知っておきたい、本格靴の基礎知識 #1.ミリタリーシューズ編

ケンゴンⅡ R

革靴の購入を考えているけれど、何を選んでいいか迷う! スーツに合わせるならどんな靴? カジュアル使いにおすすめなのは?……そんな疑問を抱える方のために、全3回にわたってお届けする連載企画。革靴の中でも代表的な3つのタイプを取り上げ、詳しくご紹介します。初回のテーマは「ミリタリーシューズ」。デニムやコットンパンツと相性抜群な、休日靴の定番です。軍由来ならではのユニークなディテールも見どころ。その魅力を徹底解説します。

ケンゴンⅡ R

そもそも、ミリタリーシューズとは?

その名のとおり、軍靴を由来とするミリタリーシューズ。現在ファッションとして浸透しているものの多くは、第一次・第二次世界大戦時代に生まれたものがルーツとなっています。デザイン上の大きな特徴となるのは、丸みを帯びたトウと全体的にボリュームのあるがっしりしたシェイプ。これはもともと、戦線に赴く兵士たちへ安定した品質の物資を大量に供給することが求められた戦時下において、さまざまな足の形にフィットする合理的な形状として考案されたものでした。
しかし、後年になると素朴でありながら独特な味わいがあり、男らしさを感じさせるデザインがファッションアイテムとしても注目されるようになります。過酷な戦地を踏破するために採用された頑丈な作り、そしてミリタリーシューズならではのディテールも機能美として愛好されてきました。革靴でありながらカジュアルスタイルにベストマッチで、かつ大人っぽく見せてくれるのも人気のポイント。なかでもジョセフ チーニーのミリタリーシューズは、英国ならではの格式を感じさせるのが特徴です。同じ英国軍由来のグルカショーツやタクティカルセーターと合わせれば、一格上の夏スタイルを築けます。

軍への供給実績は高品質の証

名門と称される靴ブランドの中には、かつて軍へミリタリーシューズを供給していたところも少なくありません。軍が求める基準を満たす靴作りができるということは、高い技術と品質の証明でもあったのです。実はジョセフ チーニーも、英国軍への供給実績をもつブランド。当時、軍に採用されたラスト(木型)とデザインを踏襲して現在ラインナップするのが、「ケンゴンⅡ R」と名付けられた写真のモデルです。タフな作りもさることながら、ミリタリーシューズならではの独特なディテールも注目のポイント。以下、具体的に見ていきましょう。

ケンゴンⅡ R

今や希少な「ヴェルトショーン製法」

「ケンゴンⅡ R」の大きな特徴となっているのが「ヴェルトショーン製法」と呼ばれる仕立て。本格靴の主流であるグッドイヤー製法と似ていますが、こちらはソールの上を覆うようにアッパーの革を縫い付けているのがポイントです。グッドイヤーの場合、アッパーがウェルト(アッパーとソールを繋ぐための細い帯状の革)の内側に潜り込む形になるため、この隙間から雨水や細かいホコリが靴の中に入ってきてしまいますが、隙間のないヴェルトショーンではこれを防ぐことができるというわけです。悪路の多いミリタリーシーンで重宝されてきた作りですが、非常に手間がかかるため、今では歴史ある英国靴メーカーでもヴェルトショーン製法を行っているところはごくわずか。機能性に加えて、デザインのアクセントとしても効いています。

ベローズタン

ホコリや雨水を防ぐ「ベローズタン」

一見わかりにくいのですが、シューレースを外すとさらなるミリタリーディテールが。足の甲を覆う “ベロ”が羽根の部分と繋がっていることがわかります。これは「ベローズタン」と呼ばれる仕様で、トレッキングシューズなど登山靴とも共通する作りです。ベロと羽根の間からホコリや雨が入ってくるのを防ぐためのもので、上のヴェルトショーン製法と合わせて悪路対策を目的として採用されています。外からは見えないディテールだけに、これを省略しているミリタリー風シューズも多い中、「ケンゴン Ⅱ R」では革の裁断や縫製にひと手間増えるのもいとわず“本物”の仕様にこだわっています。

コマンドソール

悪路をものともしない「コマンドソール」

さまざまなバリエーションが存在するラバーソールの中でも、極めて高いグリップ力と安定性を誇るのがコマンドソール。険しい山道やぬかるみ、砂利道など、コンディションの悪い地面用に開発されたものです。タウンユースでも快適さを発揮し、雨上がりやゴツゴツ
した石畳などを歩いても疲れにくいのが特徴。また、サイドから見てもわかるほどくっきりとした凹凸が刻まれ、がっちりと厚みがあるため、タフで男らしい印象を演出してくれるのも魅力です。武骨なミリタリーシューズのデザインと相性抜群。「ケンゴン Ⅱ R」では英国イッツシェイド社製のコマンドソールを採用しています。

ケンゴンⅡ R

ジョセフ チーニーのおすすめミリタリーシューズは?
ローカットでオールシーズン履ける「ケンゴン Ⅱ R」

75年以上前から存在したと言われており、英国軍にも提供していた木型「LAST4436」を採用するミリタリーシューズ。ノーズが短めでボリュームのあるラウンドトウが独特な愛嬌を備えています。ウィズ(横幅)が広めのため締め付け感がなく、リラックスして履けるのも魅力。アッパーのデザインもかつての英国軍採用モデルを踏襲。トウに入った2本のツインステッチと、V字に革を切り替えたサイドが印象的です。ブーツが多いミリタリーシューズですが、こちらは春夏にも活躍するローカット。雨の日でも滑りにくく、作りも極めて丈夫なので、天候を問わず長く愛用できる一足です。

photo Masahiro Sano text Hiromitsu Kosone