歴史のあるシューメーカーながら、細かな要望にもしっかり応えてくれます。
別注させて頂いたモデルは、どれも想い出深いモノになりました。
メンズバイヤーとして活躍する傍ら、強烈なキャラクターでYouTubeのファッション番組「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」のMCを務める福島雄介さん。自身にとって英国靴の原体験であり、2年連続で別注を手がけている「ジョセフ チーニー」に対して、並々ならぬ想い入れがあるようです。今回、ブランドとの出会いや別注モデルの話を踏まえて、革靴遍歴を伺いました。
番組のスタート時に、“運命的”に付いた愛称。
— “ティアモ”というニックネームの由来を教えてください。
気になりますよね(笑)。今の会社に入社して以来、レディースの販売やMDを担当していたのですが、2017年に大きな組織編成があり同年の4月から現在のメンズバイヤーを任せられることになりました。その話と同時に、8月からYouTubeのファッション番組「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」をやって欲しいとオファーを頂いたんです。番組が始まるまでの4ヶ月間は何度も打ち合わせを重ねていたのですが、番組名が長いのでチームの皆が「ティアモ」と省略するようになりました。そして、初めての収録日を迎えたのですが、1本目の撮影時に、アシスタントMCを担当してくださっている広瀬未花さんが、なぜか僕のことを「ティアモさん」と呼んだんです(笑)。おそらくこちらも初めての取り組みでしたので、きちんと説明できていなかったのかもしれませんが、動画の全編を通じて「ティアモさん」と呼び続けていまして。それが由来です(笑)。僕もまさか30歳を超えてから、そんなニックネームが付くとは思っていなかったですが、今や会社の内線表にも“ティアモ”福島と書かれて愛称となりました(笑)。
垣根を壊し、ファッション好きを啓蒙していきたい。
— 「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」に野望はありますか?
弊社としては、ナノ・ユニバースを知らない方や、ドレスアイテムが身近ではないお客様に親しみを持ってもらい、知識を深めるきっかけにして欲しいという想いがあります。番組を頑張れば頑張るだけ、お客様に届けることができますし、意外とお店のスタッフが視聴をしてくれて販売スキルとして活用してくれたりと、良い結果に繋がっているという感覚はあります。ですが、一番の目標は趣味=ファッションと言える方の人口を増やすことですね。今の時代、洋服屋が元気ないとか、洋服を買わない方が増えていると聞くことも多いので、まずはファッション業界を盛り上げて、ファッション好きを増やしていきたいんです。そういう意味では、他のセレクトショップさんのバイヤーさんたちを招いて対談をしたり、ゆくゆくはトーク番組的なこともやりたいと考えています(笑)。たとえば、番組で“バイヤーあるある”を語りあったり、“柄好きバイヤー”的な感じでこだわりの強い方を集めてみたり……、セレクトショップ同士の繋がりやファッションの楽しみ方が見えると、お客様も興味を持ちやすいと思うんですよね。各社のイメージがあるので、実現が難しいかもしれませんが、我々としては垣根なく業界を盛り上げていきたいです!
先輩のススメで購入したのを機に、ローファー愛に目覚める。
— 革靴遍歴を教えてください。
初めて本格的な革靴を購入したのは、今の会社に入社してからです。当時は20歳くらいでしたので、若いとナメられないようにジャケットを着ることを心がけていました。そこで自分のドレススタイルを表現する時に革靴の大事さに気づき、先輩の影響で「オールデン」のペニーローファーを購入しました。当時は英国靴よりもアメリカ靴が流行っていたこともあり、また先輩からも「オールデン」のペニーローファーとタッセルローファーは、仮にこの業界を辞めてしまっても重宝するからと勧められたこともあり。お金を貯めて、両方を手に入れてからは二足をヘビロテしていました。その次に買ったのが、「ジョセフ チーニー」のローファーです。スエードのコンビネーションタイプで、おそらく当時の別注だったと思います。それを機に、トレンドの流れもあって英国靴に傾倒していきました。「エドワードグリーン」や、本日持ってきた「ジョンロブ」や「ニュー&リングウッド」などですね。自宅に25足ほどありますが、メインで履いているのはローファーで、そのほとんどが英国靴です。スーツやシャツはイタリアの製品で遊びの利いたデザインを選ぶことが多いので、足元に安定感のある英国靴を合わせるとスタイリングとしてバランスが良いですよね。
想い入れのあるジョセフ チーニーを、“ティアモ”流に別注。
— とくに想い入れの深い革靴はありますか?
バイヤーになってから一番初めに別注した「ジョセフ チーニー」のタッセルローファーです。先輩に勧められた「オールデン」を機にローファーにハマり、その次に自分で選んだ「ジョセフ チーニー」を別注できるなんてことは、店頭で販売員をしていた時には考えもしませんでした。「良いものを作りたい」という意気込みから、ブローグのデザインにエッジを効かせて欲しいですとか、色のムラ感も含めて艶っぽい質感のレザーにしたいですとかすごく細かい注文をさせていただきましたね。ブラックとバーガンディとスエードコンビタイプの3種類を展開したのですが、店頭に並んだ時は感慨深かったです。今だから言えますが、その時は売ることよりも僕自身の好みの方が強かったのかもしれません(笑)。
そんな経緯もあって、今年の春夏シーズンも別注させていただきました。昨年の一月にファクトリー見学へ行った際に購入したシングルモンクの革靴がとても良かったので、それをベースにアレンジしました。モンクストラップシューズは甲をカバーするデザインですが、甲の比率と履き口部分を調整することで外見はドレッシーなシングルモンク、履き方や合わせ方はローファー感覚で履けるという一足ができました。こちらもレディースのカタログを見せて頂いてデザインの参考にしたり、ベルトを細くしたり金具をゴールドにするなど、かなりのワガママをお願いして実現した想い入れのあるモデルです。
イタリア出張には、ヴィンテージスチール&ハーフラバーが必須。
— 手入れや履き方にこだわりはありますか?
昔は、革靴のソールにラバーやスチールを付けることが邪道だと思っていたんです(笑)。レザーソール自体の感覚や返りを楽しむために、購入したまま履くことが多かったですね。ところが、バイヤーになってイタリア出張へ行った際に、その時履いていた革靴のソールが驚くくらいボコボコに痛んでしまいまして……。イタリアの街は石畳が多いので、トゥにスチールとハーフラバーを貼らないと出張の度に革靴がダメになってしまうんです。それ以来、購入してから一度は慣らすためにレザーソールで履くのですが、その後はトゥスチールとハーフラバーを貼るようになりました。先輩のバイヤーも革靴のトゥにはスチールを取り付けていたので、尋ねてみたらまったく同じ理由でしたね。
セレクトショップの一バイヤーの要望に、真摯に答えてくれる。
— 「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。
歴史のあるシューメーカーながら、ものすごく考え方に柔軟性があり、現代的な考え方を取り入れるのが上手いと思います。ガチガチのクラシック道を進むメーカーさんと時代に合わせて進化していくメーカーさんがありますが、「ジョセフ チーニー」はまさに後者。ブランドイメージを守るために別注は受けないという老舗メーカーさんも多い中、僕のような一バイヤーの要望を聞いてくださり、細やかな部分まで実現してくださることに感謝しています。自分の番組でも別注モデルの紹介をすることがありますが、歴史あるメーカーさんなのに新しいことに挑戦してくださる姿勢がお客様にとっても新鮮に映っているようです。本当に素敵なメーカーさんだと思います。
福島“ティアモ”雄介さん
1986年生まれ。2009年に株式会社ナノ・ユニバースに入社。ウィメンズの販売、MDを経て2017年よりメンズバイヤーに就任。また、同年から同社の公式YouTubeチャンネルにてスタートしたファッション番組「Tiamo La moda(ティアモ・ラ・モーダ)」(毎週木曜20時配信)の司会進行を担当。“ティアモ”福島の愛称で親しまれている。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLwwDP6vN3Zi3ujqTAn3VhQr_G09659qBK