“ジョセフ チーニーって、合わせやすいのがいいんだよね”――近年、そんなお声をよくいただいています。質実剛健な作りでありながら、ラギッドになりすぎないバランス。その“ちょうどよさ”は、正統派のドレスシューズからミリタリーやカントリーといったカジュアルシューズまで幅広く手がけてきた歴史ゆえの表現力といえます。
今回はジョセフ チーニーのコレクションから、特に高い人気を博する3モデルをピックアップ。ビジネスシーンをイメージしたスーツスタイルからヴィンテージテイストなサマーカジュアルまで、さまざまなコーディネート例をご紹介します。スニーカーよりは本格感のある足元が好みだけれど、あまりカタ苦しくは見せたくない。そんな大人にぴったりな使い勝手であることを実感いただけるでしょう。
汎用性の高さで人気の3モデルがこちら!
コインローファー、ミリタリーシューズ、カントリーシューズ。いずれも本来カジュアルな位置づけのデザインですが、ジョセフ チーニーはポッテリしすぎないシェイプと上質な素材・仕立てにより、大人にふさわしい上品さも感じさせるのが特徴的です。ビジネススタイルのカジュアル化が進んだ昨今は、これらをオンタイムに活用するかたも増加中。頑健な作りと日本人の足にも馴染むフィット感により、ヘビーローテーションではき回すのにも向いています。オーセンティックなカーフにソフトなスエード、骨太なグレインレザーと、各モデルごとに印象的なアッパー素材をラインナップしているのもポイント。今回はそれぞれ異なる色&素材を選んでスタイリングしてみました。
AVON C
近年人気急上昇のカントリーシューズ
パーフォレーションやメダリオンといった穴飾りが施された素朴な顔つきが魅力のカントリーシューズ。これを足元に合わせるだけでブリティッシュトラッドなスタイリングが完成する、アイコニックな一足です。英国靴ブランドの多くがラインナップする定番デザインですが、「エイボン C」は重厚すぎないシェイプの木型「12508」を採用。これにより野暮ったさを払拭し、エレガントなコーディネートも組みやすくなっています。キズや汚れに強いグレインカーフ、水気の浸入を防ぐスプリットウェルト、グリップ性の高いコマンドソールなど、ヘビーデューティな機能性も充実。
“AVON C” with military coat
ミリタリーアイテムと合わせつつ、色みで上品さを演出
軽やかなコットンのタイロッケンコートに、オフィサーシャツ&オフィサーパンツ。全身をヴィンテージ・ミリタリーテイストでまとめたスタイリングに、足元だけあえてカントリーシューズを合わせてヒネリを効かせました。どちらも質実剛健さが身上ゆえ、テイストをミックスしても調和のとれた雰囲気にまとまります。さらに全体を明るいベージュ〜ブラウンのトーン・オン・トーンにすることで、土くささを中和しつつ春らしい軽やかさも意識。“アーモンド”とよばれるやや明るめのブラウンをまとった「エイボン C」が、軽快感をキープしつつ装いを引き締めています。
“AVON C” with linen set-up
リネンセットアップ×カントリーシューズの合わせが新鮮
春夏のエレガンスを象徴するリネンのセットアップ。このようなタバコカラーは清涼感とシックさを兼備し、大人の上品カジュアルに最適です。従来はスマートなドレスローファーなどを合わせるのが定石でしたが、程よくボリュームのある「エイボン C」とのスタイリングも新鮮。その素朴な顔つきで足元に愛嬌が生まれ、セットアップに抜け感を加えることができます。インナーにはオフ白を差して、春夏らしい爽やかさをプラス。カットソーでもOKですが、ここではニットTを選んでセットアップにふさわしい上品さを演出しています。シンプルながら洒脱さも印象づけられる装い。
CAIRNGORM H
ベストセラーモデルを都会的にアレンジ
現在、ジョセフ チーニーを代表するベストセラーとなっている「ケンゴン Ⅱ R」にアレンジを加えたのが「ケンゴン H」。ミリタリーシューズに由来する独特の切り替えやステッチワークは継承しつつ、木型をややスマートな「175」ラストに変更。作りもヴェルトショーン製法(アッパーがウェルトの上に覆い被さった特殊な仕立て)からグッドイヤー製法+ストームウェルトにして、カントリーシューズのような顔つきに仕上げています。細かいところでは、靴紐を通すアイレットを外ハトメから内ハトメに変えているのもポイント。ミリタリーの個性を保ちながら都会的な表情も加えることで、非常に汎用性の高い一足になっています。
“CAIRNGORM H” with shorts
夏の軽装を足元でクラスアップ
ボートネックの長袖ニットTシャツに、爽やかなシアサッカーのショートパンツ。夏の定番といえるトラディショナルスタイルですが、意外と迷うのが靴選び。スニーカーでは少々子どもっぽいし、サンダルだとくだけすぎ……そこでおすすめなのが、適度にボリュームのあるカジュアルシューズを合わせてクラスアップする着こなしです。なかでもダークブラウンスエードの「ケンゴンH」なら、重すぎず軽すぎずのちょうどいいバランスに。これなら、外出の途中でカフェに入っても店内で浮くことはないはずです。ちなみに、同じミリタリーを出自とするグルカショーツと合わせても相性抜群。夏にも幅広く使える一足です。
“CAIRNGORM H” with knit jacket
ビジネスカジュアルにも絶好の使い勝手
ニットジャケットにバンドカラーシャツ、グレーのウールスラックスを合わせて、ビジネスカジュアルをイメージしたスタイリングに。定番の「ケンゴン Ⅱ R」よりも骨太さが抑えられた「ケンゴンH」は、オンで無理なく活用できるところも魅力です。仕事服にも軽快さやリラックス感が求められる昨今においては、足元もフォーマルすぎない靴が使い勝手よし。そういった観点からも「ケンゴン H」は非常に重宝するアイテムといえます。クールビズシーズン以外なら、ブレザーにボタンダウンシャツ、ニットタイといった装いにもベストマッチ。年間を通して活用いただけるはずです。
HUDOSON
スマートさも備えたブリティッシュローファー
最後にご紹介するのはベーシックなコインローファー「ハドソン」。米国系のそれとは違い、程よく丸みを帯びつつスマートさも感じさせるフォルムに仕上げているのがブリティッシュブランドならでは。ノーズも短すぎないため、近年主流のワイドパンツにも好相性です。アッパーの素材はきめ細かい上質なカーフ。端正に整ったステッチともあいまって、さりげないエレガンスを発揮しています。ローファー専用に開発された「5203」ラストは、はき心地のよさも評判。足を包み込むようなフィット感を味わえるため、肩の力を抜きたい休日にもぴったりです。
“HUDOSON” with Nylon coat
ダークトーンのコートは足元で軽快さを
モノトーンを基調にしてシックな雰囲気にまとめたカジュアルスタイル。朝晩に肌寒さが残る春の休日をイメージしています。ダークカラーのコートを春夏に着る際は、重苦しく見えないよう工夫することが重要。ここではコートの素材をスポーティなナイロンにするとともに、足元でも軽快感を演出しました。スマートな顔つきの「ハドソン」はまさにうってつけの選択といえるでしょう。インナーにはライトグレーやオフ白といったニュアンスのあるトーンを選ぶことで、モード風に転びすぎず大人らしい印象に。
“HUDSON” with gray suit
ポッテリ感のないフォルムがビジネススーツにも合う
ビジネススーツにローファーはNG、といわれたのも今は昔。むしろ現在においては、内羽根のドレスシューズよりローファーのほうが幅広い着こなしをカバーできる一足といえるでしょう。ただし、ポッテリとしたトラッド感の強すぎるローファーはさすがにミスマッチ。「ハドソン」のように程よくノーズの長さがあり、幅広すぎないラウンドトウが万能に使える条件となります。ベーシックに無地スーツ×白シャツを合わせるのもいいですが、ここでは薄いパープルのストライプが入ったピークドラペルスーツにサックスブルーのシャツでアクセントを加えました。着こなしがシンプルになる春夏こそ、細部のこだわりが重要です。
かつてはドレスシューズの定番ブランドとして、そして近年はカジュアルシューズの新興勢力として高い評価をいただいているジョセフ チーニー。世界に名門と称される本格靴メーカーはあまたありますが、ドレスとカジュアルの双方において評価されるブランドは希少といえます。質実剛健さとエレガンスをバランスよく両立した“ちょうどよさ”は、そんなジョセフ チーニーだからこそ実現できる魅力。さまざまなシーンにマッチする万能の一足をお探しのかたにとって、ベストな選択のひとつになりえるはずです。
text Hiromitsu Kosone styling Ryo Sakamoto photo Tomoki Matsui