ファッション誌編集長が語る、ビジネスマンが英国靴を履くべき理由。 「アエラスタイルマガジン」編集長 山本 晃弘

アエラスタイルマガジン


男性がモノを選ぶ時には理由が必要。そういう意味でも「ジョセフ チーニー」には魅力があります。

数々の男性誌で敏腕を振るい続けた後に、『アエラスタイルマガジン』を2008年に創刊。それ以来“ニッポンの男たちの着こなしを素敵にする”という命題に立ち向かい続けているのが、同誌の編集長を務める山本晃弘さん。実際にスーツを着て働くビジネスマンの意見に耳を傾け、洋服を素敵に着こなすためのルールを常にアップデートしている同誌だが、革靴においてはとくに英国靴を提案しているという。その哲学の所以や、山本さんも愛用している「ジョセフ チーニー」の魅力について尋ねた。

アエラスタイルマガジン

ビジネスマンに個性のある着こなしは必要ない。

— 山本さんは、『アエラスタイルマガジン』や、今年の3月に出版された著書『仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。』で、一貫して「着こなしに必要なのは、センスよりルール」という哲学を貫かれていますね。

『アエラスタイルマガジン』にも著書にも通ずることですが、友人にファッション雑誌を読まなくなった方が大勢いまして、そういう方々にもう一度ファッションの面白さを伝えたいという想いがありました。それを届けるためには、「センスですよ」とか「流行っていますよ」という表現では伝わらないと思い、「きちんとしたルールを知れば誰もが素敵になれる」というコンセプトを考えました。雑誌を創刊した時に、より多くの方に届けるためにタブロイドを連動し、最近ではWEBマガジンやイベントなど、さまざまなタッチポイントを設けて届けようとしています。それでも、まだまだ伝えられていないサイレントマジョリティーが沢山いることを次第に感じるようになりました。そういう方々に、少しでも伝えたいという想いもあり、『仕事ができる人は、小さめのスーツを着ている。』を上梓しました。そこには、『アエラスタイルマガジン』を10年作り続けてきた中で、また、男性ファッション誌に30年以上携わってきた中で、自分がどういう心がけで洋服のルールにたどり着いたのかを詰め込んでいます。よくビジネスマンの方々が目指すべきは、「個性のある上級者ではなく、知性のある中級者」とお話しますが、仕事で一番大切なのは間違いなく中身です。ただ、その中身が伝わるようにするためには、どういう着こなしをすべきか考えるのも仕事のうちだと思っています。だからこそ、素敵に見える着こなしの方法をルールとして伝えながら、実際にスーツを着て働くビジネスマンの声にも常に耳を傾けるようにしています。たとえば、「シャツのインナーに下着を着るべきか」、「スーツにバックパックを合わせるのはアリかナシか」など、リアルな声を聞いた上でルールをアップデートしていくのも私たちの使命だと思っています。

シューズ

数を持つよりも、生涯付き合える相棒を厳選。

— 革靴遍歴を教えてください。

初めて購入した革靴は、「コール ハーン」のファクトリーブランドが作っていたローファーです。故郷である岡山のアメカジショップで手に入れました。その後しばらくは、『メンズクラブ』や『ポパイ』を読んでアイビーの洗礼を受けて育ったこともあり、ローファーやデッキシューズを何足も持っていましたが、いわゆるドレスシューズというのは持っていませんでしたね。自分が『メンズクラブ』で編集の仕事をするようになってからもその名残があり、いつも靴担当の編集者と論争になっていましたよ。よくウールのスラックスに白スニーカーを合わせていたのですが、「山本さんのコーディネートは間違っている」と言われまして(笑)。ドレスパンツにドレスシューズを合わせるのは当たり前過ぎるので、「自分は自分のスタイルを貫く」と当時は少し尖っていたんですよね。今思えば、若気の至りとも言えますし、年齢的にドレススタイルに対しての照れがあったのかもしれません。どちらかと言えば、デニムやチノーズにプレーントゥの革靴やローファーを合わせる方が好みでしたね。しっかりとしたスーツスタイルにドレスシューズを履くようになったのは、『アエラスタイルマガジン』を創刊した頃からでしょうか。ワードローブに関して、「男が一生のうちに付き合う服や靴の種類はそれほど多くなくていい」という考え方をもともと持っているので、所有している革靴はそれほど多くありません。今履いている「ジョセフ チーニー」のプレーントゥ、本日お持ちした「クロケット&ジョーンズ」のストレートチップ、「チャーチ」のモンクストラップやチャッカブーツのほかに、「オールデン」のプレーントゥやローファーなどを持っていますよ。スーツを着用する時には、雑誌でも英国靴を選ぶことが多いですね。

ネクタイ

必要な処置に応じて、お店を使い分ける。

— 革靴のお手入れにこだわりはありますか?

マメな方ではないので、1〜2ヶ月に一度のペースで所有している革靴を磨くように心がけています。その他に、メンテナンスの種類によってお店を使い分けています。たとえば、仕事や展示会回りの合間には、有楽町の靴磨き屋さん「千葉スペシャル」に立ち寄り履いている靴を磨いてもらいますし、靴に雨染みができてしまった際には、新橋駅の地下にある「靴磨き本舗」にメンテナンスをお願いしています。また、年に一度まとめて「ユニオンワークス」に持ち込み、ソールの張り替えなど、必要なリペアを施してもらっています。

本当の“一生モノ”になり得るのが英国靴の魅力。

— 『アエラスタイルマガジン』で、英国靴を勧められているのはなぜですか?

一番の理由は、ソールの張り替えができるグッドイヤーウェルト製法を世に広めた国だからです。たとえば、この商品が高いのか、あるいは安いのかを考える時に、高くても買う理由があれば高くないですし、逆に安くても値段に見合う価値がなければ安くはないわけです。という風に考えると、英国靴を購入し、ソールを張り替えながら何年も付き合い続けるのか、1〜2万円の革靴を購入して一年に満たずして履き潰すのか、どちらが賢いビジネスマンなのかは明らかですよね。以前、とある高級時計ブランドのCEOをインタビューした時に、「日本の男性は靴と時計にお金をかけなさ過ぎる」と言われました。これは非常にロジカルな話で、たとえば、スーツと、靴や時計の使用頻度を比べてみると靴や時計が使用頻度が高いですよね。それに、一生同じ洋服を着ているという人は稀有ですが、靴や時計は本当の一生モノになり得ます。時計は子供に受け継げば一生どころか二生にもなりますし、靴はエイジングを楽しむことで一生付き合える着こなしのパートナーにすることができます。そういった理由で、質実剛健な作りで、リペアをしながら長く愛用できる英国靴を選んでくださいという提案をしています。

ジョセフチーニー

技術力の高さとブランドストーリーに惹かれる。

— 「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。

英国靴のブランドは沢山ありますが、「ジョン ロブ」や「エドワードグリーン」は、一生に一度は“世紀の逸品”に足を入れてみたいという方に、もう少しファッション性を求める方には、「チャーチ」を買うべきでしょうという話をよくします。で、私が一般のビジネスマンに最も勧めたいのが、価格とクオリティのバランスが取れた、「ジョセフ チーニー」と「クロケット&ジョーンズ」です。とくに「ジョセフ チーニー」に関しては、チャーチ家で育った二人の兄弟がノーサンプトンの正統な靴作りを守るために「チャーチ」と袂を分けてブランドを確立したという背景も良いですよね。男性がモノを選ぶ時の理由としては、そういったストーリーが重要だと思います。個人的には「チャーチ」と別れたことは喜ばしいことだと思っています。「チャーチ」はプラダグループに買収されたことで、ファッションピープルが憧れるブランドに成長しましたし、世の中に認知されるだけの新しい提案をしましたよね。そのおかげで、ノーサンプトンのモノづくりの素晴らしさが広く伝わったと思います。それに対して「ジョセフ チーニー」は伝統を守っているイメージがありますが、じつは世界中のショップやブランドとのコラボレーションに対して非常に柔軟ですよね。裏を返せば、ファクトリーとして機能していたブランド背景もあって、技術力が非常に高いと言うこともできます。そういった理由で、「ジョセフ チーニー」には沢山の魅力があると思います。

“アンダーステートメント”を体現した一足。

ー 愛用されている「ジョセフ チーニー」に惹かれた理由を教えてください。

これは約3年前に「BRITISH MADE 青山本店」で購入したものです。『アエラスタイルマガジン』を創刊したばかりの頃は、黒の革靴を推奨していたのですが、次第に「いやいや茶の革靴もアリでしょう」と思うようになりました。ちょうどその着こなしのルール改定を検討していた時期にこの靴に出会いました。フォルムやラストの形が自分の足に合うというのも魅力ですが、エイジングされたかのような深みのある茶の色合いにとくに惹かれました。よく「茶色の靴を履く時には、ベルトと色を合わせるべし」と提案していますが、この靴に合う茶色のベルトがなかなか見つからなかったという後日談もあります(笑)。また、これは英国に靴の取材へ行った時にシューズショップの店員さんから教えられたことでもありますが、英国製品の魅力は“アンダーステートメント”であることだと思います。悪目立ちせず、上品で質が良いモノという意味なのですが、これはビジネスマンにも言えることで、能力があって控えめな人というのは最も輝いて見えますよね。この靴は、まさにそんな一足だと思います。

ジョセフチーニー

「アエラスタイルマガジン」編集長
山本 晃弘さん

1963年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、ファッションエディターとしてのキャリアをスタート。『MEN’S CLUB』、『GQ JAPAN』などを経て、2008年に朝日新聞出版の設立に参画。同年11月には、編集長として『AERA STYLE MAGAZINE』を立ち上げる。雑誌の編集のほか、ファッションやライフスタイルのコンテンツ・動画制作、ビジネスマンや就活生に向けた「スーツの着こなし」アドバイザーなど、媒体を問わず幅広く活躍。著書に、『仕事ができる人は、小さめスーツを着ている。』。
https://asm.asahi.com

photo TRYOUT text K-suke Matsuda