革靴にまつわるストーリーやディテールの意味、成り立ちを知ることで、より深くその魅力を楽しむことができます。今回は、本格靴の王道として外せないドレスシューズについてご紹介。あらゆる靴ブランドが展開していて、一見どれも同じように見えるだけに、どれを選べばいいか迷う方も多いのでは。そこで、チョイスの際に注目すべきポイントをまとめました。
そもそも、ドレスシューズとは?
ビジネスシーンでの装いに不可欠なアイテムといえばドレスシューズ。スーツやテーラードジャケットにはもちろん、クールビズなどジャケットを着ない場合でも、グレースラックスに上質なドレスシューズをコーディネートするだけでビジネスらしさを演出できます。シンプルでフォーマル度の高い「ストレートチップ」から穴飾りでデザイン性をプラスした「フルブローグ」と呼ばれるものまで、デザインによっていくつかの種類に分けられていますが、共通するのはスリムなシェイプと薄いソール、そして一般的に「内羽根式」と呼ばれる、靴紐を通す部分が甲と一体化した構造を採用していること。また細かいところでは、パーツを縫い合わせるステッチもカジュアルな革靴に比べて繊細に施されているのが特徴です。
近年では一見ドレスシューズに見えてスニーカーの作りを採用したコンフォートシューズも増えていますが、伝統的な仕立てのものはソールがすり減っても交換できるため、修理しながら長く愛用できるというメリットがあります。もちろんビジネススタイルの格もアップでき、トレンドに左右されず履ける靴なので、やはり大人として一足は正統派ドレスシューズを持っておきたいものです。
メンズファッションの基本というべき靴
歴史ある本格靴ブランドなら必ずといっていいほどラインナップし、男性のワードローブにおける基本中の基本とみなされているドレスシューズ。その歴史をひもとくと、現在私たちが着ているスーツの成り立ちと少なからず関連を持っていることがわかります。もともとは「ラウンジスーツ」と呼ばれ、室内で寛ぐための服だったスーツが外出着として市民権を得ていったのは19世紀後半〜20世紀初頭のこと。当初、その足下は編み上げのブーツが主流でしたが、時代を経るにしたがって丈の短い紐靴も増え、20世紀に入ると現在のドレスシューズにかなり近いものが多く見られるようになっていきました。室内着だったスーツが着用の簡便さから正装として広がり、次第に体型を美しく見せる服として進化していったのと同様に、ドレスシューズも脱ぎ履きのしやすさから一般化し、現在のように抑揚を効かせた美しいシェイプに洗練されていったと考えられます。
“良いドレスシューズ”を選ぶ3つのポイント
きめ細かくしなやかなカーフ素材
ドレスシューズのクオリティを決定的に左右するのがアッパーの素材。同じ牛革でも、柔らかい仔牛の皮を使った「カーフ」から分厚い成牛の皮を加工した「ステアハイド」まで、さまざまな種類が存在します。本格靴ブランドが作るドレスシューズには、しなやかできめの細かいカーフが使用されています。履き心地がよく、見た目にも高級感があり、立体的なシェイプを形作れるのが特徴です。ジョセフ チーニーのドレスシューズのメインコレクションである125ラストを採用したモデルには、カーフの中でも最高級といわれるドイツのワインハイマー社製ボックスカーフを採用。質感の美しさは絶品で、磨くことによって輝くような仕上がりになります。
靴作りの美学が表れる羽根周り
靴に詳しい人ほどこだわっているのが、羽根周りのデザインです。まずポイントとなるのがアイレット(靴紐を通す穴)。ミリタリーやカントリーと異なり、ドレスシューズではハトメが外側から見えないものが基本となりますが、加えてアイレットの数にも注目。左右5つずつ穴が開けられた5アイレットがクラシックなドレスシューズの定番とされています。イタリア靴などでは6アイレットのものもしばしば見られますが、これらはよりモダンな印象に。また、アイレットの並び方も靴の印象を左右します。ジョセフ チーニーでは全てのアイレットが直線状に並んでいるものが多く、これは端正で折り目正しい雰囲気に繋がります。対して、爪先に向かって広がっているものは優美な顔つきに。一見どれも同じように見えるドレス靴ですが、微差を比較しつつさりげないこだわりを込められるのが面白いところなのです。
美しく仕上げられたシングルソール
ドレスシューズでは薄いシングルソールが用いられるのが一般的ですが、上質なものはコバ(ソールの断面)がしっかりと磨かれ、滑らかに仕上げられています。さらにブランドによっては、「ツメ仕上げ」と呼ばれるフィニッシュを施すことも。写真のソールを見ると、コバの上下が盛り上がっていることがわかります。このツメ仕上げを行うことで、ソールのエッジが立ってキリッと引き締まった印象に。ジョセフ チーニーのドレス靴では、ひと手間かけてこの仕上げを採用しています。
ジョセフ チーニーのドレスシューズ二大定番はこちら
ビジネスカジュアルにも映える「ウィルフレッド」
ドレス靴の定番といえばストレートチップ。ジョセフ チーニーでも下の「アルフレッド」が長らく人気No.1をキープしていましたが、近年それに並ぶ人気を博しているのがこちらの「ウィルフレッド」。控えめな穴飾りがあしらわれたセミブローグの一足です。さりげない装飾性がプラスされているため、ノータイやノージャケットの装いにもマッチする汎用性が魅力です。木型は2011年にブランド125周年を記念して製作された「LAST125」。バランスのよいラウンドトウによる正統派のシェイプに加え、ヒールカップが小さめに設計されているため日本人の足に合いやすいのも特徴です。
結婚式にも活躍する「アルフレッド」
こちらは王道のストレートチップ。「ウィルフレッド」同様にLAST125を採用し、アッパーはワインハイマー社のボックスカーフを使用しています。スーツはもちろんタキシードまで合わせられるフォーマルなデザインのため、日常のビジネスシーンだけでなく冠婚葬祭にも対応します。