ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル

1886年から続く長い伝統の中で、ドレスからカジュアルまで、じつに様々なモデルを展開してきたジョセフ チーニーのコレクション。今回は、ビジネスシーンのカジュアル化に伴い、オンでも使えて、普段着の一日にも大活躍する汎用性の高いモデルを特集。とくに、ラスト(木型)の違いにフォーカスし、それぞれが持つ千差万別の魅力をご紹介します。

LAST 4436

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM Ⅱ R|ケンゴン Ⅱ R 
英国軍採用のラストを装備する、ミリタリーシューズの雄。

CAIRNGORM Ⅱ R|ケンゴン Ⅱ R
英国軍採用のラストを装備する、ミリタリーシューズの雄。

「ラスト4436」は英国軍靴に使用されていた背景を持ち、イギリスでは“ミリタリーラスト”と呼ばれています。また、日本で展開されているモデルの木型の中でもっとも歴史が古く、75年以上前から存在すると言われています。この木型と切っても切り離せないのが、ブランドが誇る王道モデル「ケンゴン Ⅱ R」。外羽根式のダブルのツインステッチというデザインはクラシックなラストと相性が良く、ノーズが短く丸みを帯びた愛嬌のあるフォルムに、ミリタリーシューズらしい風格を与えてくれます。重厚な見た目ながら品の良さを備えており、カジュアルスタイルを格上げしてくれるだけではなく、昨今ではスーツスタイルに取り入れる方も増えています。機能面も申し分なく、アッパーの縫い付けに伝統的な製法“ヴェルトショーン仕様”を採用。アッパーとウェルトの隙間から、雨水が染み込み、小石や土ほこりなどが侵入するのを軽減する役割があります。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM 2R|ケンゴン Ⅱ R 
アッパーには世界有数のタンナーである「ワインハイマー社」のグレンインカーフを使用。

現在アーモンド、ブラック、バーガンディー(左から順)の三色を展開。茶系のカラーには、トゥの先端に風合いを出すバーニッシュ加工が施されています。アッパーには、世界有数のタンナーである「ワインハイマー社」のグレンインカーフを使用。雨や汚れに強いタフなシボ革は、機能的なだけではなく、エイジングにより個性的な経年変化を楽しむことができます。

LAST175

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM H|ケンゴンH 
ドレスとカジュアルをハイブリッドした、現代的な一足

CAIRNGORM H|ケンゴンH
ドレスとカジュアルをハイブリッドした、現代的な一足。

「ラスト175」は、ジョセフ チーニーの中でもかなり古い歴史を持つ木型。ドレスシューズの定番として使用されている「ラスト125」よりやや幅広で、適度なボリュームと丸みを持たせることで、英国らしいラウンドトゥを美しく表現しています。このドレスとカジュアルのバランスの良いラストを、王道モデル「ケンゴン」に採用したのが、2020年に誕生した「ケンゴンH」。コバには、ほこりや雨水が侵入を軽減する「ストームウェルト仕様」を採用するなど、ミリタリーシューズらしいタフさを踏襲。一方で、ドレッシーなスムースレザーのアッパーや、シューレースを通す穴の装飾を見せない“内ハトメ仕様”など、ドレスの要素をうまくハイブリッドすることで、都会的な洗練された顔つきの一足に仕上げました。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM H|ケンゴンH アッパーは1905年に創業したアメリカの老舗タンナー「ホーウィン社」のクロムエクセルレザーときめ細やかな質感のスエードを使用

ブラウン(中)とブラック(右)のアッパーは、1905年に創業したアメリカの老舗タンナー「ホーウィン社」のクロムエクセルレザー。牛脂や蜜蝋など、4種類以上の油脂をブレンドした特性オイルを使用し、タンニンなめしとクロムなめしを組み合わせる「コンビなめし」という手法を用いて、しっとりとした油分を浸透させた革です。ブラウン(左)には、きめ細やかな質感のスエードを使用。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  FORESTER Ⅱ R|フォレスター Ⅱ R 
柔和な表情が愛らしい、丸みのあるUチップモデル

FORESTER Ⅱ R|フォレスター Ⅱ R
柔和な表情が愛らしい、丸みのあるUチップモデル。

こちらも「ラスト175」を採用したモデル。カントリーシューズをルーツに持つ、丸みを帯びた外羽根式Uチップが特長の「フォレスター Ⅱ R」。ローファーなどに使用されるモカシン縫いでスエードレザーのヴァンプとサイドを縫合しており、柔らかく愛らしい表情に。その一方で、ソールにはスマートな見た目ながら、グリップ力があり、雨にも強いダイナイトソールを装備。カジュアルな印象の中に、適度な上品さを感じる、バランスの良いモデルです。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル   FORESTER Ⅱ R|フォレスター Ⅱ R きめの細かい上質なスエード素材

カラー展開はブラウンのみ。きめの細かい上質なスエードはケアが簡単な上に、雨の日でも気軽に履ける汎用性の高さが魅力です。

LAST12508

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  AVON C|エイボンC 
英国カントリーを体現する、世界的ベストセラー。

AVON C|エイボンC
英国カントリーを体現する、世界的ベストセラー。

「ラスト12508」は、カジュアルモデルを代表する木型として2009年に誕生した木型です。トゥシェイプにヒールカップなど、全体的にボリュームを持たせながら、野暮ったくなり過ぎないように計算されたバランスの良いフォルムが特長。このラストを採用した代表モデルが「エイボンC」。アッパーに大きく開いたブローグや、厚みのあるソール 、グッドイヤーウェルト製法など、まさにブリティッシュカントリーを体現する一足です。悪路を歩いた際に、アッパーとソールの隙間から水気が入るのを塞ぐための「スプリットウェルト」、グリップ力のあるコマンドソールなど、アウトドアに対応するトラディショナルなディテールも満載。ヨーロッパ諸国ではかねてより高い評価を獲得しており、近年では日本でも注目度が高まっています。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  AVON C|エイボンC アッパーには傷や汚れ、水濡れにも耐性のあるグレインカーフレザーを採用

ブラック(黒)、アーモンド(右)の二色を展開。アッパーには、傷や汚れ、水濡れにも耐性のあるグレインカーフレザーを採用。大粒のシボ、トゥ部分に施されたメダリオン、大ぶりなパーフォレーション(飾り穴)が、より一層カントリーテイストを引き立てます。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  同じカジュアルモデルでもラストによって履いた時の印象は大きく変わります
(左から順:175、12508、4436)

今回ご紹介した3種の木型の中で、「ラスト175(左)」はドレスとカジュアルを良い塩梅で融合させた万能な木型。2009年に誕生した「ラスト12508(中)」は、適度なボリューム感を持たせた、よりカジュアルなスタイルと相性の良い木型。75年以上の歴史を誇る「ラスト4436(右)」は、それよりもさらに丸みを強調したクラシックで愛嬌のある木型です。ウエストのシェイプ、ボリューム、トゥの丸みや長さなど、比較することでそれぞれに個性があることがわかります。

ビジネススタイルの変化にともない、改めてカジュアル靴の汎用性が注目されている昨今ですが、同じカジュアルモデルでもラストによって履いた時の印象は大きく変わります。足型に合うお気に入りの木型で揃えたり、スタイルや気分に合わせて色々と試してみるなど、向き合い方はそれぞれ。まずは革靴選びの指針のひとつとして、「ラスト」という視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

photo Tomoki Matsui text K-suke Matsuda(RECKLESS)

RELATION