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汎用性で選んだ定番3モデル。その実力を着回しで検証!

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ケンゴン エイボン ハドソン 定番3モデル コーディネート

“ジョセフ チーニーって、合わせやすいのがいいんだよね”――近年、そんなお声をよくいただいています。質実剛健な作りでありながら、ラギッドになりすぎないバランス。その“ちょうどよさ”は、正統派のドレスシューズからミリタリーやカントリーといったカジュアルシューズまで幅広く手がけてきた歴史ゆえの表現力といえます。

今回はジョセフ チーニーのコレクションから、特に高い人気を博する3モデルをピックアップ。ビジネスシーンをイメージしたスーツスタイルからヴィンテージテイストなサマーカジュアルまで、さまざまなコーディネート例をご紹介します。スニーカーよりは本格感のある足元が好みだけれど、あまりカタ苦しくは見せたくない。そんな大人にぴったりな使い勝手であることを実感いただけるでしょう。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL 人気の3モデル

汎用性の高さで人気の3モデルがこちら!

コインローファー、ミリタリーシューズ、カントリーシューズ。いずれも本来カジュアルな位置づけのデザインですが、ジョセフ チーニーはポッテリしすぎないシェイプと上質な素材・仕立てにより、大人にふさわしい上品さも感じさせるのが特徴的です。ビジネススタイルのカジュアル化が進んだ昨今は、これらをオンタイムに活用するかたも増加中。頑健な作りと日本人の足にも馴染むフィット感により、ヘビーローテーションではき回すのにも向いています。オーセンティックなカーフにソフトなスエード、骨太なグレインレザーと、各モデルごとに印象的なアッパー素材をラインナップしているのもポイント。今回はそれぞれ異なる色&素材を選んでスタイリングしてみました。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL エイボン AVON C 近年人気急上昇のカントリーシューズ

AVON C
近年人気急上昇のカントリーシューズ

パーフォレーションやメダリオンといった穴飾りが施された素朴な顔つきが魅力のカントリーシューズ。これを足元に合わせるだけでブリティッシュトラッドなスタイリングが完成する、アイコニックな一足です。英国靴ブランドの多くがラインナップする定番デザインですが、「エイボン C」は重厚すぎないシェイプの木型「12508」を採用。これにより野暮ったさを払拭し、エレガントなコーディネートも組みやすくなっています。キズや汚れに強いグレインカーフ、水気の浸入を防ぐスプリットウェルト、グリップ性の高いコマンドソールなど、ヘビーデューティな機能性も充実。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL エイボン AVON C ミリタリーアイテムとコーディネート

“AVON C” with military coat
ミリタリーアイテムと合わせつつ、色みで上品さを演出

軽やかなコットンのタイロッケンコートに、オフィサーシャツ&オフィサーパンツ。全身をヴィンテージ・ミリタリーテイストでまとめたスタイリングに、足元だけあえてカントリーシューズを合わせてヒネリを効かせました。どちらも質実剛健さが身上ゆえ、テイストをミックスしても調和のとれた雰囲気にまとまります。さらに全体を明るいベージュ〜ブラウンのトーン・オン・トーンにすることで、土くささを中和しつつ春らしい軽やかさも意識。“アーモンド”とよばれるやや明るめのブラウンをまとった「エイボン C」が、軽快感をキープしつつ装いを引き締めています。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL エイボン AVON C セットアップ カントリーシューズ

“AVON C” with linen set-up
リネンセットアップ×カントリーシューズの合わせが新鮮

春夏のエレガンスを象徴するリネンのセットアップ。このようなタバコカラーは清涼感とシックさを兼備し、大人の上品カジュアルに最適です。従来はスマートなドレスローファーなどを合わせるのが定石でしたが、程よくボリュームのある「エイボン C」とのスタイリングも新鮮。その素朴な顔つきで足元に愛嬌が生まれ、セットアップに抜け感を加えることができます。インナーにはオフ白を差して、春夏らしい爽やかさをプラス。カットソーでもOKですが、ここではニットTを選んでセットアップにふさわしい上品さを演出しています。シンプルながら洒脱さも印象づけられる装い。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ケンゴン CAIRNGORM H

CAIRNGORM H
ベストセラーモデルを都会的にアレンジ

現在、ジョセフ チーニーを代表するベストセラーとなっている「ケンゴン Ⅱ R」にアレンジを加えたのが「ケンゴン H」。ミリタリーシューズに由来する独特の切り替えやステッチワークは継承しつつ、木型をややスマートな「175」ラストに変更。作りもヴェルトショーン製法(アッパーがウェルトの上に覆い被さった特殊な仕立て)からグッドイヤー製法+ストームウェルトにして、カントリーシューズのような顔つきに仕上げています。細かいところでは、靴紐を通すアイレットを外ハトメから内ハトメに変えているのもポイント。ミリタリーの個性を保ちながら都会的な表情も加えることで、非常に汎用性の高い一足になっています。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ケンゴン CAIRNGORM H サマーコーディネート

“CAIRNGORM H” with shorts
夏の軽装を足元でクラスアップ

ボートネックの長袖ニットTシャツに、爽やかなシアサッカーのショートパンツ。夏の定番といえるトラディショナルスタイルですが、意外と迷うのが靴選び。スニーカーでは少々子どもっぽいし、サンダルだとくだけすぎ……そこでおすすめなのが、適度にボリュームのあるカジュアルシューズを合わせてクラスアップする着こなしです。なかでもダークブラウンスエードの「ケンゴンH」なら、重すぎず軽すぎずのちょうどいいバランスに。これなら、外出の途中でカフェに入っても店内で浮くことはないはずです。ちなみに、同じミリタリーを出自とするグルカショーツと合わせても相性抜群。夏にも幅広く使える一足です。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ケンゴン CAIRNGORM H ビジネスカジュアル

“CAIRNGORM H” with knit jacket
ビジネスカジュアルにも絶好の使い勝手

ニットジャケットにバンドカラーシャツ、グレーのウールスラックスを合わせて、ビジネスカジュアルをイメージしたスタイリングに。定番の「ケンゴン Ⅱ R」よりも骨太さが抑えられた「ケンゴンH」は、オンで無理なく活用できるところも魅力です。仕事服にも軽快さやリラックス感が求められる昨今においては、足元もフォーマルすぎない靴が使い勝手よし。そういった観点からも「ケンゴン H」は非常に重宝するアイテムといえます。クールビズシーズン以外なら、ブレザーにボタンダウンシャツ、ニットタイといった装いにもベストマッチ。年間を通して活用いただけるはずです。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ハドソン HUDSON ブリティッシュローファー

HUDOSON
スマートさも備えたブリティッシュローファー

最後にご紹介するのはベーシックなコインローファー「ハドソン」。米国系のそれとは違い、程よく丸みを帯びつつスマートさも感じさせるフォルムに仕上げているのがブリティッシュブランドならでは。ノーズも短すぎないため、近年主流のワイドパンツにも好相性です。アッパーの素材はきめ細かい上質なカーフ。端正に整ったステッチともあいまって、さりげないエレガンスを発揮しています。ローファー専用に開発された「5203」ラストは、はき心地のよさも評判。足を包み込むようなフィット感を味わえるため、肩の力を抜きたい休日にもぴったりです。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ハドソン HUDSON コートコーディネート ローファー

“HUDOSON” with Nylon coat
ダークトーンのコートは足元で軽快さを

モノトーンを基調にしてシックな雰囲気にまとめたカジュアルスタイル。朝晩に肌寒さが残る春の休日をイメージしています。ダークカラーのコートを春夏に着る際は、重苦しく見えないよう工夫することが重要。ここではコートの素材をスポーティなナイロンにするとともに、足元でも軽快感を演出しました。スマートな顔つきの「ハドソン」はまさにうってつけの選択といえるでしょう。インナーにはライトグレーやオフ白といったニュアンスのあるトーンを選ぶことで、モード風に転びすぎず大人らしい印象に。

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ハドソン HUDSON ローファー コーディネート ビジネススーツ

“HUDSON” with gray suit
ポッテリ感のないフォルムがビジネススーツにも合う

ビジネススーツにローファーはNG、といわれたのも今は昔。むしろ現在においては、内羽根のドレスシューズよりローファーのほうが幅広い着こなしをカバーできる一足といえるでしょう。ただし、ポッテリとしたトラッド感の強すぎるローファーはさすがにミスマッチ。「ハドソン」のように程よくノーズの長さがあり、幅広すぎないラウンドトウが万能に使える条件となります。ベーシックに無地スーツ×白シャツを合わせるのもいいですが、ここでは薄いパープルのストライプが入ったピークドラペルスーツにサックスブルーのシャツでアクセントを加えました。着こなしがシンプルになる春夏こそ、細部のこだわりが重要です。

かつてはドレスシューズの定番ブランドとして、そして近年はカジュアルシューズの新興勢力として高い評価をいただいているジョセフ チーニー。世界に名門と称される本格靴メーカーはあまたありますが、ドレスとカジュアルの双方において評価されるブランドは希少といえます。質実剛健さとエレガンスをバランスよく両立した“ちょうどよさ”は、そんなジョセフ チーニーだからこそ実現できる魅力。さまざまなシーンにマッチする万能の一足をお探しのかたにとって、ベストな選択のひとつになりえるはずです。

text Hiromitsu Kosone styling Ryo Sakamoto photo Tomoki Matsui

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ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル

JOSEPH CHEANEY JOUNAL ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル

1886年から続く長い伝統の中で、ドレスからカジュアルまで、じつに様々なモデルを展開してきたジョセフ チーニーのコレクション。今回は、ビジネスシーンのカジュアル化に伴い、オンでも使えて、普段着の一日にも大活躍する汎用性の高いモデルを特集。とくに、ラスト(木型)の違いにフォーカスし、それぞれが持つ千差万別の魅力をご紹介します。

LAST 4436

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM Ⅱ R|ケンゴン Ⅱ R 
英国軍採用のラストを装備する、ミリタリーシューズの雄。

CAIRNGORM Ⅱ R|ケンゴン Ⅱ R
英国軍採用のラストを装備する、ミリタリーシューズの雄。

「ラスト4436」は英国軍靴に使用されていた背景を持ち、イギリスでは“ミリタリーラスト”と呼ばれています。また、日本で展開されているモデルの木型の中でもっとも歴史が古く、75年以上前から存在すると言われています。この木型と切っても切り離せないのが、ブランドが誇る王道モデル「ケンゴン Ⅱ R」。外羽根式のダブルのツインステッチというデザインはクラシックなラストと相性が良く、ノーズが短く丸みを帯びた愛嬌のあるフォルムに、ミリタリーシューズらしい風格を与えてくれます。重厚な見た目ながら品の良さを備えており、カジュアルスタイルを格上げしてくれるだけではなく、昨今ではスーツスタイルに取り入れる方も増えています。機能面も申し分なく、アッパーの縫い付けに伝統的な製法“ヴェルトショーン仕様”を採用。アッパーとウェルトの隙間から、雨水が染み込み、小石や土ほこりなどが侵入するのを軽減する役割があります。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM 2R|ケンゴン Ⅱ R 
アッパーには世界有数のタンナーである「ワインハイマー社」のグレンインカーフを使用。

現在アーモンド、ブラック、バーガンディー(左から順)の三色を展開。茶系のカラーには、トゥの先端に風合いを出すバーニッシュ加工が施されています。アッパーには、世界有数のタンナーである「ワインハイマー社」のグレンインカーフを使用。雨や汚れに強いタフなシボ革は、機能的なだけではなく、エイジングにより個性的な経年変化を楽しむことができます。

LAST175

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM H|ケンゴンH 
ドレスとカジュアルをハイブリッドした、現代的な一足

CAIRNGORM H|ケンゴンH
ドレスとカジュアルをハイブリッドした、現代的な一足。

「ラスト175」は、ジョセフ チーニーの中でもかなり古い歴史を持つ木型。ドレスシューズの定番として使用されている「ラスト125」よりやや幅広で、適度なボリュームと丸みを持たせることで、英国らしいラウンドトゥを美しく表現しています。このドレスとカジュアルのバランスの良いラストを、王道モデル「ケンゴン」に採用したのが、2020年に誕生した「ケンゴンH」。コバには、ほこりや雨水が侵入を軽減する「ストームウェルト仕様」を採用するなど、ミリタリーシューズらしいタフさを踏襲。一方で、ドレッシーなスムースレザーのアッパーや、シューレースを通す穴の装飾を見せない“内ハトメ仕様”など、ドレスの要素をうまくハイブリッドすることで、都会的な洗練された顔つきの一足に仕上げました。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  CAIRNGORM H|ケンゴンH アッパーは1905年に創業したアメリカの老舗タンナー「ホーウィン社」のクロムエクセルレザーときめ細やかな質感のスエードを使用

ブラウン(中)とブラック(右)のアッパーは、1905年に創業したアメリカの老舗タンナー「ホーウィン社」のクロムエクセルレザー。牛脂や蜜蝋など、4種類以上の油脂をブレンドした特性オイルを使用し、タンニンなめしとクロムなめしを組み合わせる「コンビなめし」という手法を用いて、しっとりとした油分を浸透させた革です。ブラウン(左)には、きめ細やかな質感のスエードを使用。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  FORESTER Ⅱ R|フォレスター Ⅱ R 
柔和な表情が愛らしい、丸みのあるUチップモデル

FORESTER Ⅱ R|フォレスター Ⅱ R
柔和な表情が愛らしい、丸みのあるUチップモデル。

こちらも「ラスト175」を採用したモデル。カントリーシューズをルーツに持つ、丸みを帯びた外羽根式Uチップが特長の「フォレスター Ⅱ R」。ローファーなどに使用されるモカシン縫いでスエードレザーのヴァンプとサイドを縫合しており、柔らかく愛らしい表情に。その一方で、ソールにはスマートな見た目ながら、グリップ力があり、雨にも強いダイナイトソールを装備。カジュアルな印象の中に、適度な上品さを感じる、バランスの良いモデルです。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル   FORESTER Ⅱ R|フォレスター Ⅱ R きめの細かい上質なスエード素材

カラー展開はブラウンのみ。きめの細かい上質なスエードはケアが簡単な上に、雨の日でも気軽に履ける汎用性の高さが魅力です。

LAST12508

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  AVON C|エイボンC 
英国カントリーを体現する、世界的ベストセラー。

AVON C|エイボンC
英国カントリーを体現する、世界的ベストセラー。

「ラスト12508」は、カジュアルモデルを代表する木型として2009年に誕生した木型です。トゥシェイプにヒールカップなど、全体的にボリュームを持たせながら、野暮ったくなり過ぎないように計算されたバランスの良いフォルムが特長。このラストを採用した代表モデルが「エイボンC」。アッパーに大きく開いたブローグや、厚みのあるソール 、グッドイヤーウェルト製法など、まさにブリティッシュカントリーを体現する一足です。悪路を歩いた際に、アッパーとソールの隙間から水気が入るのを塞ぐための「スプリットウェルト」、グリップ力のあるコマンドソールなど、アウトドアに対応するトラディショナルなディテールも満載。ヨーロッパ諸国ではかねてより高い評価を獲得しており、近年では日本でも注目度が高まっています。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  AVON C|エイボンC アッパーには傷や汚れ、水濡れにも耐性のあるグレインカーフレザーを採用

ブラック(黒)、アーモンド(右)の二色を展開。アッパーには、傷や汚れ、水濡れにも耐性のあるグレインカーフレザーを採用。大粒のシボ、トゥ部分に施されたメダリオン、大ぶりなパーフォレーション(飾り穴)が、より一層カントリーテイストを引き立てます。

ラストで比較する、オンオフ兼用カジュアルモデル  同じカジュアルモデルでもラストによって履いた時の印象は大きく変わります
(左から順:175、12508、4436)

今回ご紹介した3種の木型の中で、「ラスト175(左)」はドレスとカジュアルを良い塩梅で融合させた万能な木型。2009年に誕生した「ラスト12508(中)」は、適度なボリューム感を持たせた、よりカジュアルなスタイルと相性の良い木型。75年以上の歴史を誇る「ラスト4436(右)」は、それよりもさらに丸みを強調したクラシックで愛嬌のある木型です。ウエストのシェイプ、ボリューム、トゥの丸みや長さなど、比較することでそれぞれに個性があることがわかります。

ビジネススタイルの変化にともない、改めてカジュアル靴の汎用性が注目されている昨今ですが、同じカジュアルモデルでもラストによって履いた時の印象は大きく変わります。足型に合うお気に入りの木型で揃えたり、スタイルや気分に合わせて色々と試してみるなど、向き合い方はそれぞれ。まずは革靴選びの指針のひとつとして、「ラスト」という視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。

photo Tomoki Matsui text K-suke Matsuda(RECKLESS)

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定番モデル「ハドソン」を履き回し
6コーディネート

JOSEPH CHEANEY JOUNAL 定番モデル「ハドソン」を履き回し
6コーディネート

ジョセフ チーニーのローファーラインナップにおいて最定番に位置づけられるモデルが、コインローファーの「HUDSON(ハドソン)」。 カジュアルシーンはもちろん、ジャケパンスタイルにもマッチする守備範囲の広さで支持を得ています。 ラストはローファー専用の「5203」を使用しており、英国靴らしい程よい丸みとボリューム感があり、品格も十分に兼ね備えたフォルムが特徴です。 今回は「ハドソン」の中でも一番人気の高いブラックカーフを用いた6コーディネートをご紹介します。

6 Styles with HUDSON
「ハドソン」から考えるコーディネート

定番モデル「ハドソン」を履き回し 6コーディネート 王道のジャケパンスタイルを少しだけ今っぽく

Style 1
王道のジャケパンスタイルを少しだけ今っぽく

ネイビージャケットにグレースラックスという王道の組み合わせ。今までなら足元は内羽根式のセミブローグやフルブローグが選択肢に上がる方も多かったはず。 しかし昨今のカジュアル化の流れや少しワイドなパンツシルエットを考慮すると、「ハドソン」のようなコインローファーもマッチします。以前よりカジュアル要素とボリュームを足すイメージです。

それに合わせてシャツにはブルーのロンドンストライプ、タイは50オンスよりもカジュアル寄りのグレナディンとこちらも柄や素材でカジュアル要素を足したスタイリングとなっています。

定番モデル「ハドソン」を履き回し 6コーディネート ワークテイストのセットアップを足元で締める

Style 2
ワークテイストのセットアップを足元で締める

素材、ポケットディティールからワークテイスト漂うセットアップに、敢えて表革のローファーを合わせて全体を締めるスタリングです。バッグにもローファー同様に、黒で表革のものを合わせることで全体のバランスを取っています。 ワークテイストのセットアップと相性の良いデニムシャツを合わせつつ、小物を上品かつ締まるブラックレザーにすることで、ラギッドすぎないスタイリングとなっています。

定番モデル「ハドソン」を履き回し 6コーディネート ミリタリー×ワークを上品に

Style 3
ミリタリー×ワークを上品に

ミリタリーアイテムやワークアイテムは、合わせ次第では男らしさが強くなりがちです。 ブラックのコインローファーを合わせることで程よく上品にまとまります。 パンツにはネイビーのリジッドデニム、アウターも同系色のネイビーでまとめ、インナーにはミリタリーテイストと相性の良いカーキを差し色として合わせています。 ネイビーを上手く使うことでカジュアルなスタイリングにも上品さが生まれます。

定番モデル「ハドソン」を履き回し 6コーディネート モノトーン+1カラーコーディネート

Style 4
モノトーン+1カラーコーディネート

黒のローファーを活かす代表的なスタイルの一つがモノトーンコーディネートですが、そこに1色足すことでまた違った雰囲気のスタイリングに仕上げられます。 こちらのスタイリングポイントは、真っ白ではなくやや色味のある生成りのアイテムを用いること。 黒と生成りを繋げ、その先にアースカラーを加えることで自然とスタイリングに調和が生まれます。 また、パンツもトラウザーズ、インナーもニットTシャツなどを用いることで、大人らしい雰囲気に仕上がります。

定番モデル「ハドソン」を履き回し 6コーディネート ハドソンを活かす究極のシンプルスタイル

Style 5
ハドソンを活かす究極のシンプルスタイル

ブラックカーフのコインローファーは程よいボリュームのグレースラックスが鉄板で合います。 これを極力シンプルなスタイルに落とす場合、薄いブルーのシャツをさらっと合わせるのが良いでしょう。 ブルーの濃さは、スラックスのグレーの濃さと合わせるとまとまりが生まれます。

例えばオフィサーシャツの様なシルエットのシャツをタックアウトでさらっと合わせるスタイルをおすすめします。 もしシンプルすぎて物足りないといった場合は、首元のボタンを一つ開け、袖口をロールアップすることで抜け感を足しましょう。 スラックスとシャツがタイトすぎると足元とのバランスが取りにくくなるので要注意。

定番モデル「ハドソン」を履き回し 6コーディネート 大人のボーダースタイルの最適解

Style 6
大人のボーダースタイルの最適解

ボーダースタイルの足元といえば白のキャンバススニーカーやデッキシューズも合いますが、大人にとってはローファーが最適解ではないでしょうか。 ローファーを合わせる場合、パンツは5ポケットではなくトラウザーズ、そしてボーダーのカットソーはタックインというスタイルがはまります。 ボーダーは好みで紺×白も良いですが、ここではイギリスを代表する絵本「ウォーリーを探せ」で有名な赤×白のボーダーを合わせています。

定番モデル「HUDSON(ハドソン)」を履き回し 6コーディネート

定番モデル「ハドソン」

癖が無いことが特徴といわれるほど、王道フォルムのコインローファー「ハドソン」。 アッパーには、キメの細かい上質なカーフ素材を採用しています。 ソールはシングルレザーソールとこれまた王道を合わせており、スタンダードな一足としての風格がみなぎっています。 幅広いスタイリングに合わせやすいだけでなく、年間通して着用できるなど、非常に使い勝手の良い一足に仕上がっています。

photo Tomoki Matsui styling&text Ryo Sakamoto

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ファッションデザイナーが挑戦した、王道モデルの新解釈。
「Riprap」デザイナー 西野 裕人

ファッションデザイナーが挑戦した、王道モデルの新解釈。「Riprap」デザイナー 西野 裕人

スーツはもちろん、アメカジなどカジュアルスタイルにも合う。
スタイリングの幅の広さを楽しめる一足だと思います。

スタイリスト・本間良二氏のもとで経験を積み、2015年に自身のブランド「Riprap」を立ち上げた西野裕人さん。修行時代には、洋服の着用シーンを提案するスタイリストアシスタントだけではなく、生地や縫製、ボタンなどの附属を選択する生産の仕事や、製品企画を経験されたそう。だからこそ、西野さんの手がけるプロダクトは、徹底したものづくりへの安心感と、コーディネートを楽しみたくなるファッション性を兼ね備えています。そんな「Riprap」が、2020年にジョセフ チーニーとのコラボモデルを初制作。また、お客様からの好評を受け、2021AWシーズンでも王道モデル「CAIRNGORM II R(ケンゴン Ⅱ R)」にブランドらしいエッセンスを加えた特別な一足を展開しています。別注のこだわりや思いを、西野さんの革靴遍歴と合わせてお聞きしました。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人 オリジナルのデザインを根多に、ブランドの解釈を見つける

オリジナルのデザインを根多に、ブランドの解釈を見つける。

— 「Riprap」のモノづくりについて教えてください。

古典落語と通ずる部分があるのですが、メンズ服デザインとは「オリジナルというお題を、どう自分たちのものにしていくか」ということだと考えています。リップラップでは先ず「ハンドクラフテッドスーツ」という、ジャケット2型、シャツ1型、スラックス3型からなるドレスラインを定番展開。毛芯を使用したテーラードジャケットやマーベルト付きのスラックスなど、基礎となるアイテムを作ってから、生地や仕様、構造などの要素をシーズンのカジュアルアイテムに落とし込むやり方をしています。例えばスラックスだったら洗濯機でも洗えるようにマーベルトの腰裏生地をコットンに変換して製作したり、ベースボールキャップの芯地にはジャケットの毛芯を使用したり、ドレスシャツの工房でパジャマを縫ってもらったり……ドレスとカジュアルで仕様や資材を転用しています。デザインアイデアに関しては、例えば救命胴衣のライフジャケットの膨らみをダウンベストとして製作し、防寒着として提案しました。元々ある根多(デザイン)を“お題”として捉えています。そこに敬意を持ちながら、モノや時代とのミスマッチをつくったり、どうすればブランドらしく解釈できるのかということを考えながら洋服を作っています。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人 ァッションの愉しさを伝えることに、全力でありたい

ファッションの愉しさを伝えることに、全力でありたい。

— シーズンごとのコレクションテーマはどのように決めているのですか?

プロダクトはデザインや素材の観点で考えればいくらでも作ることはできますが、テーマはそうはいきません。なので、最初から決めずに、ある程度洋服のサンプルができあがった段階で、「そう言えばこのアイテムを作るとき、あんな本や映画を観たなぁ」だったり、外に出かけて受けた印象や思った事を、頭の中でいったん編集して、咀嚼して言葉にします。それを展示会のDMにステートメント(声明)という形で載せています。ぼくは会話が好きなので、展示会でもポップアップイベントでも、商品説明から与太話までひたすら話しています。洋服はビジュアルだけではなく、メッセージも含めて、ファッションの愉しさをシェアすることに意味があると思っています。アナログなやり方なのかもしれませんが、だからこそ情熱を持った地方の個店さんからも支持されているのではないかと感じています。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人 足のコンプレックスから、靴紐専業ブランド「SHOE SHIFT」をスタート

足のコンプレックスから、靴紐専業ブランドをスタート。

— 「Riprap」と同時に、靴紐専業ブランド「SHOE SHIFT」を立ち上げられたのはなぜですか?

昔から足の形がコンプレックスで、モデルによってはインソールを入れないと履ける靴が限られてしまうほど、足幅が狭く甲が低いんです。そういったこともあり、靴に附属されている靴紐だと長さが合わないので、高校生の頃からスニーカーを買う時に、合わせて靴紐も買う習慣が染み付いていました。だからこそ、「誰でもフィットするシューレースブランド」という構想を昔から温めていました。それに加えて、リップラップを立ち上げる際に、洋服のコンセプトとは違った間口の広い専業ブランドとして立ち上げることにしました。シューシフトでは、長さを8サイズ、紐幅を2サイズ展開しているので、人間であれば合わない人はいないと思います(笑)。スニーカーでも革靴でも、靴紐の通し方ってたくさんあるので、お好みの通し方に合わせて、長さを替えて楽しむこともできます。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人 生産国に捉われず、琴線に触れた革靴を楽しむ

生産国に捉われず、琴線に触れた革靴を楽しむ。

— 革靴編歴を教えてください。

25歳くらいまで、革靴は〈クラークス〉くらいしか履いたことがありませんでした。昔からアメリカ古着が好きだったので、その次に手を出したのは〈ウォークオーバー〉のダーティーバックス。いずれもスニーカーと同じようなノリで履けるし、スエードなのでケアもそこまで気にならない。むしろ、履き潰してボロボロになった状態もかっこいいので、今でも捨てられなくて何足も所有しています。以前、文献で読んだのですが、「ホワイトバックスを汚して履くカルチャーから生まれたのがダーティーバックス」らしく、そういった背景に惹かれました。その後、師匠に勧められ〈ジェイエムウェストン〉のローファーやゴルフを買ったり、定番のプレーントゥが欲しくなったので〈オールデン〉を購入しました。そして、2020年に別注させていただいた〈ジョセフ チーニー〉のダービーシューズ「HARTWELL(MOD)」、この秋冬の「CAIRNGORM II R」に繋がり、今は英国靴へ関心が向いています。色々な靴を履いてみて思うのは、国ごとにそれぞれ良さがあるということです。アメリカ靴は足馴染みが良くて履きやすいし、フランス靴は古着と合わせても独特な色気がでます。一方で、英国靴は、質実剛健な作りが徐々に足に馴染んでいく過程を愉しめるのが魅力だと思いました。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人 念願の初別注は、思い入れの深いダービーシューズ

念願の初別注は、思い入れの深いダービーシューズ。

— 2020年のジョセフ チーニーとの初コラボにいたる経緯や、シューメーカーとしての印象を教えてください。

ジョセフ チーニーのコレクションを初めて見たのは、2013年頃。輸入総代理店の渡辺産業の展示会へ行った時のことです。当時、僕は生産の仕事をしていたこともあり、モノの品質に敏感でした。だからこそ、ジョセフ チーニーのプロダクトを見た時に、めちゃくちゃハイクオリティに対して価格がリーズナブルなところに驚きました。それ以来、毎回展示会に呼んでいただき、独立してからも「いつか別注を実現したい」という思いが募っていきました。そしてブランドの成長と共に念願が叶い、2020年にリップラップとしても初となるレザーシューズを製作していただきました。別注にあたり、サンプルとなる新旧モデルや、革のスワッチなどもたくさん見せていただいて、自分の思い入れの深いシューズであるダーティーバックスをモチーフにしたいと思い、このデザインを選びました。自分の好きなものだからこそウチの洋服との相性も良く、お客様からも反響がありました。ぼく自身も、サンプルを1年半ほど頻繁に履いていて、汚れてきた姿も様になっているので気に入っています。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人 2021年AWシーズン別注された「CAIRNGORM II R」

完成されたモデルだからこそ、コラボレーションの意義にこだわった。

— この2021年AWシーズンとして別注された「CAIRNGORM II R」のこだわりを教えてください。

ジョセフ チーニーのような歴史のあるシューメーカーが作る靴は古典だと思います。しっかりした作りで、何十年も前から受け継がれている形で。そこに対して、どうやってぼくたちがいじれば面白くなるかを考えました。とくに、「CAIRNGORM II R」のような伝統的なモデルですと、デザインが完成されているのでそこまでタッチすべきところがないんです。なので、デザインはそのままに、インラインにはなかったマホガニーカラーで別注させていただきました。また、通常トゥに施されているバーニッシュ加工をあえて省いてもらいました。職人さんからは、「なぜ仕上げの加工をしないのか?」という意見があったようですが、アッパーに色差がない方がぽってりとした印象に映るので、さまざまなスタイルに合わせやすいと思いました。あと、シューレースはシューシフトでこの靴の為に製作しました。“石目”という編み方で、加工をしてないドライな質感のコットン100%の紐を採用しています。今回のモデルは、前回のダービーシューズとは違い、ウチのお客様にとって真新しい印象に感じられるはずです。この「CAIRNGORM II R」は、ツイードのスーツだったり、仕立てのいいウーステッドのスラックスと合わせるようなカントリースタイルが真ん中にあるとすれば、外角にあるスタイルとして、例えばトラックの運転手がワークパンツとこの堅牢な靴を合わせていたらとてもクールだと思います。今回の別注アイテムを介して、「自分のイメージを持って服を愉しむことがファッションの本質じゃない?」。そんな提案ができたらと思います。ぼくたちにとってチャレンジの一足なので、今からお客様の反応が楽しみです。

ジョセフ チーニー 「Riprap」デザイナー 西野 裕人
「Riprap」デザイナー
西野 裕人

1984年生まれ、石川県出身。スタイリスト本間良二氏に師事。スタイリストアシスタント、〈BROWN by 2-tacs(ブラウンバイツータックス)〉の生産、企画、販売員などを務め、2015年に独立。2016S/Sシーズンより、自身のブランド〈Riprap(リップラップ)〉をスタート。コンセプトは、「ファッションとは個人を形容する手段と肯定し、リップラップは被服による発言化、発声化を提唱する」。また同時に、靴紐専業ブランド〈SHOE SHIFT(シューシフト)〉を始動する。

http://r-i-p-r-a-p.com/

text K-suke Matsuda(RECKLESS)

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定番モデル「ケンゴン Ⅱ R」を履き回し
7コーディネート

JOSEPH CHEANEY JOUNAL 定番モデル「ケンゴン Ⅱ R」を履き回し 7コーディネート

イギリスのみならず、日本でも絶大な支持を得ている「CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン)」。 ミリタリーをルーツに持つこちらのシューズは、ヴェルトショーンウェルト製法やベローズタンといった防水性の高い仕様に加え、英国製のラバーソールであるITSHIDE(イッツシェイド)コマンドソールを採用するなど、タフな造りによる実用性の高さが最大の魅力。 日常使いに適した「ケンゴン Ⅱ R」の中から今回は、バーガンディカラーを用いた7コーディネートをご紹介します。

7 Styles with CAIRNGORM Ⅱ R
「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート カジュアルの定番・デニムスタイルを足元で大人らしく

Style 1
大人らしい軽快なショーツスタイル

グルカショーツ&サーマルを合わせたコーディネート。 ショーツは半袖カットソーやサンダル、スニーカーといったラフなアイテムと合わせると幼く見えがちなところを「ケンゴン Ⅱ R」のようなボリュームのある革靴で合わせることで、大人らしい雰囲気をプラスしています。

また、コーディネートに使うアイテムは「ミリタリー」という共通点を持たせることで、素材感や色味が違っても、自然と全体のバランスが取れます。トップスはアイボリーなどの明るい色を合わせれば、より軽快な印象に仕上がります。

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート 爽やかな春スタイルを足元で引き締めて

Style 2
爽やかカラーのアクセントに最適なバーガンディ

ライトブルーとホワイトの色合わせは、爽やかな印象を与えるのに最適なカラーコーディネートです。 しかし、コーディネートの中に、アクセントを持たせないと単調になってしまうため、合わせ方によっては、間延びしてしまうことも。 そんな時、足もとにバーガンディを差すことで、全体を引き締めてくれます。

また、デニムは、経年変化も含め生地の素材感があり、「ケンゴン Ⅱ R」に採用されている、グレインレザーとも好相性のアイテムです。

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート ロング丈の春コート×カントリーシューズも鉄板のバランス

Style 3
ミリタリーシューズで仕上げるシンプルコーディネート

シャツにデニムといえば、まさにシンプルコーディネート王道の組み合わせ。 ここでは濃紺のノンウォッシュデニムに対し、ミリタリールーツを持つ「ケンゴン Ⅱ R」の相性を考え、トップスには少しキャラクターのあるオフィサーシャツをチョイスしています。 シャツの袖をまくり、デニムのロールアップなどで少し動きを加えつつ、存在感のある「ケンゴン Ⅱ R」を合わせることでコーディネートがワンランクアップします。

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート スーツのカジュアルダウンにも好適

Style 4
ミリタリーシューズはドレスダウンにも最適

リモートワークやクールビズといった時代背景から、昨今ではドレスとカジュアルの境目が、年々と無くなっていることもあり、ジャケットと合わせるようなトラウザーズを、あえてTシャツに合わせるなど、カジュアルトップス + トラウザーズのスタイルも増えてきています。 そういったコーディネートの足もとにも「ケンゴン Ⅱ R」は最適です。 ボリュームのあるミリタリーシューズを合わせる場合、トラウザーズの裾幅は広く、素材感があるものを選ぶと好相性になります。

また、合わせるシャツは、カジュアル要素の強いウェスタンシャツなどを合わせると、バランスよくコーディネートがまとまります。

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート もちろん紺ジャケ&チノパンにも絶好の相性

Style 5
スポーツ由来のアウターとも好バランス

ゴルフにルーツがあるハリントンジャケットと「ケンゴン Ⅱ R」を合わせたミリタリー × スポーツのミックスコーディネート。 ハリントンジャケットもミリタリーシューズも古くからあるアイテムなので、合わせ方によってはクラシックな印象になりがちです。

そこで今回のように、コーディネート全体のトーンを明るくし、インナーにはカットソーを合わせることで程よい抜け感が生まれます。

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート もちろん紺ジャケ&チノパンにも絶好の相性

Style 6
都会的に着こなすミリタリーコーディネート

バーガンディのミリタリーシューズとカーキのアノラックパーカーは色、デザインともに相性は抜群ですが、ミリタリー要素がどちらも強く、ただ着ただけではでは、野暮な印象になってしまいます。 この場合、ホワイトトデニムを合わせることで、素材のバランスを調整しつつ、白色の持つ都会的な印象がミリタリー要素をうまく和らげてくれます。

「ケンゴン Ⅱ R」から考える夏~秋のカジュアルコーディネート もちろん紺ジャケ&チノパンにも絶好の相性

Style 7
王道コーディネートにニュアンスを

ネイビーブレザーにチノパンというのは王道コーディネートの一つですが、これに「ケンゴン Ⅱ R」をそのまま合わせてしまうと全体がやや重めの印象になる可能性があります。そこでブレザーをニットジャケットに変更し、タイには清涼感あるリネンのマドラス柄タイを合わせるといった引き算を行うことで全体のバランスを整えたコーディネートです。

定番モデル「ケンゴン Ⅱ R」

「ケンゴン Ⅱ R」はワーク、スポーツ。ときにはドレスダウンまで幅広く活躍!

今回、「ケンゴン Ⅱ R」と合わせたアイテムは、ワークやスポーツに背景を持つものから、ドレスコーディネートに使われるものまで、実に幅広いラインアップとなりました。 色や素材、デザインのバランスを取ることで、様々なアイテムと好相性となります。

コーディネートの主役から、ときには脇役まで。 多くの可能性を秘めた「ケンゴン Ⅱ R」は、1足持っておいて損のないシューズと言えるのではないでしょうか。

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AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY Vol.1
− エイジングにより魅力が増すグレインカーフ −

JOSEPH CHEANEY JOUNAL AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY Vol.1− エイジングにより魅力が増すグレインカーフ −

昨今ではこれまで以上にビジネススタイルのカジュアル化が進行しています。また、リモートワークの推進により出社回数が減っているという方も多く、オフでも活用できる汎用性の高いカジュアルシューズが人気を博しています。

ジョセフ チーニーのコレクションの中では、ミリタリーシューズ「CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R)」やカントリーシューズ「AVON C(エイボン C)」がとくに好評。その流れで「グレインカーフ」を使用した他のモデルも改めて注目されています。この革は表面に大粒のシボがあり、傷や汚れ、水濡れにも強いのが魅力です。また、タフだからこそ末長くエイジングを楽しむことができるという理由で選ぶ方も多いです。

今回はグレインカーフのモデルを所有されている方々から愛靴をお借りし、エイジングサンプルとしてご紹介。十人十色の育て方による、経年変化の個性をお楽しみください。

JOSEPH CHEANEY

BURGUNDY

ワインの名産地、フランスはブルゴーニュ地方がネーミングの出自といわれる「バーガンディ」。赤みがかった茶系色には品があり、実際に英国の軍靴に採用されていた歴史もあります。代表モデルは、ミリタリーシューズ「ケンゴン Ⅱ R」。バーニッシュ加工が施され、色の濃淡がアンティーク感を演出しています。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 1年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:1YEAR

「週に4日は履いている」というだけあり、すでに持ち主の足型に沿った履きジワが良い味を演出しています。手入れは一ヶ月に一度、ブラウンのクリームを塗布。幅のある平紐に替えることで、よりカジュアルな印象に。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 3年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:3YEARS

手入れはせずにガシガシ履くことにより、グレインカーフの色ムラが強まり、アンティークのような雰囲気を放っている一足。新品状態時よりも暗めの色素が抜けたことで、明るい赤茶色に変化しているのも印象的です。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 5年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:5YEARS

週に一日のペースで、大切に履かれてきた一足。四ヶ月に一度、ブラウンのクリームを塗り込んで育てたことで、新品時のプレーンな状態から深みのあるカラーに変身。履きジワやコバの擦れが、味を感じさせてくれます。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 7年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:7YEARS

月に一度、バーガンディのクリームを塗布し、さらに二週に一度、ブラックのワックスで磨き上げるというマメなケアで育てられた一足。7年という愛用歴を感じさせないほどレザーの状態が良く、美しい光沢を放ちます。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY PENNINE Ⅱ R(ペナイン) 7年着用

NAME:PENNINE Ⅱ R
YEARS:7YEARS

グレインカーフの雰囲気を存分に味わうことができるミリタリーブーツ「ペナイン Ⅱ R」。ブーツならではのレザーのヤレ感が味を感じさせます。ニュートラルのクリームにより、自然な色ムラ感が出ているのも魅力。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 8年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:8YEARS

あえて手入れをせずに、週一日のペースで履き込んだという潔い一足。シボが薄くなり色ムラのあるトゥや、コバのフェード感、大胆な履きジワなどがミリタリーシューズらしい無骨さと男らしさを感じさせてくれます。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 8年着用 ダークブラウンクリーム使用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:8YEARS

元のバーガンディカラーを忘れさせるほど、大きな変身を遂げたシックな雰囲気の一足。その秘訣は、月に一度ダークブラウンのクリームを塗り込むこと。まるで本物のアンティークのような色合いが個性を放ちます。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 29年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:29YEARS

29年間、週に数回履き続けているという正真正銘のヴィンテージシューズ。ナチュラルカラーのクリームで月に一度手入れを行うことで、革の状態を良好にキープ。歴史を感じさせる深みのあるカラーに仕上がっています。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BURGUNDY 経年変化まとめ

バーガンディは雰囲気のある色合いだからこそ、年数以上にエイジングを楽しめるカラー。クリームの色選びにこだわり、赤みを強めることやシックなダークブラウンに育てるのはもちろん、過度に手入れをせず、革の変化を楽しんでいるという方も多くいました。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BLACK

BLACK

冠婚葬祭でも使用されるスマートカラー「ブラック」。アスファルト道路やコンクリート造のビルなど、グレーカラーが多い日本の景観と相性が良く、都会的な印象を与えてくれるのが魅力です。写真はサイドゴアブーツの「ブレコン」。20AWより登場した新モデルで、グレインカーフの魅力を存分に味わうことができます。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BLACK PENNINE Ⅱ R(ペナイン) 1年着用

NAME:PENNINE Ⅱ R
YEARS:1YEAR

レースアップブーツらしいレザーのヤレ感が、個性を感じさせる一足。まだまだ愛用歴は浅いものの、季節に一度ニュートラルのクリームを塗布して磨くことで、グレインカーフの表面に自然な光沢が生まれています。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BLACK CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 2年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:2YEARS

週に二回のペースで履き込んだ一足。紐やコバのフェード感が、愛用歴以上にアンティーク感のある雰囲気を放ちます。手入れは二ヶ月に一度、ブラックのクリームを塗布することでレザーの色合いに深みを出しています。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BLACK CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 6年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:6YEARS

ミリタリーシューズながら、上品な佇まいを感じさせる一足です。ドレスシューズに使われる平紐に替え、トゥに薄くポリッシュをかけることで品のある顔つきに。手入れは、三ヶ月に一度ブラックのクリームを塗布。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BLACK PENNINE Ⅱ R(ペナイン) 7年着用

NAME:PENNINE Ⅱ R
YEARS:7YEARS

季節を問わず、週に一度履き続けているという一足。革のシワやシボの伸びなど、随所に経年変化がありながらも全体的に光沢があり美しい状態を保っています。オリーブグレーの平紐に替えたことで、軽やかな印象に。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY BLACK 経年変化まとめ

ブラックは履く方のライフスタイルに合わせて、カジュアルにもドレスにも履きこなせるカラー。もともとの重厚な印象を生かして無骨に育てるのも素敵ですが、紐を平紐に替えたりポリッシュをかけることで、ドレッシーに履きこなしている方もいました。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY ALMOND

ALMOND

英国には数多くの茶色が存在しますが、ジョセフ チーニーの代表的なカラーとして採用されているのが「アーモンド」。カントリーコレクションと相性が良く、自然に溶け込む爽やかな色合いが魅力です。代表的なモデルは「エイボン C」。グレインカーフにはアンティーク感を演出するバーニッシュ加工が施されています。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY ALMON AVON C(エイボン)

NAME:AVON C
YEARS:0.5YEAR

半年間、週三日履き込んだ一足。まだまだグレインカーフ特有の大粒のシボが綺麗に残っています。手入れは二ヶ月に一回のペースでニュートラルのクリームを塗布。元の濃淡を生かしたシックな表情に仕上がっています。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY ALMOND CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン) 7年着用

NAME:CAIRNGORM Ⅱ R
YEARS:7YEARS

トゥとヒールまわりにはブラックのクリームを塗布し、そのほかのアッパー部分にはブラウンのクリームで手入れをした個性派。濃淡が美しいグラデーションになり、ナチュラルで味のある経年変化を体現している好例です。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY ALMOND AVON C(エイボン) 8年着用

NAME:AVON C
YEARS:8YEARS

手入れをせずにガシガシ履き続けたという一足。もともとのカラーと比較すると、全体的に赤みのある濃いブラウンカラーに育っています。コバのフェード感と相まって、よりアンティーク感を感じさせる顔つきに。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY ALMOND 経年変化まとめ

アーモンドは新品時の色味が薄いということもあり、経年による変化をもっとも強く感じることができるカラー。だからこそクリームのカラーで遊ぶことができるので、たとえば、濃淡をつけてグラデーションにエイジングするなど、幅広く楽しむことができます。

AGING MUSEUM of JOSEPH CHEANEY 希少カラー「マホガニー」

今では希少になったカラー「マホガニー」

ジョセフ チーニーでは、モデルとの相性や時代の変化に合わせて展開色を変えることもあります。たとえば、昨今主流となっているのは「バーガンディ」ですが、それ以前にはいくつかのモデルで「マホガニー」というカラーを展開していました。バーガンディよりも赤みを抑えた明るいブラウンカラーで、現在では「HOWARD R(ハワード R)」というモデルや英国の高級紳士服・アクセサリーブランドである「ドレイクス」とのWネームのモデル等に使われているカラーです。

photo Masahiro Sano text K-suke Matsuda(RECKLESS)

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靴磨き系YouTuberの価値観を変えた、ミリタリーシューズ。
靴磨き芸人 奥野 奏

靴磨き系YouTuberの価値観を変えた、ミリタリーシューズ ケンゴン Ⅱ R。 靴磨き芸人 奥野 奏

磨き甲斐のある革質と、男心をくすぐるミリタリーの意匠に惹かれました。
どんなスタイルにもはまり、ガシガシと履ける相棒のような一足です。

路上で行うクラシックなスタイルから、高級志向のカウンター式サロンへと進化を遂げたシューシャイン業界に新たな風。自らが感動した靴磨き体験を広く伝えたいという思いのもと、YouTubeで“日本一分かりやすい靴磨き動画”を配信し、支持を集めているのが靴磨き芸人こと、奥野奏さん。まさに靴磨き業界の“第三世代”とも呼ぶべきスタイルで、若い世代を中心に革靴の魅力を伝え続け、昨年に自身のお店「SHOEBOYS(シューボーイズ)」を池袋にオープンしました。今回は、そんな奥野さんのもとを訪ね、お店でも取り扱っていただいているジョセフ チーニーの魅力や革靴遍歴について語っていただきました。

ジョセフ チーニー 靴磨き芸人 奥野 奏さん

営業時代の原体験が、前人未到の肩書きに繋がる。

— 靴磨きを生業にしようと思ったきっかけを教えてください。

じつは靴磨きに興味を持ち始めたのは、つい5年ほど前なんです。大学を卒業した後、ソフトバンクテレコムという会社に就職し、法人営業を担当していました。営業職なので、当然スーツを着て革靴を履いて外回りをするわけですが、当時は本格的な紳士靴に感心がなく、安価な革靴をボロボロに履き潰しては買い替えるという日々を送っていました。ところがある日のこと、会社の同期に私の革靴を「みっともないから、磨いた方がいい」と言われまして。それを機にはじめて靴を磨いてみたら、傷が隠れるばかりではなくツヤが出てピカピカになったんです。それまでボロボロな状態が標準だったこともあり、本当に感動しました。しかも、綺麗に磨いた革靴を履いていると仕事に臨む気持ちが前向きになり、それが原体験で靴磨きにのめり込んでいくようになりました。その会社を辞めた後に、芸人を志すわけですが、舞台に立つ時は革靴を履いていたので、趣味として靴磨きを続けていました。それをどこかで発信したいと思い立ち、2016年に靴磨きのYouTubeチャンネルを始めたのですが、思いのほか好評でさらにのめり込んでいったという感じです。だからこそ、今は靴磨き芸人と名乗っています(笑)。

靴磨き芸人 奥野 奏さん SHOEBOYS オリジナルシューケアグッズ

靴磨き市場のポテンシャルに懸ける思い。

— 昨年オープンされた「SHOEBOYS」のコンセプトを教えてください。

僕自身、靴磨きのお店へ通っていたこともあるのですが、どちらかと言えばクラシックな雰囲気のショップが多く、とくに革靴ビギナーのうちは入りづらいと思うこともありました。よくお声をいただくのですが、たとえば「ドクターマーチンを持って行っても大丈夫なのかな」など、革靴初心者ですと敷居を高く感じてしまうんです。もともとそういった方に靴磨きや革靴の魅力を伝えるための配信を目指していたこともあり、コンセプトを「The Beginning of Shoe Journey」にしました。革靴旅のはじまりの場所として、気軽に利用できる店にしたいという思いを込めています。

靴磨き芸人 奥野 奏さん SHOEBOYS オリジナルシューシャインクリーム

内装にも温かみのある木材をたくさん使い、壁にもオリジナルのステッカーを貼ることで、ストリートカルチャーのイメージを取り入れています。靴磨きの料金も業界の中ではかなりリーズナブルに設定していますし、靴磨きグッズを豊富に取り揃えたり、手に取りやすいグレードの革靴を扱うなど、敷居を下げる工夫をしています。靴磨き店は飲食店とは違い、「ふらっと立ち寄ろう」とはなりづらいと思うので、YouTubeを使って配信をすることで、少しでも「SHOEBOYS」へ行ってみようと思ってもらえたら嬉しいです。じつは靴磨きのチャンネル以外に、料理のサブチャンネルもやっているのですが、それも新たなジャンルから靴磨きに興味を持ってもらいたいと思ったのが出発点なんです(笑)。ゆくゆくは店でワークショップを開いたり、靴磨きを知ってもらう機会をさらに増やしていきたいと思っています。

靴磨き芸人 奥野 奏さんの革靴遍歴

生産国や形よりも、琴線に触れる革靴を蒐集。

— 革靴遍歴を教えてください。

会社員時代は、量販店でスーツとセットで買うような数千円の安い革靴を履いていました。靴磨きに興味を持ってから、人生ではじめて買った本格的な紳士靴はスコッチグレインのストレートチップです。芸人になった記念として、舞台に立つ時には必ず履いていましたので愛用歴は5年ほどです。二足目に手に入れたトリッカーズの「バートン」は、自分の価値観を変えてくれた革靴のひとつです。ネットサーフィンをしていた時に、履き込まれて傷だらけなのにかっこいいこのモデルを見つけ「こんな風に育ててみたい!」と興奮してすぐに買いにいきました。4年ほど育てていますが、あの時見たかっこよさにはまだまだ到達できません(笑)。タフな革質や堅牢な作りなど、英国の伝統的なカントリーシューズの魅力を知ることができた思い出深い一足です。そのほかには、パラブーツの「シャンボード」やオールデンの「987」なども持っています。あまり生産国や形にはこだわらずに、まだまだ好きなものや履いてみたいものを集めている段階です。全部で20足くらいは所有していますが、その日の気分やスタイルによって選ぶのを楽しんでいます。

ジョセフ チーニー 靴磨き芸人 奥野 奏さん ケンゴン Ⅱ R バーガンディ着用

背景とモノづくりの良さにこだわり、長く愛用できる相棒を見つける。

— 革靴を選ぶ際に、どのような視点を大切にしていますか?

英国靴に触れたのがきっかけなのですが、単にデザインだけで選ぶのではなく、ブランドやモノづくりなどの背景にも憧れるようになりました。たとえば、深い歴史があるとか、ベンチメイドで一人の職人さんの手によって作られているとか、木型によってフィッティングが変わってくるとか……。だからこそ、革靴を購入する時には、ブランドサイトを徹底的に読み込むようにしています。その上で、革質や作りの良さをチェックします。個人的に革靴で一番楽しいのは、履きこむことで革靴どんどん育っていくということだと思っています。その過程に履いた靴をねぎらう靴磨きがあり、磨いてからまた履くことで自分の相棒がさらにかっこよく育っていることを実感できるんですよね。そして、それによって持ち主である自分自身も気分を上げることができるというのが、良い革靴の魅力だと思います。

ジョセフ チーニー 靴磨き芸人 奥野 奏さん SHOEBOYS ディスプレイ

英国靴の質実剛健さを体現するブランド。

— ジョセフ チーニーとの出会いを教えてください。

セレクトショップで取り扱われていることは知っていたのですが、恥ずかしながら詳しく知ったのは、約2年前です。コレクションを見たり、背景を知ることで、モノづくりの深い歴史があり、英国靴らしい伝統的なグッドイヤー製法を受け継いでいたり、時代と共に進化をさせてきた木型が数多く存在しているなど、本当に質実剛健という言葉がぴったりなブランドだという印象を持ちました。しかも、作りは本格派にも関わらず、高級紳士靴の中ではそこまで値段が張るというわけではないところにも感動しました。私の店では、革靴初心者の方が手に取りやすい3万円前後で、作りがしっかりとしたものという軸で革靴を取り揃えているのですが、そういった方々の二足目として、また、すでに何足か本格的な革靴をお持ちの方にもお勧めしたいと思い、ジョセフ チーニーを取り扱わせていただきました。最近ではリモートワークが推進され、出社をする方が少なくなったこともあり、トレンドとしてはしっかりとしたドレスシューズよりも、カジュアルよりのモデルの方が人気です。また、すでにビジネスシューズは持っていて、カジュアルなスタイルにも合わせられる革靴が欲しいというお客様が多いので、お店では汎用性の高いカントリーコレクションの「CAIRNGORM Ⅱ R」をセレクトしました。接客の際には、作りの良さやブランドとしての歴史を伝えているのですが、その話を聞いて目をキラキラとさせるお客様も多いです。

ジョセフ チーニー CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R)

自分らしくカスタムできる、汎用性の高い一足。

— 奥野さん自身も「CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R)」を愛用されていますが、魅力を教えてください。

ドレスからカジュアルまで、どんなスタイリングにも合わせやすいので重宝しています。そして、タン部分と羽根が繋がっている仕様や、雨の進入を防ぐヴェルトショーン製法、英国軍のシューズに採用されていたというラストなど、随所にミリタリーの意匠が散りばめられているところにも魅力を感じました。靴磨きの視点でとくに感動したのは革質の良さです。2年ほどガシガシ履き込んでいますが変な履きジワは入っていないですし、シボ革で傷が目立ちにくいこともあり、良い意味で遠慮なくエイジングを楽しむことができます。あとは、カジュアルシューズだからこそ好きなようにアレンジができるということでしょうか。はじめは無骨なイメージで履くことも考えたのですが、あえて丸紐を平紐に替え、トゥ部分にポリッシュをかけてドレッシーに履いています。また、退色した表情が好みなので、バーガンディで補色せずにニュートラルのクリームで手入れをしています。長く愛用する中で気分によって印象をカスタムできるという意味でも、履きこむ楽しさを教えてくれる一足だと思います。

靴磨き芸人 奥野 奏さん プロフィール
靴磨き芸人
奥野 奏さん

1990年生まれ。早稲田大学を卒業後、ソフトバンクテレコムに営業職として入社。2014年に退社し、吉本興業の門を叩く。芸人として独立後、いくつかのコンビでの活動を経て、ピン芸人に。2016年より、自身の愛する靴磨きを広めるために、YouTubeチャンネル「靴磨き芸人 奥野の『兎にも角にも靴磨き』」をスタート。“日本一分かりやすい靴磨き動画”が好評を博し、現在では登録者数10万人を超える。2019年には「靴磨き選手権2019」に出場し、準決勝まで進出。2020年にクラウドファンディングで約250万円を集め、池袋に靴磨き&革靴専門店「SHOEBOYS」をオープン。毎週土曜日は自ら店頭に立ち、靴磨きの魅力を伝えている。サブチャンネル「おっくんの宅飲みグルメ」も好評。著書に『史上最強の宅飲みご飯』。

Youtube:靴磨き芸人 奥野の『兎にも角にも靴磨き』

photo Yoko Tagawa text K-suke Matsuda(RECKLESS)

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私なりの英国靴への想い 後編|ファッションジャーナリスト 矢部 克已

私なりの英国靴への想い 後編|ファッションジャーナリスト 矢部 克已

本稿の前編で綴ったクラシックスタイルの達人、シモーネ・リーギさんが履いていたフルブローグの靴に出合う以前、私は、2010年にジョセフ チーニー社のオーナーのひとりである、ジョナサン・チャーチさんとインタビューさせていただいた。『インペリアル・コレクション』という新作ドレスシューズがテーマだったため、「ジョセフ チーニー」のコレクションは、ドレス→カントリー、の順番でブランドの特徴を理解していった。

しかし、日本での一般的な「ジョセフ チーニー」に対するイメージは、カントリーテイストの靴が得意なブランドではないだろうか。『エイボン』や『ケンゴン』といったモデルが、日本で人気なことからもそれが窺い知れる。「ジョセフ チーニー」に求めている靴は、ゆったりとしたカジュアルなファッションに合う、男らしく無骨なカントリーな雰囲気、ということになるのだろうが、本当にそうか。私はそれだけはないと感じている。

ファッションのカジュアル化を経て、
ドレスとカントリーが調和

ジョセフ チーニー ケンゴン ⅱ R ブラック
CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R) BLACK

イタリアの靴に比べれば、保守的なデザインを踏襲する英国の靴。だからこそ、私は、サルトリア仕立てのイタリアのスーツに伝統的なスタイルの英国靴を合わせている。「ジョセフ チーニー」の靴をよく観察すると、英国靴でありながら、案外アグレッシブなところもある、と思っている。それは、このところのメンズファッションの潮流のひとつになっている、ドレスとカジュアルのミックス感が影響しているのかもしれない。

2015年以降のメンズファッションは、“ドレスがカジュアルに近づき、カジュアルがドレスの要素を取り入れる”といった流れが出てきた。たとえば、クラシックなスタイルのスーツでもストレッチ素材を使ったり、伝統的なドレスシャツを仕立てる名門のシャツメーカーが、シャツジャケットをつくる、といった提案が増えた。あるいは、カジュアルなブランドが、仕立て服のような立体裁断を取り入れたジャケットを手掛けたり、カジュアルなシャツにあえて手縫いをアクセントにする、といった展開である。それぞれの、魅力や利点をうまくアレンジして、互いのテイストが接近した。そして、ドレスシューズにも、そんなバランスを狙ったモデルが登場してきた。

ジョセフ チーニー ウィルフレッド
WILFRED(ウィルフレッド) BLACK

あくまでも私見だが、「ジョセフ チーニー」のドレスシューズのなかに、ドレスシューズとしての美しさを目指しながら、カジュアルな表情をミックスしたフォルムのモデルがある。言うなれば、ドレスシューズをエレガントに仕上げるだけではなく、気兼ねせずにガンガンと履ける、カントリーシューズの要素をわずかに備えた一足である。

そのモデルが、ジョセフ チーニー社創業125周年で開発された木型『125』を使った、『アルフレッド』と『ウィルフレッド』だ。丸みのあるトウやウィズのバランスに対して、かかとを小さくした木型は、日本人の足型に沿ったフォルムもつくり出している。ラウンドトウの程よいボリューム感は、ドレスの優雅さにさりげなくカントリーの味わいを加え、実にいまっぽい顔立ち。見方によっては、ミリタリーな佇まいも感じさせる。

ジョセフ チーニー エイボン C
AVON C(エイボン C) ALMOND

ここであらためて、「ジョセフ チーニー」の人気モデル『エイボン』の表情を思い浮かべる。

シュリンクレザーに大きなパーフォレーションのウイングチップや4つの鳩目をデザインした一足は、どこから見てもカントリーシューズの要素を満たしている。また、もう一足の話題のモデル『ケンゴン』は、外羽根のデザインや巧みなヴェルトショーンウェルト製法ゆえ、味のある個性を放つ。もちろん木型こそ違え、トウのボリューム感は何か『アルフレッド』や『ウィルフレッド』に通ずる遺伝子を、私は感じる。

ジョセフ チーニー ケンゴン ⅱ R バーガンディ
CAIRNGORM Ⅱ R(ケンゴン Ⅱ R) BURGUNDY

ドレスシューズに洗練を求めすぎるのではなく、カントリーシューズに機能ばかりを優先することでもない。それぞれのデザインやディテールの持ち味を、長年の靴づくりで導き出したスタイル。これこそが、現在のドレスシューズにおけるひとつの傾向であり、「ジョセフ チーニー」が狙っているドレスとカントリーの接近ではないだろうか。それが、『アルフレッド』と『ウィルフレッド』のドレスシューズにはある。

もし、私がこのドレスシューズを選ぶ場合、どちらかといえば、アンティーク調に色付けしたブラウンを選びたい。コシのあるネイビーのウール生地で仕立てたスリーピースと抜群に似合うスタイルを想像させるからだ。

ファッションエディター・ジャーナリスト 矢部 克已さん プロフィール
「ウフィツィ・メディア」代表
ファッションエディター・ジャーナリスト
矢部 克已さん

イタリア1年間の在住時に、フィレンツェ、ナポリ、ヴェネツィア、ミラノに移り住み、現地で語学勉強と取材、マンウォッチングを続ける。現在は、雑誌『MEN’S PRECIOUS』でエグゼクティブ・ファッションエディター(Contribute)を務めるほか、『MEN’S EX』『THE RAKE JAPAN』『GQ JAPAN』などの雑誌、新聞、ウェブサイト、FMラジオ、トークショーなどでも活躍。イタリアのクラシックなファッションを中心に、メンズファッション全般、グルメやアートにも精通する。

TwitterID:@katsumiyabe

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