブローグ「ウィルフレッド」。
「内羽根式のセミブローグシューズは、スーツにもジャケパンにも合う汎用性の高いデザイン。一足持っておくと重宝するアイテムです。このコーディネートでは、今季トレンドのフレンチを意識してみました。ポイントは黒を効かせること。ジャケット、ニット、ネクタイすべてに黒が入っています。足元の黒靴ともリンクして、トラディショナルだけれどクールな印象に映るのがポイントですね」(四方さん)

[Sat.]土曜は美術館へ。オーバーシャツとローファーできれいめに

美術館など大人な場所で過ごす休日は、服装も品よくきれいめにまとめたいところ。きちんと見えつつジャケットより気軽なオーバーシャツはそんなシーンで活躍するアイテムですが、そこに好相性なのがローファー「ハドソン」です。
「この『ハドソン』は色みもすごく魅力的ですね。少しグレーがかったブラウンで、渋さもありながら柔らかさも感じます。このコーディネートではイエローに近いベージュのコーデュロイパンツと合わせましたが、こういう華やかな色ともきれいに馴染んでくれます。トップスはガンクラブチェックのオーバーシャツにニットポロでトラッドにまとめつつ、スカーフをプラスして大人の洒落っ気を演出してみました」(四方さん)

[Sun.]クルマを飛ばして湖畔へ。大人アウトドアにも「ケンゴン Ⅱ R」が重宝

紅葉を見に湖畔まで日帰り旅行。もちろんスニーカーでもOKですが、より大人なスタイルで休日を満喫するなら、クラシックアウトドアでまとめるのがおすすめです。
「オイルドジャケットにカセンティーノ(イタリア、トスカーナ地方伝統のウール。毛玉のような起毛感が特徴)のプルオーバーといったトラッドなアイテムを活用して、アウドドアでも大人ならではのスタイルを考えました。こういったラギッドな装いにも『ケンゴン Ⅱ R』は似合いますね。履き込んで味を出していくと、さらにいい感じになると思います。オイルドジャケットやデニムと同様、エイジングでいっそう味わいが深まるのもこの靴の魅力だと思います」(四方さん)

英国ノーサンプトン伝統の本格的な作りはもちろん、大人の装いに幅広く対応するクラシックモダンなデザインもブランドの持ち味。四方さんのスタイリングを参考に、あなたのワードローブにも是非取り入れてみてください。

スタイリスト
四方章敬さん

1982年生まれ。武内雅英氏に師事し、2010年に独立。「LEON」「MEN’S EX」「Men’s Precious」「THE RAKE JAPAN」などラグジュアリーメンズ誌で活躍。ドレス、カジュアルともに精通し、クラシックを軸としつつひとひねり効かせたスタイリングに定評あり。

photo Kenichiro Higa text Hiromitsu Kosone

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ケンゴン Ⅱ R

名物セールスパーソンがモノづくりに惚れ込んだ、全天候型シューズ。
「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールスマスター 森山 真司

ケンゴン Ⅱ R

大粒のグレインレザーは最近ではなかなか見かけません。
ヴェルトショーンウェルト製法からも、職人の温かみを感じます。

2000年にオープンした「ディストリクト ユナイテッドアローズ」の立ち上げ当時から在籍するメンバーの一人であり、名物セールスパーソンとしてファッション業界で知られる森山真司さん。30年にも及ぶ販売歴の中で「ジョセフ チーニー」の変遷を目の当たりにしてきた氏ですが、ここ数年は自身の務めるお店でも取り扱っている「CAIRNGORM(ケンゴン) Ⅱ R」を愛用しているそうです。今回は森山さんの革靴遍歴と共に、その魅力をお伺いしました。

森山 真司

役職を超えて、お店作りのすべてに携われるプロジェクト。

— 現在のお仕事の領域を教えてください。

セールスマスターという肩書きを頂き、販売員の見本となる役割として店頭に立っています。気持ち的には、『スター・ウォーズ』でいうところの“ジェダイマスター”のつもりです(笑)。それに加えて、ユナイテッドアローズの中ではディストリクト自体がスモールプロジェクトだということもあり、販促活動のプランニングや、ディレクター・栗野のバイイングに同行することもあります。ホームページにどういうコンテンツを作るか、SNSに何をアップするかなどを企画したり、担当を割り振るのは僕の仕事です。お店のメンバーは7人だけなので、本体の「ユナイテッドアローズ」レーベルとは異なり小回りが利きます。たとえば、買い付ける製品にしても、みんなの「こんなものが欲しい」が強く反映されています。それは立ち上げ当初からずっとそうですね。だからこそ、お店のブログに関してもみんなが自分ごととして紹介してくれますし、好きなブランドや企画したオリジナル製品によって、自ずと担当が決まってきます。将来的にこのお店を何店舗かに増やしたいという野望はありますが、それと同時に小さいプロジェクトだからこそ、裏方的な仕事をやりながら店頭でお客様と接することができるというのはメンバーの全員が感じていることだと思います。僕個人の話で言えば、マネージャー的なポジションは性分ではないので、これからも店頭に立ち続けていたいですね!

プラモデル

プラモデル製作は至高の楽しみ。

— オフの時間は何をされていますか?

子どもの頃から『スター・ウォーズ』に登場するメカが大好きでした。だから、撮影で使われたプロップがどうしても欲しかったんですが、当然実物のプロップは手に入れることができませんでした。『スター・ウォーズ』自体のグッズも気に入ったものは購入していたので、結果としてコレクションになっているのですが、最近では小さいフィギュアはすべて処分しましたし、プラモデルで作る方が楽しくてしょうがないです。とりわけ最近は、おそらく僕と同世代の方々がプラモデルを開発されているので、当時夢中になっていた思い出がある分、どんどん精巧になってきているので、ついつい買ってしまいます(笑)。ちょうどこの間、3年と8カ月の月日を費やしてコツコツと作っていた全長約94cmのミレニアムファルコンをついに完成させました。ただ組み立てるだけでは飽き足らず、ウェザリング(汚し技法)の入れ方や塗装の仕方などを、できる限り当時のプロップを撮影した資料をもとに、近づけて仕上げた自信作です。新品よりも汚れていたり、くたびれていて味が出ている方が好きだという点では、革靴の好みと通ずる部分があるのかもしれません。

英国靴

“たくあん色”の英国靴が、革靴遍歴の原点。

— 革靴遍歴を教えてください。

初めて履いた英国靴は30年以上前に「BEAMS F」さんで購入した「ポールセン・スコーン」の革靴。当時は欲しかったサイズが品切れで、自分に合うサイズではないものを履いていたので、残念ながら後輩に譲ってしまいました。それからは、さまざまな国の革靴を試しましたが、現在100足以上あるワードローブの中でも英国靴の割合が多いですね。最初に買った「ポールセン・スコーン」のエイコーンという英国らしいカラーに惚れて以来、引きずっている感じです。栗野をはじめ、ディストリクトではみんなが“たくあん色”と呼んでいますが(笑)。ほかにも、「ジョン・ロブ」のスエード二足や、ボックスロゴ時代の「エドワード・グリーン」の一足など、本日お持ちしたラインナップはどれも20年ほど履き続けていますがまだまだ現役です。そして、圧倒的に茶系の革靴が多いので色々な表情が出てきていて、長年育ててきた証として経年変化を楽しんでいます。年齢と共に変化したのはサイズ選びでしょうか。昔は先輩からの教えもあり、ギュンギュンに小さいサイズを選んで足に馴染ませることを美徳としていましたが、最近ではあまりサイズに頓着しなくなりました。よく考えてみたら、欧米人は家の中でも革靴を履いているのに、頭が痛くなるようなサイズを履くわけがないですよね。あとは、革底の地面を感じる感じが好きな反面で少し疲れてしまうこともあり、ラバーソールの革靴を最近では好むようになりました。

英国靴

品質が高く、愛情を注いだ分返ってくる。

— 英国靴の魅力とはなんでしょうか?

古い雑誌に英国のジェントルマンが写っていたのですが、みなさんビスポークで誂えたスーツをビシッと着ている上流紳士にも関わらず、シャツの襟やカフスがボロボロだったんですよ。昔の日本で言うところの“バンカラ”という考えに近くて、気に入ったものは何が何でも愛用するという考え方なのだと知りました。その有名な話として、チャールズ皇太子のパッチワークだらけの革靴がありますが、やはり良い品質のものを買えばくたびれても味になりますし、値段に関係なく愛情を注いだ分返ってくるものだと思っています。そういう意味では、英国靴には品質に信頼のおけるものが多いですよね。

ケンゴン Ⅱ R

懐かしいグレインレザーと全天候型の製法。

— 「ケンゴン Ⅱ R」に惹かれた理由を教えてください。

もともと職人さんの温もりを感じられる革靴が好きなのですが、二年前にヴェルトショーンウェルト製法の革靴を購入してから気に入り、一年前にこのバーガンディのケンゴン Ⅱ Rを購入しました。英国のカントリー的な雰囲気も良いですし、全天候型なのでとても重宝しています。綺麗な格好をした時にこういったソールは合わせるのは難しいのですが、もともとセオリー通りのコーディネートをしない方なので、タイドアップやジャケパンスタイルにも合わせています。アッパーに大粒のグレインレザーを使用しているところも懐かしくて良いですね。90年代頃にはよく見かけたのですが、最近はなかなか見かけなくなってしまった。シボがある分、傷がついてしまっても目立たないので気にせず履けるのも魅力です。僕は純正にこだわらず使い勝手が良いようにカスタムするのが好きなので革紐の長さを変えたり、うちのお店で取り扱っている「タカフミ アライ」のレザーキルトを付けてアレンジしています。今季、ディストリクトの別注としてケンゴン Ⅱ Rのオリーブカラーを発売したのですが、大好評ですぐにサイズ欠けしてしまいましたよ。

英国靴

英国らしい王道の靴づくりを継承するブランド。

— 「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。

昔は「ユナイテッドアローズ」のオリジナル革靴を作っていただいたこともあり、ファクトリーブランド的な印象が強かったですが、チャーチ創業家であるウィリアム・チャーチさんがマネージング・ディレクターになり、リブランディングされてからは王道の英国靴づくりを貫かれている印象です。英国製品には代々受け継いで長く使って育てていくというマインドがありますが、僕も息子が大学の卒業式を迎えた際に、スーツに合わせて自分の「ジョセフ チーニー」の革靴を貸してあげたことがあります。息子も「いずれは欲しい」と言っていましたね。長く愛用できるモノの良さを体感させることができて、僕自身も嬉しかったです。「ジョセフ チーニー」には、老舗の風格を持つブランドだからこそ、これからも英国の伝統的な部分を守りながら新しい提案をし続けて欲しいですね。

森山 真司
「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールスマスター
森山 真司さん

1968年生まれ。ファッション業界で30年に及ぶキャリアを誇り、『スター・ウォーズ』をこよなく愛する“自称ジェダイ”。「ディストリクト ユナイテッドアローズ」には立ち上げ時より在籍する名物セールスパーソン。趣味は愛犬の散歩とプラモデル。100足以上の革靴を所有。
https://b.houyhnhnm.jp/moriyama_shinji/

photo TRYOUT text K-suke Matsuda(RECKLESS)

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ドレスバイヤーの想い入れを込めた、渾身の別注モデル。「ナノ・ユニバース」バイヤー 福島“ティアモ”雄介



歴史のあるシューメーカーながら、細かな要望にもしっかり応えてくれます。
別注させて頂いたモデルは、どれも想い出深いモノになりました。

メンズバイヤーとして活躍する傍ら、強烈なキャラクターでYouTubeのファッション番組「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」のMCを務める福島雄介さん。自身にとって英国靴の原体験であり、2年連続で別注を手がけている「ジョセフ チーニー」に対して、並々ならぬ想い入れがあるようです。今回、ブランドとの出会いや別注モデルの話を踏まえて、革靴遍歴を伺いました。

番組のスタート時に、“運命的”に付いた愛称。

— “ティアモ”というニックネームの由来を教えてください。

気になりますよね(笑)。今の会社に入社して以来、レディースの販売やMDを担当していたのですが、2017年に大きな組織編成があり同年の4月から現在のメンズバイヤーを任せられることになりました。その話と同時に、8月からYouTubeのファッション番組「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」をやって欲しいとオファーを頂いたんです。番組が始まるまでの4ヶ月間は何度も打ち合わせを重ねていたのですが、番組名が長いのでチームの皆が「ティアモ」と省略するようになりました。そして、初めての収録日を迎えたのですが、1本目の撮影時に、アシスタントMCを担当してくださっている広瀬未花さんが、なぜか僕のことを「ティアモさん」と呼んだんです(笑)。おそらくこちらも初めての取り組みでしたので、きちんと説明できていなかったのかもしれませんが、動画の全編を通じて「ティアモさん」と呼び続けていまして。それが由来です(笑)。僕もまさか30歳を超えてから、そんなニックネームが付くとは思っていなかったですが、今や会社の内線表にも“ティアモ”福島と書かれて愛称となりました(笑)。

垣根を壊し、ファッション好きを啓蒙していきたい。

— 「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」に野望はありますか?

弊社としては、ナノ・ユニバースを知らない方や、ドレスアイテムが身近ではないお客様に親しみを持ってもらい、知識を深めるきっかけにして欲しいという想いがあります。番組を頑張れば頑張るだけ、お客様に届けることができますし、意外とお店のスタッフが視聴をしてくれて販売スキルとして活用してくれたりと、良い結果に繋がっているという感覚はあります。ですが、一番の目標は趣味=ファッションと言える方の人口を増やすことですね。今の時代、洋服屋が元気ないとか、洋服を買わない方が増えていると聞くことも多いので、まずはファッション業界を盛り上げて、ファッション好きを増やしていきたいんです。そういう意味では、他のセレクトショップさんのバイヤーさんたちを招いて対談をしたり、ゆくゆくはトーク番組的なこともやりたいと考えています(笑)。たとえば、番組で“バイヤーあるある”を語りあったり、“柄好きバイヤー”的な感じでこだわりの強い方を集めてみたり……、セレクトショップ同士の繋がりやファッションの楽しみ方が見えると、お客様も興味を持ちやすいと思うんですよね。各社のイメージがあるので、実現が難しいかもしれませんが、我々としては垣根なく業界を盛り上げていきたいです!

先輩のススメで購入したのを機に、ローファー愛に目覚める。

— 革靴遍歴を教えてください。

初めて本格的な革靴を購入したのは、今の会社に入社してからです。当時は20歳くらいでしたので、若いとナメられないようにジャケットを着ることを心がけていました。そこで自分のドレススタイルを表現する時に革靴の大事さに気づき、先輩の影響で「オールデン」のペニーローファーを購入しました。当時は英国靴よりもアメリカ靴が流行っていたこともあり、また先輩からも「オールデン」のペニーローファーとタッセルローファーは、仮にこの業界を辞めてしまっても重宝するからと勧められたこともあり。お金を貯めて、両方を手に入れてからは二足をヘビロテしていました。その次に買ったのが、「ジョセフ チーニー」のローファーです。スエードのコンビネーションタイプで、おそらく当時の別注だったと思います。それを機に、トレンドの流れもあって英国靴に傾倒していきました。「エドワードグリーン」や、本日持ってきた「ジョンロブ」や「ニュー&リングウッド」などですね。自宅に25足ほどありますが、メインで履いているのはローファーで、そのほとんどが英国靴です。スーツやシャツはイタリアの製品で遊びの利いたデザインを選ぶことが多いので、足元に安定感のある英国靴を合わせるとスタイリングとしてバランスが良いですよね。

想い入れのあるジョセフ チーニーを、“ティアモ”流に別注。

— とくに想い入れの深い革靴はありますか?

バイヤーになってから一番初めに別注した「ジョセフ チーニー」のタッセルローファーです。先輩に勧められた「オールデン」を機にローファーにハマり、その次に自分で選んだ「ジョセフ チーニー」を別注できるなんてことは、店頭で販売員をしていた時には考えもしませんでした。「良いものを作りたい」という意気込みから、ブローグのデザインにエッジを効かせて欲しいですとか、色のムラ感も含めて艶っぽい質感のレザーにしたいですとかすごく細かい注文をさせていただきましたね。ブラックとバーガンディとスエードコンビタイプの3種類を展開したのですが、店頭に並んだ時は感慨深かったです。今だから言えますが、その時は売ることよりも僕自身の好みの方が強かったのかもしれません(笑)。

そんな経緯もあって、今年の春夏シーズンも別注させていただきました。昨年の一月にファクトリー見学へ行った際に購入したシングルモンクの革靴がとても良かったので、それをベースにアレンジしました。モンクストラップシューズは甲をカバーするデザインですが、甲の比率と履き口部分を調整することで外見はドレッシーなシングルモンク、履き方や合わせ方はローファー感覚で履けるという一足ができました。こちらもレディースのカタログを見せて頂いてデザインの参考にしたり、ベルトを細くしたり金具をゴールドにするなど、かなりのワガママをお願いして実現した想い入れのあるモデルです。

イタリア出張には、ヴィンテージスチール&ハーフラバーが必須。

— 手入れや履き方にこだわりはありますか?

昔は、革靴のソールにラバーやスチールを付けることが邪道だと思っていたんです(笑)。レザーソール自体の感覚や返りを楽しむために、購入したまま履くことが多かったですね。ところが、バイヤーになってイタリア出張へ行った際に、その時履いていた革靴のソールが驚くくらいボコボコに痛んでしまいまして……。イタリアの街は石畳が多いので、トゥにスチールとハーフラバーを貼らないと出張の度に革靴がダメになってしまうんです。それ以来、購入してから一度は慣らすためにレザーソールで履くのですが、その後はトゥスチールとハーフラバーを貼るようになりました。先輩のバイヤーも革靴のトゥにはスチールを取り付けていたので、尋ねてみたらまったく同じ理由でしたね。

セレクトショップの一バイヤーの要望に、真摯に答えてくれる。

— 「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。

歴史のあるシューメーカーながら、ものすごく考え方に柔軟性があり、現代的な考え方を取り入れるのが上手いと思います。ガチガチのクラシック道を進むメーカーさんと時代に合わせて進化していくメーカーさんがありますが、「ジョセフ チーニー」はまさに後者。ブランドイメージを守るために別注は受けないという老舗メーカーさんも多い中、僕のような一バイヤーの要望を聞いてくださり、細やかな部分まで実現してくださることに感謝しています。自分の番組でも別注モデルの紹介をすることがありますが、歴史あるメーカーさんなのに新しいことに挑戦してくださる姿勢がお客様にとっても新鮮に映っているようです。本当に素敵なメーカーさんだと思います。

「ナノ・ユニバース」バイヤー
福島“ティアモ”雄介さん

1986年生まれ。2009年に株式会社ナノ・ユニバースに入社。ウィメンズの販売、MDを経て2017年よりメンズバイヤーに就任。また、同年から同社の公式YouTubeチャンネルにてスタートしたファッション番組「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」(毎週木曜20時配信)の司会進行を担当。“ティアモ”福島の愛称で親しまれている。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLwwDP6vN3Zi3ujqTAn3VhQr_G09659qBK

photo TRYOUT text K-suke Matsuda

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タンナーの代表が一目惚れした、コインローファー。 「栃木レザー」代表取締役 山本 昌邦


足入れをした瞬間にクオリティの高さを感じました。
英国らしい落ち着いたカラーも気に入っています。

国内屈指のタンナーとして知られている「栃木レザー」。1937年に創業し、軍需産業の発展とともに栄え、戦後は植物による「タンニンなめし」にこだわり、その魅力を世界に向けて発信し続けています。今回は、「栃木レザー」の代表である山本昌邦さんに、自身の革靴遍歴と愛用しているジョセフ チーニーの魅力について語っていただきました。

ただ消耗するのは、革に対して失礼だと気づいた20代。

— 山本さんの革靴遍歴を教えてください。

初めての革靴デビューは学生時代に履いたローファー。本革というよりは、合皮のようなものでしたが。その頃は、一足を履き潰しては新しいものに買い換えるというルーティンでしたね。ところが、就職をして商社に入った時に配属が革の原料部門だったんです。革の靴やバッグは子供の頃からなんとなく好きでしたが、その革が牛やさまざまな生物から作られているというイメージは正直ありませんでした。だからこそ、革になる前の皮という状態を見た時にはカルチャーショックを受けましたね。それを機に、革に対する想い入れが強くなり、革靴を履き潰すことが革に対して失礼だと気づきました。ですので、20代前半の頃から、どうせなら良い革靴を買おうということで、ボーナスが出た時には必ず革靴に投資していました。約40年前の所得からすれば革靴はとても高価なものだったので、高級な革靴であれば、一ヶ月分の給料が飛んでしまうということもざらでしたね(笑)。それでも、できる限り良い靴を揃え、7〜8足をローテーションするという履き方に変えました。

本当に良い革靴は、履かなくても持っておきたくなるもの。

— 想い入れのある革靴のエピソードを教えてください。

私は元々東京の商社に勤めていて、縁があって1985年から栃木で今の会社に移りました。その際に、何か記念となるものが欲しいと思い購入したのが、チャーチのコンサル(左)です。約30年前にどこかの百貨店で購入して、愛用していました。ここ2〜3年は履いていないのですが、自宅に飾ってあります。本当に良い靴だと思ったら、履かなくても持っておきたいんですよね。何足かは妻に捨てられてしまったのですが、「この想い出の革靴だけは、自分の勲章だから絶対に捨てないでくれ」と懇願しています(笑)。今日は持って来られなかったのですが、初めてのニューヨーク出張の時に買ったフローシャイムのウイングチップも想い出の一足です。お店で展示してあったので、足入れしたらぴったりで欲しい旨を店員さんに伝えたら、その方が店の奥から新しいものを持ってきたんです。「いや、今足を入れたこの靴がいいんだ」と伝えると、新しいものを欲しがらない日本人は珍しかったようで、「変わっているね」と言ってディスカウントしてくれました(笑)。もう一足は手前味噌ですが、リーガルとコラボして作った栃木レザーのシューズ(右)。最近は服装のカジュアル化傾向が進み、良い意味で弊社のタンニンなめしの革が注目されています。革靴のアッパーに使われることは珍しいので、嬉しさもあって愛用しています。

趣向は、ウイングチップからスリッポンへ。

— 革靴は何足くらいお持ちでしょうか?

履いていないものも合わせて、30足程度でしょうか。自分の体型ががっちりしていることもあり、それに合う革靴という意味でも質実剛健な英国靴が多いです。見た目にも安定感がありますし、グッドイヤーウェルト製法だとソールを替えれば長く愛用することができますからね。形はトラディショナルなウイングチップが好きです。色々な形を履きたいという気持ちもあるのですが、いつもつい同じような形を選んでしまいます(笑)。ですが、最近はお腹が出てきて紐を結ぶのが大変になったとこともあり、ローファーなどのスリッポンタイプの革靴を履く機会が増えました。パンツのデザインもスリムなものが多いので、バランス的にもスリッポンの方が合うんですよ。

本国にあるファクトリーショップで一目惚れ。

— 「ハドソン」との出会いを教えてください。

昨年の1月にジョセフ チーニーのファクトリーへ行ったのですが、待ち合わせの時刻より早めに着いてしまいました。すぐ隣にあったファクトリーショップに入って時間を潰そうと思っていたのですが、中に入るやいなや、このローファーを見つけ一目惚れしました。足を入れてみても自分の足にフィットしたので、気に入ってすぐに購入しました。とくに気に入っているのは色です。イギリスの製品は、他のヨーロッパの国々と比べて伝統の重みや重厚感を感じさせてくれるのですが、とくに色の出し方が落ち着いていて好きですね。気候や風土によるところが大きいのかもしれませんが、良い意味でくすんだ色出しが上手いですよね。それに、革質や作りもしっかりしていて足入れした瞬間から「これは長持ちするな」と感じました。カジュアルスタイルにもスーツスタイルにも合わせられるので、出張の時にも大活躍です。手入れは頻繁にはできないので、時間のある休みの日の朝に磨くように心がけています。

伝統を守り続けるために、日々改革を続けるメーカー。

— ジョセフ チーニーの印象を教えてください。

あらゆるものに共通していますが、天然素材を扱っている仕事は、絶対的な経験値がクオリティに反映されるというのが私の持論です。革にしても、1600年代頃から続いているヨーロッパのタンナーさんがなめした革は圧倒的に質が高いんですよね。長い歴史の中で積み重ねて来た技術力は、たとえそこで働く人が変わっても継承されていきます。よほど大きなデザイン変更や、経営マインドをガラッと変えたり、受け継いで来た製法を変えるとなれば話は変わるかもしれないですが。そういう意味では、英国に130年以上根付いているジョセフ チーニーの革靴は、質が高く味わいが明らかに違いますよね。これは、ある有名な寿司職人さんの受け売りですが、伝統とは改革があってこそ維持されていくものだと思います。寿司職人の世界で言うなら、シャリを握った時に毎回米粒の数が同じというレベルになれば本当の職人。それは、そこに到達するまでの創意工夫や変革を求めて積み重ねた努力の成果とも言えるわけです。ジョセフ チーニーは、ブランド自体に背景となる歴史がありながら常に改革を続けています。手前味噌ではありますが、自社にも通ずるそういった姿勢に非常に感銘を受けました。

「栃木レザー」代表取締役
山本 昌邦さん

1955年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、東京の商社で革の原料部門を担当する。1985年に栃木へ移り、「栃木皮革(現在の栃木レザー)」の代表取締役に就任。国内屈指のタンナーとして、植物を使用したタンニンなめしにこだわり、国内外に良質なレザーを供給し続けている。

photo TRYOUT text K-suke Matsuda

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フォトグラファーの足元を守る、ミリタリーシューズ。 長山 一樹


傷や汚れを気にせずに、何処へでも履いていける革靴。
ロケ撮影の時にも大活躍しています。

ファッションフォトグラファーとしてさまざまな媒体で活躍する長山一樹さんは、その職業には珍しくどんな撮影にもスーツスタイルで臨んでいます。当然、スーツに合う革靴をたくさん所有しており、撮影場所の環境によって適した一足をセレクトしているそうです。そんな長山氏が「ジョセフ チーニー」のラインナップから選んだのは、ブランドを代表するミリタリーシューズ「CAIRNGORM Ⅱ R」でした。今回は、氏の革靴遍歴やお仕事の話とともに、その魅力を伺いました。

仕事以外の活動に、楽しみの幅を広げたかった。

— 昨年、自身初となる個展を開催されていましたが、仕事とやりたいことのバランスはどのようにお考えですか?

フリーランスになってから約10年が経ちますが、毎日違う仕事をやっているはずなのに、求められる答えの出し方に差がないということに気づいてしまったんです。忙しく仕事をできていることには感謝しているのですが、脳みその使い方が偏っているのは良くないと思い、何か仕事以外のことをやりたいと思い立ったんです。それまではテーマが自然と決まらないこともあって二の足を踏んでいましたが、次第に自分の好きなものが構築されてきたこともあって、「こういうことをしたら面白いかも」とイメージが湧いてきました。それが自分の今までやってきたことと辻褄が合ったので、満を辞して、ニューヨークの街角を切り取った「ON THE CORNER NYC」という個展を開催しました。もともとファッションというカルチャーが好きなので、どんな仕事も楽しいんですが、それ以外のところに楽しみの幅を広げてみたかったんですよね。今後は、「ON THE CORNER」というシリーズで色々な国や街を取り上げていきたいと思っています。まだ100%やるとは決めていないのですが、今はインド版をやってみたいと密かに思っています。1950年代にル・コルビジェが都市開発を手がけた「チャンディーガル」という都市へ行って、半世紀がすぎた建造物がどうなっているのか切り取ってみたいですね。

やりたいことがあったら、まずはカタチにしてみるのが大切。

— 写真家さんと言えばアクティブな格好の方が多い印象ですが、長山さんが確固たるスーツスタイルを貫いているのはなぜですか?

一年半くらい前に、やりたいことを紙に書き出してみたんですよ。たとえば、「地球を一周したい」とか、「何々が欲しい」とか。その中に、「スーツを一着仕立てたい」というのがあったので、なんとなく欲しいスーツ像を思い浮かべながらあるお店へ行ってパターンオーダーで仕立てたんです。その出来栄えがかなり良かったというのもあって、スーツを着るのが楽しくなってしまったんですよね(笑)。で、どうせなら毎日着ようと思って以来、このスタイルを貫いています。僕の場合、愛用しているカメラの性質的にも撮影の時にあまり動き回らなくて済むんですよ。時には、座って撮影することもあるくらいです。もちろん、アングルとして欲しい場合は這いつくばって撮ることもありますが、そういう時はアシスタントの子が気を使って床に何かを敷いてくれます。ロケ撮影の時にも、さすがに靴だけは変えていますが基本的にはスーツを着ています。注意しないとダブルに仕上げたパンツの裾に木屑や砂が入っている時があって、帰ってから嫁に怒られますが(笑)。このスタイルにして以来、嬉しいことにドレスクロージングの仕事が増えてきたんです。やはり、やりたいことや好きなことを本気でやっていると周りも呼応してくれるものですよね。

過去から未来を含めて、価値のあるモノを選びたい。

— モノを選ぶ際に大切にしていることはありますか?

カメラがまさにそうなのですが、手間暇をかけて作られていたり、歴史があって長く愛せる本質的なモノが好きですね。たとえば、今日持ってきた二台のカメラはスウェーデンの「ハッセルブラッド」というメーカーのもので、こっち(右)はスタジオマンの時にローンを組んで手に入れて以来15年以上愛用しているものです。これはもともとフィルムカメラなんですが、パーツを付けてデジタルにしているんです。なぜこういうことが成り立つのかと言うと、ブランド自体の歴史とアイデンティティがあって、時代の違うパーツ同士に整合性があるからなんですよね。そういう意味では、過去から未来を含めて価値がありますし、普遍的でありながら進化しているモノづくりというのは素晴らしいですよね。もう一方は、展示のためにニューヨークへ行く際に新調した「H6D」という最新モデルです。このカメラもまだ「H3D」だった頃から気に入っていて、シリーズとしては10年以上愛用しています。

アメリカ靴から始まり、英国靴にたどり着いた。

— 革靴遍歴を教えてください。

革靴への憧れはずっとあって、まだスーツスタイルに目覚める前に初めて「オールデン」のチャッカブーツを買いました。その後、モディファイドラストのプレーントゥやバリーラストのウイングチップも買ったのですが、当時はスーツを着ていなかったのであまり履く機会はなかったですね。今のスーツスタイルになって革靴をよく履くようになってからは、ペニーローファーやタッセルローファーも購入しました。さすがにレザーソールばかりだとロケ撮影の時に履く靴がないので「パラブーツ」も手に入れて愛用していましたが、もっとドレッシーな革靴が欲しいと思うようになり、英国靴に惹かれるようになりましたね。英国靴は、アッパーが上品でもソールがラバーであったり、カジュアルさの中にもドレッシーな要素があるようなシューズが多く、バランスの良いところが魅力だと思ってます。今は20足くらい革靴を持っていますが、基本的にはアメリカ靴と英国靴を履き分けているような感じです。コレクションという考えはまったくないので、どの靴もちゃんと履いて長くつき合っていきたいと思っています。

オフロードに屈せず、ガシガシ履けるタフなシューズ。

— 本日履いている「CAIRNGORM Ⅱ R」はどのような部分に惹かれましたか?

仕事柄、山や海へ行くことも多いので、ロケ撮影時の靴選びは重要なんです。仮に大自然の中へ出かける場合、デリケートな革靴を履いていくわけにはいかないですからね。そういう時に履いていくために、「CAIRNGORM Ⅱ R」を選びました。購入してから早速、樹海での撮影に履いて行ったのですが、ソールのグリップ力も抜群ですし、アッパーがタフなシボ革なので汚れや傷を気にせずガシガシ履くことができました。ドレスシューズだと、大切に履きたいがためにあまり履かなくなってしまったり、手入れにも神経を使わなければいけないんですが、良い意味であまり気にせずに履ける「CAIRNGORM Ⅱ R」はロケ撮影には最高の一足ですね。僕はスーツに合わせていますが、軍パンやチノパンツとの相性も良いですし、ソールが少し汚れているくらいでも逆にかっこいいかもしれないですよね。もともと、本当に気になるまで手入れをしない方なので、何もせずともかっこよさをキープしてくれるこの靴はかなり重宝しています。

ケンゴン

歴史と技術がありながら、新しいことにも挑戦している。

— 「ジョセフ チーニー」にはどのような印象をお持ちですか?

英国のシューメーカーにはライバルが多いですが、他と比べてモダンな要素があるところが好きです。歴史が長い分、変わらずに安定しているシューメーカーさんも良いと思いますが、「ジョセフ チーニー」は歴史と技術というベースがありながらも、そこだけに固執せずに今の時代の空気を取り入れながらアップデートしているという印象があります。僕の愛用しているカメラと同じように、普遍的でありながら進化しているモノづくりをしているところは素晴らしいですよね。それに、革靴を普段履かない人にとって正統派の革靴は価格的にも敷居が高いというイメージがありますが、「ジョセフ チーニー」は本格的なモノづくりにも関わらず、挑戦しやすい価格であるのも魅力だと思います。僕の場合、初めはミリタリーシューズから入ったわけですが、個人的に次は定番のストレートチップやウイングチップのモデルを履いてみたいと思っています。

フォトグラファー
長山 一樹さん

1982年生まれ。神奈川県出身。2001年に株式会社麻布スタジオに入社。その後、2004年に守本勝栄氏に師事する。2007年に独立し「S-14」に所属して以来、さまざまなファッション誌や広告などで活躍する。2018年には、初の個展「ON THE CORNER NYC」を開催。また同年に、自身が長年愛用しているカメラのメーカー「ハッセルブラッド」の、ジャパン・ローカルアンバサダーに就任する。
https://www.ngympicture.com

photo TRYOUT text K-suke Matsuda

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