知っておきたい本格靴の基礎知識 #2.カントリーシューズ編

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知っているようで意外と知らない革靴のキホンを、全3回にわたって解説する連載企画。第2回は「カントリーシューズ」をテーマにお届けします。ミリタリーシューズと似ているけれど、違いはどこにある? ベストマッチなコーディネートは? などなど、気になる疑問にお答えいたします。

カントリーシューズ

そもそも、カントリーシューズとは?

前回紹介したミリタリーシューズと同様、革靴の中ではカジュアルに分類されるカントリーシューズ。ぽってりとしたラウンドトウ、厚みのあるソール、丈夫な作りなど、ミリタリーと共通する点も多いですが、カントリーならではの特徴もあります。中でも象徴的なのが、トウ部分を翼のように切り替えたウイングチップと、全体にあしらわれた穴飾り。ブローギングやパーフォレーションと呼ばれるこの意匠は、16世紀ごろ英国で生まれたものとされ、もともとは機能性を高めるために考案されたといわれています。当時の英国には湿地が多く、しばしば靴の中に水が入り込んで溜まってしまうことがあったそう。そこでアッパーに穴を開け、浸入した水を外に出しやすくしたのがブローギングの起源となりました。やがてそれが装飾となり、カントリーシューズのアイコンとして広まっていったというわけです。
ブローギングのないミリタリーシューズが武骨でたくましい印象なのに対して、こちらは素朴でクラシックな顔つきが魅力。ワックスコットンジャケットやコーデュロイパンツなど、同じく英国カントリーをルーツとするアイテムとコーディネートするのが英国紳士定番の着こなしです。またビジネスカジュアルが浸透した昨今では、ジャケパンにカントリーシューズという仕事スタイルも増えてきています。

ブリティッシュトラッドに欠かせない靴

英国的なスタイルを築くうえで欠かせない存在となっているカントリーシューズ。質実剛健な印象がある一方で、クラシックな品格を感じさせる靴としても知られていますが、それは英国上流階級のたしなみであるハンティングシーンで愛用されていた歴史とも関係しています。1920年代ごろの写真を見ると、狩猟の定番であるロングブーツスタイルに加えて、ニッカーボッカーズにハイソックス、そして足下にカントリーシューズという装いの紳士たちを確認することができます。このように昔から貴族文化と結びついて継承されてきた靴だからこそ、さりげない品位と格調を醸し出しているのです。一方、カントリーシューズは古くから農作業用のワークブーツとして広く親しまれてきたという歴史もあり、階級を超えて英国人に愛されてきたものだということがわかります。ブリティッシュトラッドにカントリーシューズが不可欠なのは、こういった背景によるものなのです。

カントリーシューズの特徴って何?
ボリュームあるラウンドトウと穴飾り

カントリーシューズの定番デザインといえば、大小の穴飾りをライン状に配したブローギングとトウのメダリオン。このようなウイングチップのものはフルブローグとも呼ばれます。ドレスシューズにもフルブローグのデザインは存在しますが、カントリーの場合、ブローギングの穴が大きいのが特徴的。これによってカジュアル感の高い顔つきを演出しています。加えて、ぽってりとボリュームのあるラウンドトウもカントリーシューズらしさの源。ウィズ(横幅)も広めのものが多いため、履き心地もコンフォートで万人の足に馴染みやすいのも特徴です。ちなみにトウにあしらわれたメダリオンはブランドごとに独自の図案を採用していて、紋章のような役割も果たしています。

“羽根周り”もカントリーらしさの決め手

脱ぎ履きが容易で窮屈感が少ない外羽根式がカントリーシューズのスタンダード。ミリタリーシューズと共通する作りですが、こちらはアイレット(靴紐を通す穴)が左右4つずつとなっており、一般的な5アイレットに比べ一つ少ないのが特徴的です。締め付け感がさらに少なくなり、リラックスした履き心地になることに加え、見た目もカジュアルな印象がアップ。アイレットには金属のハトメが取り付けられているのもさりげないアクセントとして効いています。

水気から靴を守る「スプリットウェルト」

アッパーとソールをつなぎ合わせるために用いる「ウェルト」と呼ばれるパーツにも、カントリーシューズならではの特徴が。一見気付きにくいのですが、よく見るアッパーとソールの隙間をふさぐようにウェルトが取り付けられているのがわかります。これは「スプリットウェルト」と呼ばれる仕様で、悪路を歩いた際に水気が靴内部に浸入するのを防ぐ目的で考え出されたもの。アウトドア由来のカントリーシューズらしいディテールです。ドレスシューズに採用されるフラットウェルトと比べると、こちらのほうがソール周りにボリュームが出てがっしりとした印象になります。ちなみに、スプリットウェルトと同様の防水仕立てには「ストームウェルト」や「リバースウェルト」といったバリエーションも。前者はスプリットウェルトとよく似ていますが若干カジュアル感のある印象に、後者はウェルトの取り付け方が異なっています。

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ジョセフ チーニーおすすめのカントリーシューズは?
近年、人気急上昇中の注目モデル「エイボン C」

2009年に誕生し、ジョセフ チーニーのカジュアルシューズを代表する木型となっている「LAST 12508」を採用したカントリーシューズ。ボリュームをもたせつつ野暮ったく見せない適度なバランスに設計されたラウンドトウと、安定感のある大きめのヒールが特徴です。アッパーは上質感と力強さを兼ね備えたグレインカーフ。上品なウールパンツからラギッドなデニムまで幅広くマッチします。ヨーロッパでは以前から高い人気を博してきたモデルで、日本でも近年注目度が高まっているモデルです。

photo Masahiro Sano text Hiromitsu Kosone