傷や汚れを気にせずに、何処へでも履いていける革靴。
ロケ撮影の時にも大活躍しています。
ファッションフォトグラファーとしてさまざまな媒体で活躍する長山一樹さんは、その職業には珍しくどんな撮影にもスーツスタイルで臨んでいます。当然、スーツに合う革靴をたくさん所有しており、撮影場所の環境によって適した一足をセレクトしているそうです。そんな長山氏が「ジョセフ チーニー」のラインナップから選んだのは、ブランドを代表するミリタリーシューズ「CAIRNGORM Ⅱ R」でした。今回は、氏の革靴遍歴やお仕事の話とともに、その魅力を伺いました。
仕事以外の活動に、楽しみの幅を広げたかった。
— 昨年、自身初となる個展を開催されていましたが、仕事とやりたいことのバランスはどのようにお考えですか?
フリーランスになってから約10年が経ちますが、毎日違う仕事をやっているはずなのに、求められる答えの出し方に差がないということに気づいてしまったんです。忙しく仕事をできていることには感謝しているのですが、脳みその使い方が偏っているのは良くないと思い、何か仕事以外のことをやりたいと思い立ったんです。それまではテーマが自然と決まらないこともあって二の足を踏んでいましたが、次第に自分の好きなものが構築されてきたこともあって、「こういうことをしたら面白いかも」とイメージが湧いてきました。それが自分の今までやってきたことと辻褄が合ったので、満を辞して、ニューヨークの街角を切り取った「ON THE CORNER NYC」という個展を開催しました。もともとファッションというカルチャーが好きなので、どんな仕事も楽しいんですが、それ以外のところに楽しみの幅を広げてみたかったんですよね。今後は、「ON THE CORNER」というシリーズで色々な国や街を取り上げていきたいと思っています。まだ100%やるとは決めていないのですが、今はインド版をやってみたいと密かに思っています。1950年代にル・コルビジェが都市開発を手がけた「チャンディーガル」という都市へ行って、半世紀がすぎた建造物がどうなっているのか切り取ってみたいですね。
やりたいことがあったら、まずはカタチにしてみるのが大切。
— 写真家さんと言えばアクティブな格好の方が多い印象ですが、長山さんが確固たるスーツスタイルを貫いているのはなぜですか?
一年半くらい前に、やりたいことを紙に書き出してみたんですよ。たとえば、「地球を一周したい」とか、「何々が欲しい」とか。その中に、「スーツを一着仕立てたい」というのがあったので、なんとなく欲しいスーツ像を思い浮かべながらあるお店へ行ってパターンオーダーで仕立てたんです。その出来栄えがかなり良かったというのもあって、スーツを着るのが楽しくなってしまったんですよね(笑)。で、どうせなら毎日着ようと思って以来、このスタイルを貫いています。僕の場合、愛用しているカメラの性質的にも撮影の時にあまり動き回らなくて済むんですよ。時には、座って撮影することもあるくらいです。もちろん、アングルとして欲しい場合は這いつくばって撮ることもありますが、そういう時はアシスタントの子が気を使って床に何かを敷いてくれます。ロケ撮影の時にも、さすがに靴だけは変えていますが基本的にはスーツを着ています。注意しないとダブルに仕上げたパンツの裾に木屑や砂が入っている時があって、帰ってから嫁に怒られますが(笑)。このスタイルにして以来、嬉しいことにドレスクロージングの仕事が増えてきたんです。やはり、やりたいことや好きなことを本気でやっていると周りも呼応してくれるものですよね。
過去から未来を含めて、価値のあるモノを選びたい。
— モノを選ぶ際に大切にしていることはありますか?
カメラがまさにそうなのですが、手間暇をかけて作られていたり、歴史があって長く愛せる本質的なモノが好きですね。たとえば、今日持ってきた二台のカメラはスウェーデンの「ハッセルブラッド」というメーカーのもので、こっち(右)はスタジオマンの時にローンを組んで手に入れて以来15年以上愛用しているものです。これはもともとフィルムカメラなんですが、パーツを付けてデジタルにしているんです。なぜこういうことが成り立つのかと言うと、ブランド自体の歴史とアイデンティティがあって、時代の違うパーツ同士に整合性があるからなんですよね。そういう意味では、過去から未来を含めて価値がありますし、普遍的でありながら進化しているモノづくりというのは素晴らしいですよね。もう一方は、展示のためにニューヨークへ行く際に新調した「H6D」という最新モデルです。このカメラもまだ「H3D」だった頃から気に入っていて、シリーズとしては10年以上愛用しています。
アメリカ靴から始まり、英国靴にたどり着いた。
— 革靴遍歴を教えてください。
革靴への憧れはずっとあって、まだスーツスタイルに目覚める前に初めて「オールデン」のチャッカブーツを買いました。その後、モディファイドラストのプレーントゥやバリーラストのウイングチップも買ったのですが、当時はスーツを着ていなかったのであまり履く機会はなかったですね。今のスーツスタイルになって革靴をよく履くようになってからは、ペニーローファーやタッセルローファーも購入しました。さすがにレザーソールばかりだとロケ撮影の時に履く靴がないので「パラブーツ」も手に入れて愛用していましたが、もっとドレッシーな革靴が欲しいと思うようになり、英国靴に惹かれるようになりましたね。英国靴は、アッパーが上品でもソールがラバーであったり、カジュアルさの中にもドレッシーな要素があるようなシューズが多く、バランスの良いところが魅力だと思ってます。今は20足くらい革靴を持っていますが、基本的にはアメリカ靴と英国靴を履き分けているような感じです。コレクションという考えはまったくないので、どの靴もちゃんと履いて長くつき合っていきたいと思っています。
オフロードに屈せず、ガシガシ履けるタフなシューズ。
— 本日履いている「CAIRNGORM Ⅱ R」はどのような部分に惹かれましたか?
仕事柄、山や海へ行くことも多いので、ロケ撮影時の靴選びは重要なんです。仮に大自然の中へ出かける場合、デリケートな革靴を履いていくわけにはいかないですからね。そういう時に履いていくために、「CAIRNGORM Ⅱ R」を選びました。購入してから早速、樹海での撮影に履いて行ったのですが、ソールのグリップ力も抜群ですし、アッパーがタフなシボ革なので汚れや傷を気にせずガシガシ履くことができました。ドレスシューズだと、大切に履きたいがためにあまり履かなくなってしまったり、手入れにも神経を使わなければいけないんですが、良い意味であまり気にせずに履ける「CAIRNGORM Ⅱ R」はロケ撮影には最高の一足ですね。僕はスーツに合わせていますが、軍パンやチノパンツとの相性も良いですし、ソールが少し汚れているくらいでも逆にかっこいいかもしれないですよね。もともと、本当に気になるまで手入れをしない方なので、何もせずともかっこよさをキープしてくれるこの靴はかなり重宝しています。
歴史と技術がありながら、新しいことにも挑戦している。
— 「ジョセフ チーニー」にはどのような印象をお持ちですか?
英国のシューメーカーにはライバルが多いですが、他と比べてモダンな要素があるところが好きです。歴史が長い分、変わらずに安定しているシューメーカーさんも良いと思いますが、「ジョセフ チーニー」は歴史と技術というベースがありながらも、そこだけに固執せずに今の時代の空気を取り入れながらアップデートしているという印象があります。僕の愛用しているカメラと同じように、普遍的でありながら進化しているモノづくりをしているところは素晴らしいですよね。それに、革靴を普段履かない人にとって正統派の革靴は価格的にも敷居が高いというイメージがありますが、「ジョセフ チーニー」は本格的なモノづくりにも関わらず、挑戦しやすい価格であるのも魅力だと思います。僕の場合、初めはミリタリーシューズから入ったわけですが、個人的に次は定番のストレートチップやウイングチップのモデルを履いてみたいと思っています。
長山 一樹さん
1982年生まれ。神奈川県出身。2001年に株式会社麻布スタジオに入社。その後、2004年に守本勝栄氏に師事する。2007年に独立し「S-14」に所属して以来、さまざまなファッション誌や広告などで活躍する。2018年には、初の個展「ON THE CORNER NYC」を開催。また同年に、自身が長年愛用しているカメラのメーカー「ハッセルブラッド」の、ジャパン・ローカルアンバサダーに就任する。
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