名物セールスパーソンがモノづくりに惚れ込んだ、全天候型シューズ。
「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールスマスター 森山 真司

ケンゴン Ⅱ R

大粒のグレインレザーは最近ではなかなか見かけません。
ヴェルトショーンウェルト製法からも、職人の温かみを感じます。

2000年にオープンした「ディストリクト ユナイテッドアローズ」の立ち上げ当時から在籍するメンバーの一人であり、名物セールスパーソンとしてファッション業界で知られる森山真司さん。30年にも及ぶ販売歴の中で「ジョセフ チーニー」の変遷を目の当たりにしてきた氏ですが、ここ数年は自身の務めるお店でも取り扱っている「CAIRNGORM(ケンゴン) Ⅱ R」を愛用しているそうです。今回は森山さんの革靴遍歴と共に、その魅力をお伺いしました。

森山 真司

役職を超えて、お店作りのすべてに携われるプロジェクト。

— 現在のお仕事の領域を教えてください。

セールスマスターという肩書きを頂き、販売員の見本となる役割として店頭に立っています。気持ち的には、『スター・ウォーズ』でいうところの“ジェダイマスター”のつもりです(笑)。それに加えて、ユナイテッドアローズの中ではディストリクト自体がスモールプロジェクトだということもあり、販促活動のプランニングや、ディレクター・栗野のバイイングに同行することもあります。ホームページにどういうコンテンツを作るか、SNSに何をアップするかなどを企画したり、担当を割り振るのは僕の仕事です。お店のメンバーは7人だけなので、本体の「ユナイテッドアローズ」レーベルとは異なり小回りが利きます。たとえば、買い付ける製品にしても、みんなの「こんなものが欲しい」が強く反映されています。それは立ち上げ当初からずっとそうですね。だからこそ、お店のブログに関してもみんなが自分ごととして紹介してくれますし、好きなブランドや企画したオリジナル製品によって、自ずと担当が決まってきます。将来的にこのお店を何店舗かに増やしたいという野望はありますが、それと同時に小さいプロジェクトだからこそ、裏方的な仕事をやりながら店頭でお客様と接することができるというのはメンバーの全員が感じていることだと思います。僕個人の話で言えば、マネージャー的なポジションは性分ではないので、これからも店頭に立ち続けていたいですね!

プラモデル

プラモデル製作は至高の楽しみ。

— オフの時間は何をされていますか?

子どもの頃から『スター・ウォーズ』に登場するメカが大好きでした。だから、撮影で使われたプロップがどうしても欲しかったんですが、当然実物のプロップは手に入れることができませんでした。『スター・ウォーズ』自体のグッズも気に入ったものは購入していたので、結果としてコレクションになっているのですが、最近では小さいフィギュアはすべて処分しましたし、プラモデルで作る方が楽しくてしょうがないです。とりわけ最近は、おそらく僕と同世代の方々がプラモデルを開発されているので、当時夢中になっていた思い出がある分、どんどん精巧になってきているので、ついつい買ってしまいます(笑)。ちょうどこの間、3年と8カ月の月日を費やしてコツコツと作っていた全長約94cmのミレニアムファルコンをついに完成させました。ただ組み立てるだけでは飽き足らず、ウェザリング(汚し技法)の入れ方や塗装の仕方などを、できる限り当時のプロップを撮影した資料をもとに、近づけて仕上げた自信作です。新品よりも汚れていたり、くたびれていて味が出ている方が好きだという点では、革靴の好みと通ずる部分があるのかもしれません。

英国靴

“たくあん色”の英国靴が、革靴遍歴の原点。

— 革靴遍歴を教えてください。

初めて履いた英国靴は30年以上前に「BEAMS F」さんで購入した「ポールセン・スコーン」の革靴。当時は欲しかったサイズが品切れで、自分に合うサイズではないものを履いていたので、残念ながら後輩に譲ってしまいました。それからは、さまざまな国の革靴を試しましたが、現在100足以上あるワードローブの中でも英国靴の割合が多いですね。最初に買った「ポールセン・スコーン」のエイコーンという英国らしいカラーに惚れて以来、引きずっている感じです。栗野をはじめ、ディストリクトではみんなが“たくあん色”と呼んでいますが(笑)。ほかにも、「ジョン・ロブ」のスエード二足や、ボックスロゴ時代の「エドワード・グリーン」の一足など、本日お持ちしたラインナップはどれも20年ほど履き続けていますがまだまだ現役です。そして、圧倒的に茶系の革靴が多いので色々な表情が出てきていて、長年育ててきた証として経年変化を楽しんでいます。年齢と共に変化したのはサイズ選びでしょうか。昔は先輩からの教えもあり、ギュンギュンに小さいサイズを選んで足に馴染ませることを美徳としていましたが、最近ではあまりサイズに頓着しなくなりました。よく考えてみたら、欧米人は家の中でも革靴を履いているのに、頭が痛くなるようなサイズを履くわけがないですよね。あとは、革底の地面を感じる感じが好きな反面で少し疲れてしまうこともあり、ラバーソールの革靴を最近では好むようになりました。

英国靴

品質が高く、愛情を注いだ分返ってくる。

— 英国靴の魅力とはなんでしょうか?

古い雑誌に英国のジェントルマンが写っていたのですが、みなさんビスポークで誂えたスーツをビシッと着ている上流紳士にも関わらず、シャツの襟やカフスがボロボロだったんですよ。昔の日本で言うところの“バンカラ”という考えに近くて、気に入ったものは何が何でも愛用するという考え方なのだと知りました。その有名な話として、チャールズ皇太子のパッチワークだらけの革靴がありますが、やはり良い品質のものを買えばくたびれても味になりますし、値段に関係なく愛情を注いだ分返ってくるものだと思っています。そういう意味では、英国靴には品質に信頼のおけるものが多いですよね。

ケンゴン Ⅱ R

懐かしいグレインレザーと全天候型の製法。

— 「ケンゴン Ⅱ R」に惹かれた理由を教えてください。

もともと職人さんの温もりを感じられる革靴が好きなのですが、二年前にヴェルトショーンウェルト製法の革靴を購入してから気に入り、一年前にこのバーガンディのケンゴン Ⅱ Rを購入しました。英国のカントリー的な雰囲気も良いですし、全天候型なのでとても重宝しています。綺麗な格好をした時にこういったソールは合わせるのは難しいのですが、もともとセオリー通りのコーディネートをしない方なので、タイドアップやジャケパンスタイルにも合わせています。アッパーに大粒のグレインレザーを使用しているところも懐かしくて良いですね。90年代頃にはよく見かけたのですが、最近はなかなか見かけなくなってしまった。シボがある分、傷がついてしまっても目立たないので気にせず履けるのも魅力です。僕は純正にこだわらず使い勝手が良いようにカスタムするのが好きなので革紐の長さを変えたり、うちのお店で取り扱っている「タカフミ アライ」のレザーキルトを付けてアレンジしています。今季、ディストリクトの別注としてケンゴン Ⅱ Rのオリーブカラーを発売したのですが、大好評ですぐにサイズ欠けしてしまいましたよ。

英国靴

英国らしい王道の靴づくりを継承するブランド。

— 「ジョセフ チーニー」の印象を教えてください。

昔は「ユナイテッドアローズ」のオリジナル革靴を作っていただいたこともあり、ファクトリーブランド的な印象が強かったですが、チャーチ創業家であるウィリアム・チャーチさんがマネージング・ディレクターになり、リブランディングされてからは王道の英国靴づくりを貫かれている印象です。英国製品には代々受け継いで長く使って育てていくというマインドがありますが、僕も息子が大学の卒業式を迎えた際に、スーツに合わせて自分の「ジョセフ チーニー」の革靴を貸してあげたことがあります。息子も「いずれは欲しい」と言っていましたね。長く愛用できるモノの良さを体感させることができて、僕自身も嬉しかったです。「ジョセフ チーニー」には、老舗の風格を持つブランドだからこそ、これからも英国の伝統的な部分を守りながら新しい提案をし続けて欲しいですね。

森山 真司
「ディストリクト ユナイテッドアローズ」セールスマスター
森山 真司さん

1968年生まれ。ファッション業界で30年に及ぶキャリアを誇り、『スター・ウォーズ』をこよなく愛する“自称ジェダイ”。「ディストリクト ユナイテッドアローズ」には立ち上げ時より在籍する名物セールスパーソン。趣味は愛犬の散歩とプラモデル。100足以上の革靴を所有。
https://b.houyhnhnm.jp/moriyama_shinji/

photo TRYOUT text K-suke Matsuda(RECKLESS)