History

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創業者のジョセフ・チーニー氏

ノーザンプトン州の伝統的な靴作り

ノーザンプトン州は英国の品質ある靴作りの街として有名ですが、なぜこの様に産業が発展したのかについては興味深い探求がいくつかあります。民話となって語り継がれている話もありますが、1600年代から靴作りに必要な革の原材料が豊富に得られたということが有力な説です。
17世紀までは工場というものは無く、一つの場所で靴を作るという組織立った体制が築かれたのは、それから約200年後のことでした。当時、創業者のジョセフ・チーニー氏は「B.Riley社」の工場長として働いていましたが、1886年「J.Cheaney, Boot & Shoemakers」として、デズバラにあるステーションロードに小さな拠点を構えました。その頃、多くの人々が靴作りに従事していましたが、その製法は現在とは異なったものでした。

その当時、多くの働き手はそれぞれの工程に特化していたため、“SHOP”と呼ばれる自宅の庭にある離れなどの場所で作業を工程毎に個別で行ない、完成するまでに幾つかのSHOPの行程を経た靴は、最終的に集荷所に集められ出荷されていきました。また商品を配送するシステムが広く普及するまで、作られた靴は地元の身近な地域に供給されるだけでした。
その後1896年、現在の場所に工場を移転して以来、レザーをカットする工程から最終工程のポリッシングまで、一貫して同じ工場で行なっています。今ではアッパーをアジアで作り、ソールと繋ぎはノーザンプトンで行なうメーカーもありますが、1886年以来現在でもノーザンプトン州のデズバラで一貫した生産を行なっています。
創業者であるジョセフ・チーニー氏の息子ハロルド・チーニー氏が入社し、1903年社名をJ.Cheaney & Sonsに変更。1920年には有限会社になりました。

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戦時中

第1次世界大戦中、工場は忙しく稼働し、1週間で約2,500足のブーツやシューズを製造していました。この成功で築いた土台により、戦後や1930年代の世界恐慌も乗り越え、継続して成長することができました。そして会社の成長に伴い、製造も現代化されていきますが、伝統であるハンドクラフトの製法はしっかりと継承しています。やがて供給先も英国全土に広がりましたが、この時点での輸出ビジネスはごく僅かでした。
創業者の孫、ジョセフ・ハンフリー・チーニー(通称 ディック・チーニー)氏が1930年に入社、第2次世界大戦中を除き、引退する1981年まで在籍していました。

戦争が終わると、ディック・チーニー氏は可能性が広がる供給先は海外にある事を目の当たりにします。戦後ということもあり、海外への供給はビジネスとしてだけではなく、外貨を得るという意味でも非常に重要なものでした。海外の展開を目指すと同時に、彼は創業者である祖父や父の生産に対する考え方、ポリシーを深く理解し、高品質な製造や素材の使用を守り続けました。そしてそういった取組みを通じ、ジョセフ チーニーはシューズメーカーとしての地位を確立していきます。
戦後の成長から1960年代まで、ジョセフ チーニーは自分たちの名前を冠したシューズを生産しておらず、アメリカやイギリスの大規模な小売り店舗のシューズを生産していました。会社を守り、未来に繋ぐためイギリス国内との親密な付き合いや協業はもちろん、海外市場の開拓が必須であるとディック・チーニー氏は理解していました。

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左:約100年前の工場の様子 右:現在の様子

Queen’s Award賞

1966年、クイーンズアワード賞を輸出部門にて受賞しましたが、その後チャーチに買収されます。“Cheaney of England”というブランドは1967年から始まり、そしてこれがジョセフ チーニーとして自分たちのブランドを販売する、という最初の取組みになりました。1971年ジョセフ チーニーは再び輸出部門のクイーンズアワード賞を受賞します。
海外の売上が継続して伸びる中、成長を鈍化させるインフレーションが1970年代に起こります。これは、輸出に携わる全ての英国メーカーにも大きな影響を与えました。事実、1980年代に市場が落ち着くまでの間に、多くのノーザンプトンのシューズメーカーが工場を閉鎖してしまいます。
こういった非常に厳しい社会背景の中、自社で在庫をかかえて販売するというスタイルを開始、継続して地元で成長していきました。この取組みは、個人経営などの小規模な店舗への販売を促進させるとともに、先見性のあるバイヤー達を通じ、ブランドの更なる認知へとつながりました。1980年代中頃までには輸出ビジネスも回復し、自社ブランドのシューズの販売と他社ブランドのシューズの生産という2本柱を確立しました。

その後、2002年に旗艦店をロンドンにオープンしました。これにより、ブランドの認知度は一段と増していきました。
2009年8月、従兄弟同士であるジョナサン・チャーチ氏とウィリアム・チャーチ氏はチャーチからジョセフ チーニーを買収。家族5代に渡り靴作りに携わってきた彼らはオーナーとして、また経営者として、1886年の創業当時の様に、カッティングからファイナルポリッシュの全ての工程をノーザンプトンで行なうシューズメーカーとして、今後も品質の高い商品を生産していくことを約束しています。